「光悦ー桃山の古典」 五島美術館

五島美術館
「特別展 光悦ー桃山の古典」 
10/26-12/1



五島美術館で開催中の「特別展 光悦ー桃山の古典」を見てきました。

宗達との金銀泥のコラボから楽茶碗、また漆工芸などで多彩な技を見せる本阿弥光悦。その卓越したデザイン感覚は、どこか今に通じるものさえある。ともかく光悦の作品からただならぬセンスを感じないことはありません。

しかしながら果たして光悦がどのような事績を辿ったのか。もちろん時代もあるやもしれませんが、例えば同じ琳派の光琳や抱一ほどに良く知られているというわけではありません。

そこを狙うのが本展の「光悦ー桃山の古典」。彼がいつどこで何を表現しようとしていたのか。それを作品を参照しながら読み解いていきます。


「赤楽茶碗 銘 乙御前」 個人蔵

出品は光悦の書・陶芸・出版、漆芸など150点。後述するように途中で展示替えがあります。また150点というと大変なボリュームに思えますが、実のところ出品作中においてかなりの割合を占めるのが書状や歴史的資料です。

つまり光悦の記した書状をふまえながら、その当時に置かれた境遇や制作背景などを見ていくという仕掛け。またこうした書などを素人が読むのは困難ですが、そこは充実したキャプションがフォロー。光悦がいつ誰にどういった内容の書状を送ったのか。事細かな説明が付けられていました。


「書状 寿命院様宛」 徳川美術館 展示期間:10/26~11/17

一例を挙げましょう。まずは「書状 吉左殿宛」。楽家の二代常慶に送ったものとされる書状ですが、そこには茶碗を制作するので、白土と赤土を持ってきて欲しいとの文言が。光悦と楽家との関わりが伺えます。

前田利家の次男に送った「書状 羽孫四様宛」はどうでしょうか。中には「中風にて不自由」との記載が。そして文字や行に若干の乱れも見られる。この頃の光悦は重い中風に懸かっていたそうです。

面白いのは「書状 宗徳老宛です」。宗徳の人物は特定されていませんが、文中には「宗達」か「宗遅」とも読める人物名が記されている。かつては宗達との関係を示すものとして注目されていたそうです。本展では「遅」と読んでいますが、ともかくこうした書状を丹念に読んでいくと、断片的なれども、光悦の人となりなどが伝わってきます。


「光悦町古図写」(部分) 個人蔵

また資料として本阿弥家の家系図から光悦町の古地図、さらには光悦の印章や刀剣の銘書などもあわせて展示。そもそも光悦の本業は刀剣の鑑定でした。

書状や資料から光悦の人間像を浮かび上がらせる試み。かなり学究的です。またカタログ(2500円)の論考も読み応えがあります。光悦受容の新たなる歴史を切り開く展覧会と言えるのかもしれません。


「黒楽茶碗 銘 時雨」 名古屋市博物館 森川コレクション

さてこうした資料を少し離れて今度は作品を。まず目立つのは陶芸。赤楽に黒楽。国内各地の美術館や個人所蔵の重要な作品がずらり。約15点ほどが展示されています。

中でも魅惑的なのが「黒楽茶碗 銘村雲」です。どこかシャープな光悦ならではの造形感覚。手前に低く奥に高い口縁の緩やかな曲線。豊かな表情を見せてくれます。


「白楽茶碗 銘 冠雪」 個人蔵

茶碗では重文作が4点、香合は1点と名品揃いですが、個人所蔵の中でも趣き深い作品があるのも嬉しいところ。「白楽茶碗 銘冠雪」のうっすらと薄緑色を帯びた味わい。柔らかい雪の中で仄かな桃色が灯る。見惚れます。


「舟橋蒔絵硯箱」 東京国立博物館 展示期間:10/26~11/10

そして漆芸からは「蒔絵絵唐櫃」に「舟橋蒔絵硯箱」なども。いずれも国宝です。また光悦は熱心な法華信者でもあったそうですが、菩提の本法寺に経典とともに寄進したとされる「花唐草螺鈿経箱」も目を引きます。見事な曲線美を描く螺鈿の唐草文に軽快な「法華経」という文字。鮮やかでした。


「四季花鳥下絵新古今集和歌色紙帖」 五島美術館

装飾料紙では「鹿下絵新古今和歌巻断簡」なども見どころです。また金銀泥にて竹や桜、千鳥などを描いた「花卉鳥下絵新古今集和歌巻」は美術館での初公開とか。銀泥の焼けが少なく色味も抜群。まだまだこうした優品が眠っているものです。


「蔦蒔絵唐櫃」 厳島神社

会期中の展示替えの情報です。冊子、巻子作品は前後期での頁替。主に書状、断簡などが入れ替わります。ちなみに茶碗に関しては全期間での展示です。

前期:10月26日(土)~11月17日(日)
後期:11月19日(火)~12月1日(日)



「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」 個人蔵

全面改装を終えての五島美術館、一新した照明などは実に効果的。蒔絵なども映えて見えました。ただ一つ、ケースの都合でやむを得ないのかもしれませんが、茶碗の展示位置が低いのが気になりました。かなりのぞき込まないといけません。茶碗を正面を見るにはしゃがむ必要がありました。

12月1日まで開催されています。

「特別展 光悦ー桃山の古典」 五島美術館
会期:10月26日(土)~12月1日(日)
休館:月曜日。但し11/4(月・休)は開館。翌火曜日は休館。
料金:一般1200円、大学・高校生900円、中学生以下無料。
時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) 
住所:世田谷区上野毛3-9-25
交通:東急大井町線上野毛駅より下車徒歩5分。
コメント( 2 )|Trackback( 2 )
« 「バルビゾン... 「山口晃展 ... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (oki)
2013-10-30 21:02:41
今日行って来ました。
僕は世田谷だから近いけど、はろるどさんは、文化村とはしごされたのかな。
中村修也先生監修で、光悦像の全面的な見直しですか!
第2展示室からみたほうが良いのかも、第一展示室はいきなり書状ですから。
光悦像の見直しには光悦の書いたものが第一時資料ですから、書状中心は致し方ないですね。
厳島神社の国宝が来ているのにびっくり。
僕の前の人はぐるっとパス出してましたが、この展覧会と三井記念の茶碗、両方無料で入れるんですね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2013-10-30 22:15:10
@okiさん

こんばんは。

>文化村とはしご

仰る通りです。上野毛から渋谷へと動きました。

>第2展示室からみたほうが良い

そうかもしれませんね。2室の方が光悦の人間像の提示というのか、導入になっている気がしました。

>第一時資料ですから、書状中心は致し方ない

丁寧なキャプションがあって助かりました。また改めて図録でも読み直しているところです。

>厳島神社の国宝が来ているのにびっくり。

お宝満載の展覧会でしたね!
これをきっかけに光悦の研究が進むと良いなと思います。
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
 
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
 
 
光悦 桃山の古典 @五島美術館 (Art & Bell by Tora)
 これは2013/11/08のこと。季節はずれの好天に恵まれ、二子玉川で昼食をとってから、タクシーで五島美術館に向かった。  五島美術館の茶室でお茶会をしたことのある家内が本日の主役。美術散歩の「とら」は、「宗達つながり」でなんとか面目を保っていた次第。 【追...
 
 
 
特別展「光悦」 (弐代目・青い日記帳 )
五島美術館で開催中の 特別展「光悦 桃山の古典(クラシック)」に行って来ました。 http://www.gotoh-museum.or.jp/ 室町から江戸初期に活躍した本阿弥光悦 (ほんあみこうえつ 1558~1637)を最新の研究を交え、その実像に迫る展覧会。(書状約45点、伝俵屋宗達...
 
 
?
?