「アニマル・ワールド」 加島美術

加島美術
「アニマル・ワールド 日本画の動物ってこんなにかわいい!!」 
2/3〜2/25



「アニマル・ワールド 日本画の動物ってこんなにかわいい!!」を見てきました。 

東京・京橋の画廊、加島美術に、江戸から近現代の日本の動物画、約50点が、ずらりと勢揃いしました。しかも嬉しいことに、ガラスケースもなく、露出展示で、いずれも目と鼻の先で作品を愛でることが出来ました。


岸駒「孔雀図」 江戸中期〜後期

まずは江戸絵画でした。岸駒は「孔雀図」において、これ見よがしに羽を広げては、樹上に止まった孔雀を表現しました。首を少しひねった仕草にも動きがあり、どこか眼光鋭く、見るものを威嚇しているようにも思えなくはありません。素早い筆による木の枝の描写も、とても趣きがありました。


長沢芦雪「月下鹿図」 江戸中期

愛知県美術館の回顧展で話題を集めた長沢芦雪にも、同じく目に力のある動物画がありました。それが「月下鹿図」で、表題が示すように、上空の半月の下、おそらくは雪原の上を鹿が歩く様子を正面から捉えていました。毛羽立った筆で鹿の毛を表す一方、蹄にはやや濃い墨を重ねていて、丸い模様の浮き出た角は、思いの外に細かく描いていました。


円山応挙「雪柳狗子図」 江戸中期

干支に因む戌の作品も少なくありません。その筆頭に挙げられるのが、犬を得意とした円山応挙の「雪柳狗子図」で、雪の降り積もった柳の木の下で、子犬たちが戯れ合っていました。


円山応挙「雪柳狗子図」 江戸中期

ころころと丸みを帯びた子犬は見るも可愛らしく、中には雪で滑ったのか、ひっくり返った子犬もいました。これぞ応挙犬の真骨頂ではないでしょうか。出展中、最も愛くるしい作品かもしれません。


中村芳中「雙鶏図」 江戸中期〜後期

なごみの琳派こと中村芳中の「雙鶏図」にも心惹かれました。番いの鶏を描いた掛け軸で、向きがちょうど互い違いになっていました。抑揚のある線で鶏の身体を描いていて、尾っぽは大胆にも太い墨をはね上げて表現していました。席画ならぬ、即興的に描いたのかもしれません。


渡辺省亭 「紅楓鳩温牡丹」 明治時代

昨年、加島美術の「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」展を発端に、一部の日本画ファンの中で人気を博した渡辺省亭にも、見逃せない優品がありました。それが二幅の「紅楓鳩温牡丹」で、右に黄色い楓と鳩のつがい、そして左に雀と薄いピンク色に染まる大輪の牡丹を表していました。


渡辺省亭 「紅楓鳩温牡丹」 明治時代

楓はラフな筆で素早く表現する一方、鳩や雀の羽は絵具を細かく重ねて描き、牡丹の花弁も一枚一枚が繊細で、色には透明感もありました。硬軟の筆を巧みに使い分けた、省亭ならではの作品と言えるかもしれません。


森狙仙「白薔薇猿蜂之図」 江戸中期〜後期

猿の絵師、森祖仙の「白薔薇猿蜂之図」も魅惑的でした。白い薔薇の枝を背景に、親子の猿を描いた作品で、ちょうど小猿は地面の上を這う昆虫に手を伸ばそうとしていました。ここで何よりも優れているのは、猿の毛並みで、細い毛を丁寧に描きながら、全体のふんわりとした質感も同時に表現していました。


柴田是真「牧童図窓猿」 江戸後期〜明治時代

柴田是真の「牧童図窓猿」も面白いのではないでしょうか。ちょうど窓の格子の向こうで、猿が手をやりながら、何かを伺うような仕草を見せていました。上下と左右を切り取ったような構図にも妙味があり、まるで格子に閉じ込められたかのようで、ひょっとすると猿は外へ出たがっているのかもしれません。その視線の行方も気になりました。


河鍋暁斎「蛙図」 江戸後期〜明治時代

人気の河鍋暁斎の「蛙図」も楽しい作品でした。蛙を擬人化し、子をおんぶしたり、何やら隊列を組むべく、胸を張っては、堂々と立つ蛙を描いていました。


前田青邨「闘犬」 大正〜昭和時代

何も江戸絵画だけでなく、近現代の動物画のあわせて紹介しているのも特徴です。例えば前田青邨は、「闘犬」で、闘う犬と見物人の様子を表現しました。


猪熊弦一郎「猫図」 昭和〜平成時代

また猪熊弦一郎の「猫図」も一際、異彩を放つ作品ではないでしょうか。3月末よりBunkamraザ・ミュージアムで始まる、「猪熊弦一郎展 猫たち」を控えての出展かもしれません。


上村松園「ねずみ」 大正〜昭和時代

思いがけないほどに惹かれた作品と出会いました。それが美人画の名匠、上村松園の「ねずみ」で、タイトルからすれば、竹の上のねずみを表現しているのかもしれませんが、その可愛らしい姿は、どう見ても和菓子などの雪うさぎにしか思えません。


「アニマル・ワールド」会場風景

ほかにも葛飾北斎、伊藤若冲、曾我蕭白、菱田春草、竹内栖鳳、小林古径、熊谷守一と盛りだくさんでした。まさに日本画の動物園と言って良いかもしれません。お気に入りの1点を見つけるにも、さほど時間がかかりませんでした。


「アニマル・ワールド」会場風景

撮影不可マークのついた作品以外は、自由に撮影も出来ました。またギャラリーの展示だけに購入も可能でした。

ちらしを開くと、中に「アニマルワールド 動物めぐりMAP」と題し、現在、都内で開催中の動物画に因む展覧会がリストアップされていました。公式サイトからも閲覧可能(WEBページ)です。このMAPを頼りに、各地の展覧会を練り歩くのも楽しそうです。

入場は無料です。会期中のお休みもありません。


2月25日まで開催されています。

「アニマル・ワールド 日本画の動物ってこんなにかわいい!!」 加島美術@Kashima_Arts
会期:2月3日(土)〜2月25日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
料金:無料。
住所:中央区京橋3-3-2
交通:東京メトロ銀座線京橋駅出口3より徒歩1分。地下鉄有楽町線銀座一丁目駅出口7より徒歩2分。JR線東京駅八重洲南口より徒歩6分。
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