「アートアワードトーキョー丸の内2015」 丸ビル1階マルキューブ

丸ビル1階マルキューブ
「アートアワードトーキョー丸の内2015」
7/31-8/9



丸ビルマルキューブで開催中の「アートアワードトーキョー丸の内2015」を見てきました。

大学の卒業制作などから選抜された若いアーティストを審査形式で紹介するアートアワードトーキョー。今年で早くも9回目です。丸の内を舞台とする現代アート展として認知されてきたような気もします。

これまでの会場は東京駅丸の内口地下先、行幸地下ギャラリーでした。要注意です。今年から場所を移しています。

新たな舞台は丸ビル1階のマルキューブ。幅と奥行きは30メートルもあります。同ビル1階のシンボルとも言える巨大な吹き抜けのイベントスペースです。

参加作家は全20名。1作家1ブースです。ジャンルは様々。絵画、立体、インスタレーションと問いません。

展示初日には審査員によってグランプリ以下、全10賞が選定されました。

「アワード」@アートアワードトーキョー丸の内2015


西太志 Taishi Nishi 京都市立芸術大学大学院
「黒い絵 No.11」 2014年 パネルにキャンバス、水性アルキド樹脂、木炭、顔料
「土の王」 2014年 陶土


その栄えあるグランプリを受賞したのが西太志です。「嵐の中へ」と「黒い絵」と題された平面の前には、一体の彫像、「土の王」が構えます。何とも錯綜した黒い筆致、線は複雑に絡み合い、ただならぬ気配を醸し出していますが、彫像の質感もまた独特です。素材は陶。銀色の兜とも山とも付かないような台に乗り、手にはナイフ、あるいは銃でしょうか。武器のようなものを持っては立っています。目が窪んでいます。表情は伺えません。


西太志 Taishi Nishi 京都市立芸術大学大学院
「嵐の中へ」(部分) 2014年 キャンバスに水性アルキド樹脂、木炭、顔料


「嵐の中へ」には何やら傘を広げては闇とも嵐とも言い難い地平に立ち向かう人の姿も描かれていました。この少年ともとれるような人物は何者なのか。確かに不思議な魅力をたたえています。


田中彰 Sho Tanaka 武蔵野美術大学大学院
「古代よりの光、水、樹」 2015年 ロクタ紙、油性木版


三菱地所賞、今村有策賞を受賞したのが田中彰です。「古代よりの光、水、樹」という3点の油性木版。ともかく細密極まりないテクスチャーに驚かされます。


田中彰 Sho Tanaka 武蔵野美術大学大学院
「古代よりの光、水、樹」(部分) 2015年ほか


タイトルにTokyo、Fukushimaなどと記されているので、それらの地域が舞台なのかもしれません。大樹を囲む人々や頭に輪を付けた女性の姿。両脇にいるのは天使でしょうか。まるで荘厳な祭壇画を見るようでもあります。


田島大介 Daisuke Tajima 愛知県立芸術大学
「五金超大国」 2015年 丸ペン、黒インク、ケント紙に木製パネル


田島大介が神谷幸江賞を受賞しました。「ネオシティ」に「五金超大国」。白い台に載せられたのパネル。都市です。超高層ビルがひしめく大都市が描かれています。


田島大介 Daisuke Tajima 愛知県立芸術大学
「五金超大国」(部分) 2015年


それにしても構図が凄まじい。上空から捉えているというよりも、上から大きく都市を抉りとって見せるような視点です。ビルがこちら側へ迫り、はたまた突き出しています。その意味では不安定、動的でもあります。空から飛び降りている最中に見える景色に近いかもしれません。

筍のように生えるビルは皆、ほぼ同じ形をしていました。そして屋上には様々な設備が置かれています。看板にはハングルや漢字が目立ちました。この奇異で混沌とした風景、とても現実の街を舞台としているようには見えませんが、ひょっとすると東アジア、中国などの都市をイメージしているのかもしれません。


鈴木のぞみ Nozomi Suzuki 東京藝術大学大学院
「光の痕跡」 2014年 解体された家の窓、写真乳剤、青焼き、デジタルフォトフレーム


私が惹かれたのが鈴木のぞみです。フランス大使館賞を受賞。タイトルは「光の痕跡」です。写真でしょうか。おそらくは木の幹、それに水辺のような景色が写されています。ただし必ずしも明瞭ではありません。全ては朧げです。実景なのか、あるいは幻想なのか。ただどこか物悲しいまでに寡黙な自然の景色のみが広がっています。

初めは気がつきませんでしたが、ふと枠を見やるとアルミ製のサッシだということが分かりました。キャプションによれば解体された家の窓だそうです。窓越しにふと垣間見えた記憶の中に留まる景色。どこか懐かしさを覚えてなりませんでした。


富田直樹 Naoki Tomita 東京藝術大学大学院
「Twilight snowfall(Bosetsu)」 2015年 キャンバスに油彩


今年春、オペラシティアートギャラリーのprojectNでも印象深かった富田直樹にも目が留まりました。一点の風景、おそらくは冬の街角です。雪にまみれた車が行き交い、街路樹越しには家々が建ち並びます。何気ない都市風景を切り取っているようにも見えますが、やはり何よりも魅惑的なのが筆触です。

太く、また時に短いストロークが交差する様は、そこだけ切り取ればまるで抽象画のようでもあります。即興的でもありながら、生み出される景色は力強い。絵具は風景をキャンバスに固着させています。

山水画のモチーフを取り込んでいるという奥村彰一も面白いのではないでしょうか。


奥村彰一 Shoichi Okumura 多摩美術大学
「おねえ山水 六月の飲茶」 2014年 楮紙、皮紙に墨、岩絵具、箔


細い指で箸やスプーンを持っては何か涼しげに見やる二人の少女。下着でしょうか。白いノースリーブを着ていますが、よく見ると身体の一部分が山とも化して、その上には中国風の楼閣が建ち、人が集い、松が生えています。ようは人体が山水画の一角を成しているのです。

ガラスケース内の展示であった行幸ギャラリーに比べ、マルキューブはオープンスペース。全て露出の展示です。また各ブースに奥行きがとれるゆえでしょうか。インスタレーションの表現にも幅が広がっていました。


「アートアワードトーキョー丸の内2015」会場風景

一方でガラス張りということもあるのか、時に作品へ容赦なく西日の差し込む厳しい環境でもあります。ただともかく通路然とした行幸ギャラリーに比べて、マルキューブはブロックです。一つの展覧会としてはまとまりが増したような気もしました。

近年、観客参加型のオーディエンス賞の設定があったように思いましたが、今年はありませんでした。投票は出来ません。

会場の都合もあるのか昨年より会期がかなり短くなっています。約10日間限定です。ご注意下さい。(昨年の会期は約1ヶ月でした。)


「アートアワードトーキョー丸の内2015」会場風景

入場は無料です。8月9日まで開催されています。

「アートアワードトーキョー丸の内2015」 丸ビル1階マルキューブ
会期:7月31日(金)~8月9日(日)
休廊:会期中無休
時間:11:00~21:00
料金:無料
住所:千代田区丸の内2-4-1 丸ビル1階
交通:JR線東京駅丸の内地下中央口、東京メトロ丸ノ内線東京駅より地下直結。東京メトロ千代田線二重橋前駅7番出口より地下直結
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