窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

第20回燮会(やわらぎ会)に参加しました

2015年02月16日 | 交渉アナリスト関係


  2月13日、NPO法人日本交渉協会の第20回燮会に参加してきました。

  今回は交渉アナリスト1級会員で社会保険労務士の村上達志さんより、「労務問題に統合型交渉は通用するか」と題して、成功事例と失敗事例、そして掲題の目的を達成するために日頃心掛けていること、についてお話いただきました。

  労務問題の中でも、労使トラブルというと双方満足のいく統合型交渉が最も難しい分野の一つであるというイメージがあります。しかし、村上さんはかつて読んだ『7つの習慣』に登場する一節、「どんな場面でもwin-winの解決はあると信じる」に感銘を受け、以来「必ず双方満足のいく決着はあるはず」という信念のもと、数多くの労使トラブルに携わってこられました。

7つの習慣-成功には原則があった!
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  その結果、今日に至るまでその信念は揺るがないと言います。もちろん、上手くいかなかった事例もありますが、それは当事者にその気がなくなったか、外部要因により上手くいきかけていた話が頓挫してしまったというようなケースのようです。

  労使トラブルの典型例は労使間の金銭を巡る争いですので、このような交渉においてはとかく金銭面での折り合いをどこでつけるかということに終始してしまいがちです。しかし、これでは「win-win」の解決を目指すのは難しいと言います。例えば、ある労務トラブルで、被雇用者側が要求するとおりの金額を獲得できたとします。当然雇用者側には不満が残りますので、この時点で結果は「win-lose」です。しかし、要求通りの金額を獲得できたはずの被雇用者側にも不満が残ることが多いそうなのです。

  なぜなら、労務トラブルは表面上には金銭の問題であっても、その裏には会社を訴える(逆の場合もあります)に至った感情面の問題が隠されている場合がほとんどだからだそうです。人はこの心の問題が解消されなければ、金銭を勝ち取っても満足を得ることは難しく、その結果、この問題は「lose-lose」で終わってしまうというというわけです。

  村上さんは社会保険労務士として、立場上、雇用主である経営者側にいるわけですが、そういう立場にとらわれることなく、双方が本音で話し合える場を取り持つ調停者としての役割を心掛けていらっしゃるそうです。同じ問題を双方が満足のいくように解決したいと望んでいても、立場が違えばそれぞれの見方が違います。見方が違うので単に当事者同士が話し合っても感情のぶつかり合いになり、平行線を辿ってしまうことが多いのです。双方が主張を押し通そうとすると、互いに相手のあら捜しに終始するようになり、ますます「win-win」の解決から遠ざかってしまいます。



  村上さんは立場上、雇用者側ですから、被雇用者側が安心できるような環境を整え、相手を尊重し、徹底して話を聴くことを心掛けるそうです。特に被雇用者は自分の話を聴いてくれる場がなく精神的に追い詰められているからこそ、どこかに訴えていると言っても過言ではありません。そのために、一見不利に見える情報であっても、開示してしまうことがあると言います。なぜなら、調べればわかるようなことが後になって露見すると、かえって不信感を増幅させることになるからです。話し合いを積み重ねた結果明らかになったのは、労務トラブルのほとんどが双方本音を言わないところに起因しているということでした。

  本音で話し合った結果、感情のぶつかり合いから「大人の会話」になり、当初想定もしなかったような解決策が生まれ、双方が満足する。ある経営者からは「絶対分かり合えるはずがないと思われたことが、分かりあえた」と感謝されたこともあったそうです。表面上の問題が金銭トラブルであるからといって、ルールに則って粛々と金銭的解決を図り、感情の対立を極力避けようとする。これは話し合えば良い方向に変えられるものを、わざわざ悪化させる行為だとも言えそうです。

  しかし、このような過ちは労務トラブルに限らず、日常生活の中でもまま起きうるのではないでしょうか?例えば、問題のある部下に対して上司が何らかの罰を与えなければならない場合があったとします。経営者必読の書とも言われる『孫子』にも「賞罰、孰れか明らかなるや」(<自国と敵国のどちらが優れているかを測る一要素として>信賞必罰はどちらが明確であるか)とあるように、信賞必罰の明確化はリーダーシップの基本でもあります。したがって、規則に則り粛々と処罰をしなければならないという思い込みが、広く通念として浸透してはいないでしょうか?確かに信賞必罰は大事ではあるのですが、それだけではそもそもなぜその部下が問題を起こすのかという根本的な点を見過ごしているため、真の解決には至りません。それどころか、真の原因を放置しているために潜在的な不満が増幅し、かえって組織に悪影響を及ぼす可能性さえあります。



  本音で話し合う場を作るために、事例の中で村上さんが実際に行った「トーキング・スティック」という手法をご紹介します。これは前述の『7つの習慣』の続編『第8の習慣』に紹介されている、ネイティブ・アメリカンの手法なのだそうですが、スティックを持っている人にしか発言権がなく、スティックを持っている人は、相手が自分の言ったことを心から理解したと納得して初めて相手にスティックを渡すことができます。

第8の習慣 「効果」から「偉大」へ
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  最後に。話し合いにおいて相手を理解することを妨げている要因には、脳の働きも関わっているのだそうです。これは脳の覚醒下手術で有名な脳神経外科医の篠浦伸禎氏が提唱している説で、人にはそれぞれ得意とする脳の使用部位があり、その違いによりコミュニケーションのスタイルが異なるというのです。少々適用範囲を広げ過ぎている嫌いはありますが、興味深い説ですので、ご興味がおありでしたら一読されてはいかがでしょうか?

相性は脳で決まる ~仕事における人との相性を脳からみて改善していく方法~
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  同書によれば、僕は脳の優位が村上さんとは正反対のようです。それだけに、村上さんのお話からは一層学ぶところが多かったのかもしれません。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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