医療制度改革批判と社会保障と憲法

9条のみならず、25条も危機的な状況にあります。その現状批判を、硬い文章ですが、発信します。

負担増の悲鳴の中でも、医療制度改革関連法が成立、次なる負担増が着々と進行しています

2006年08月27日 | 医療制度

負担増の悲鳴の中でも、医療制度改革関連法が成立、
次なる負担増が着々と進行しています

年金生活者・高齢者に、負担増通知が4連発

 6月中旬、市県民税、国民健康保険料、介護保険料の決定通知、そして、老人医療の資格喪失通知が、順次発送されました。 
 昨年までは、非課税であった65歳以上の年金生活者に、市県民税の課税の通知が、その何倍もの国民健康保険料の増額の通知が、介護保険料は見直しでの増額と、加えて、課税による段階アップの通知が送付されました。さらに、住民税非課税が要件であることから、課税となったことで、老人医療費助成制度の適用外とされ、資格喪失通知が送られることとなったのです。
 17年税制改正により、18年度の住民税は、6項目にわたる増税が、実施されることとなりました。とりわけ、高齢者には年金所得控除の切り下げ(20万円以上)、老年者控除(48万円)・非課税措置(総所得125万円以下非課税)の廃止により、信じられないぐらいの負担増となりました。
 65歳以上の年金生活者は、266万6千円以下の年金では、無条件で非課税でした。しかし、今年から単身者であれば155万円以上、控除対象配偶者があっても211万円以上は、課税されることとなりました。
 また、年金額は変わっていないにもかかわらず、控除額が減されたことにより、少なくとも68万円所得が増えたとして、その分に税金がかけられ、増税となりました。

大幅な負担増でも、それは本来額の3分の1  

 この18年度の市県民税・国民健康保険・介護保険の決定通知、とりわけ、国民健康保険料の通知を受け取った、多くの方々は「計算間違いだ」と思い、区役所に抗議や確認のため出向きました。
 しかし、区役所の担当者は、けっして計算間違いなどではなく、「非課税から課税になった方々には、税額を18年は3分の2減額、19年度は3分の1減額、20年度は全額課税という経過措置が税法上とられた」ということで、大きな負担増になっているが、それでも「本来増額になる額の3分の1に減額されている」のだという説明でした。
  さらに、「したがって、来年も、再来年も、今年増額された額が、さらに上積みされることになります」という説明に、怒りや驚きをとおり越して、唖然とした方々が多かったようです。
 さきの、税法上の減額措置が受けられるのは、非課税から課税になった方々で、従前からの課税世帯は、税の減額措置の対象とはなっていません。
 しかし、税法上の経過措置を受けることのできない方々についても、救済措置を求める運動の成果として、国民健康保険料に限って、年金所得控除の切り下げと老年者控除の廃止にかかわる部分について、「18年は3分の2減額、19年度は3分の1減額」と、同様の軽減措置が適用されています。

負担増の悲鳴の中で、次なる負担増の法成立

 その負担増に悲鳴が上がっている最中、国会では6月14日に、医療制度改革関連法案が、審議らしい議論もなく、成立してしまいました。十数本の医療制度“破壊”法案が一括成立しましたが、その中心は新高齢者医療制度の創設にあります。その「高齢者医療確保法」という名の、高齢者の医療を確保しない法律が成立してしまいました。確保されるのは、さらなる負担増だけです。
 新高齢者医療制度の創設などは、平成20年4月からの実施ですが、70歳以上の現役なみ所得者の3割負担などが、今年10月から先行実施されます。
 その10月実施にむけて、老人保健法、健康保険法での所得判定は、8月1日が基準日であることから、すでに7月下旬には、一定以上所得者(世帯収入で520万円、単身者で383万円、課税所得額で145万円以上)に3割負担証(9月30日までは2割負担という表示)が送付されています。
 さらに、療養病床に入院する70歳以上の高齢者の、食費・居住費の自己負担化で、食費が1食あたり460円、居住費が1日あたり320円とされ、3食とった場合の1日の食住費負担は、合計で1700円(一般世帯)となります。医療費の一部負担金とは別に、これだけの負担が必要になったのです。
 そのほかにも、非課税から課税になったことで、入院時の一部負担金や食事代の限度額・減額証が発行されない(限度額や減額が適用されない)ケースが増えてきている、などの問題もあります。
 また、高額療養費制度が改悪され、一般世帯と上位世帯の負担限度額が、それぞれ引き上げられています。

新高齢者医療制度の創設 

 
負担増の攻撃は止まるところを知りません。さらなる改悪が決定されています。そのひとつが、新高齢者医療制度の創設です。 
 平成20年4月から75歳以上の高齢者だけの健康保険が創設されることとなっています。75歳以上の高齢者はすべて、この健康保険に強制加入となり、平均年額7.4万円の保険料負担と1割の窓口負担となります。(ただし、一定以上所得者は18年10月から、3割負担の先行実施)
 75歳以上の後期高齢者だけの健康保険、リスクの高い高齢者だけを組織する健康保険、これが正常に運営されることは、絶対にありえないと言えます。にもかかわらず、創設されることとなったのです。
 したがって、考えられることは、74歳までの健康保険とは一線を画した、独自の制度が導入され、一般の健康保険とは異なる、別枠の健康保険が創設されるということです。
 この後期高齢者の健康保険独自の医療給付制度・診療報酬体系を作ることが、法に明記されています。したがって、治療内容や薬剤が制限され、また、医療給付費が制限されることが予測されます。
 厚生労働省は、この後期高齢者の診療報酬体系について、今秋に新たな検討の「場」を設置し、来年の3月ごろに「新体系の基本的な考え方」を取りまとめる方針を、明らかにしています。

このような改悪の経過

1980年代 中曽根第2臨調・行政改革攻撃。マスメディアによって老   
        人(医療)攻撃が展開される。
1983年  老人保健法によって、老人医療の無料化がつぶされ、一    
       部負担金の導入、以降改悪が続く。
1984年  健康保険本人10割給付が崩され1割負担に。
1990年代 一部負担金の増額、健保本人2割負担。
2000年  介護保険制度創設、社会保障制度の改悪の雛型。
2000年代 老人医療に1割2割負担導入、すべての健康保険が本人     
        家族とも3割負担とされる。
  老人医療制度の改悪を梃子に、一般に、公費医療に、福祉医療に波及させる。これを三巡させることによって、健保本人負担を、1割負担・2割負担、3割負担と改悪してきました。さらに、結核や精神などの公費医療にも自己負担を導入し、乳・身・母などの福祉医療制度の改悪を進めてきたのです。
 老人保健法での改悪を、25年間積み上げたことにより、この法での改悪を完了したことから、新たに高齢者医療確保法という次なる改悪のための法を作り、さらなる改悪を進めようとしているのです。

改悪の背景とそのねらい

 
この間の医療制度改悪と規制緩和が進められるなかで、カタカナ保険会社の医療保険分野への進出は、目を見張るものがあります。アメリカなどを本拠地とする多国籍保険金融資本が、驚異的なスピードで、そのシェアーを拡大してきています。 
 さらに、「はいれます、はいれます」の宣伝で、高齢者をその医療保険に囲い込んでいます。現在は、入院1日当たり5千円とか1万円の現金給付ですが、後期高齢者健康保険が発足し、医療給付が制限されることになれば、その制限された医療給付部分を、肩代わりして給付する私的健康保険に、大化けする可能性があります。 
 今回の法改正の中に盛り込まれた、混合診療の解禁は、そのための布石であるといえます。介護保険制度では、医療に置き換えれば、すでに混合診療実施(保険の負担限度額を超えれば自費負担)となっています。
 非営利原則の医療を、自由(自費)診療の拡大などで、営利医療に変質させようとしているのです。病院経営に株式会社の参入、政管健保の民営化、電子レセプトの義務化なども、その意図からであるといえます。 
 医療そのもの、さらに医療保険や医療関連業務などを、営利の対象にするために、また、医療を100兆円産業に成長させ、多国籍保険金融資本・製薬化学資本などの利潤拡大のために、マスメディアを動員し、デマゴギーを振り撒いて、社会保障としての医療制度を改悪し続け、さらなる改悪を企図していることを、看破しておかねばなりません。 
 改悪の攻撃は、止まるところを知りません。したがって私たちも、引き続き粘り強く、反対運動を展開してゆく以外にすべはありません。

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3 コメント

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TBとコメント有り難うございました。 (panta)
2006-09-01 20:10:02
25年間といえば、医療者としての私の人生とほぼ一致します。その間ただひたすら「治療」に専心し、自分なりに誠心誠意努力してきたつもりです。それだけに、まさにその25年間に医療の大きな枠組みが、営利の対象として食い物にされてきつづけたというこの現実を突きつけられると、言葉を失ってしまいます。そして自分の不明に恥じ入ってしまいます。大変参考になりました。これからも宜しく御願いします。
TB・コメントありがとうございます。 (harayosi-2)
2006-09-02 10:29:40
pantaさん

TB・コメントありがとうございます。

苛斂誅求の世になろうとしています。

これに対抗できる政治的な「力」を作り上げる以外にないでしょう。

それにむけての模索や、当面する参議院選挙に向けて、呼びかけや努力がなされていますが...

反新自由主義の統一戦線作りです。

中南米での動きなどを、学ぶ必要がありそうです。
庶民は取られっぱなし (morichan)
2006-09-04 19:18:04
 あまりに読んでいて悲しくなります。

 確かに、貧乏人を絞りに絞ると、医療を受けなくなり、金のある人間は私費で生命保険に入れさせる。

 これによって、国家予算は潤沢になり、政府・官僚の思うがままの無駄使いを可能にさせるます。結局、国家と庶民の関係は、取る者と取られる者です。

 そして、このまま安部晋三が出てくると、ブログの言論も抑圧される可能性も出てきます。先ずは、ブログの連鎖で何とかできるならと期待しています。

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