『桜華』 PS2版感想

しれっとサブタイトル（説明？）を変えてみました。

『桜華　～心輝かせる桜』　（キャリエール）
えー、キャリエールが今年の３月に潰れちゃったので、リンク先はPS2版制作のピオーネソフト。
検索しても引っかからないので「あれー？」とは思ってたんですが、Wikiで見て納得。
そうかー、ダメだったかー…。まあ、エロゲ界ってけっこう厳しいんだろうしな…。


・シナリオ　５５～６５点
数字だけ見ると平凡ですが、評価の内訳は複雑です。
とにかく、話が長い。
メインヒロインが登場するまで1.5時間、最初の選択肢が出るまで更に1.5時間。
つまり、前振りの共通ルートが３時間あるんですね。
ファンタジーなので、色々説明してキャラ紹介したい気持ちはわかるんですが、これは長すぎる。
意地の悪い見方をすると「自己満ラノベ乙」というところ。
それぞれの能力、それに関する設定、キャラの過去、などなど固有名詞が満載。
作り手からしたら、唯一無二の世界観・キャラ・用語なんだろうけれど、
はっきり言って、読み手からしたらそんなもんどうでもいいんですよ。
『Fate』のようにきちんと作りこまれてるわけじゃなし、
どっかで聞いたよーな能力とエピソードを恋愛ADVユーザーに延々と読ませようってのは、
ちょっと迷惑。

動物を助けるとか、精神的引きこもりの少女の心を開くとか、
「いい話でしょ、ねっねっ」という感じで閉口します。
悪いけれど、そこまで付き合ってあげられません。一生懸命なのは伝わるんですが。

１ルートにつき、７時間以上はかかりますので覚悟が必要。
ちゃんと起承転結をつけて盛り上げようとしているところは評価できます。
良い意味でも悪い意味でもラノベ的ですね。


・グラフィック　５５～６５点
これもまた、何といっていいやら…。
ごてごてし過ぎない、優しくて爽やかなタッチはこの作品に合っていると思います。
女性にも受け入れやすいのでは。
一枚絵はふつう程度ですが、立ち絵が非常に多い。
通常サイズの立ち絵とアップ時の立ち絵、ちゃんとそれぞれ表情パターンがあります。
ただ、やはり画力が安定しておらず、時々崩れます。まずそこが減点。

そしてキャラデザ。
もうちょっとこう、購入意欲を喚起するヒロインを描くべきだったような。
赤毛ポニーの夏輝、猫耳ゴスロリの紗雪はいいんですが、それ以外が…。
メインのソルネとか、これでメイドさんなんですよ。
わざわざ無理に主人公を「ご主人様」とか呼ばせてるんだから、
メイドさんらしい可愛い衣装着せてあげようよ。
それとも、キャリエール側が
「メイドだけど、あえて黄色と緑でデザインして」って言ったんだろうか…。
何よりね、この人を攻略しろとか言われても…近所のおばさんのようで・・・。


・システム　２０～３０点
遅い。
セーブもロードもスキップも遅ーいー。だるい。
バックログもウィンドウ内表示だし、例の３時間後の選択肢一回でルートが決まるのもどうよ。
また、オートにしてる時に右上に「オート」ってでかい文字で表示されるのも気が削がれる。
どこもかしこもヘタレです。

OPムービーが良い出来なので、
リセットしなくても繰り返し再生するようにしてほしかった。


・音声　７５～８５点
キャスティングはまずまず。
違和感なく聞けますが、逆に言うとこれといって飛びぬけた演技をする方もいませんでした。

そして音楽、これが非常にいい！
ブランドの知名度や資金力を考えればありえないほどの充実した曲数。
日常系、ムーディー系、バトル系、どれも丁寧に作りこまれていて素晴らしい。
この『桜華』、BGMだけなら『Fate』や『この青空に約束を―』にも匹敵します。
OP曲の『Celebrate』も大好きなので、サントラ買っちゃいました。聴きごたえ十分です！


総評
こんなにもったいない作品もそうそうありません…。
なんていうか…きっぱり「駄作」って切り捨てるのも気が引けるんですよね。
「間違った勉強法を一日１０時間続ける受験生」って感じで、痛ましいというか…。

マイナーブランドでありながら、
一生懸命、手を抜かずにいい作品を作るぞ！という意気込みはものすごく伝わってきます。
音楽は素晴らしい出来ですし、技量は決して低くないので、スタート時点で誰かが客観的に、
「これはユーザーに喜ばれない」「ここは自己満足的すぎる」って指摘してあげられたなら…
と思わずにはいられません。
どっかの絵売りブランドみたいに媚び媚びする必要はありませんが、
変に前衛的なビジュアルを目指す必要もない。
だから頑張って次回作を…作れないんだなぁこれが。ああ、惜しい…。