「ありがとうございます」

その青年（仮に山田くんとしましょう）は確か去年の春ごろ私の職場にアルバイトでやってきました。

私の職場は幼稚園生から社会人までが通う塾のようなところ。

私が仕事を始めた十数年前に山田くんは小学校の高学年で通ってきていました。

おとなしくて、年齢の割には分別があって

それ故に（？）ちょっと覇気がないような印象もありました。



その山田くんは経済的な理由で大学進学をあきらめて就職し

その後、夜間の大学に入学して

2年生になる頃、我が職場にやってきたのでした。

もちろん（？）彼は私のことを覚えてくれていました ＾＾

久しぶりの山田くんは小学生の頃のおもかげはありましたが

当時より明るく快活になって

あぁ、いい時間を過ごしてきたんだなぁとうれしく思いました。



最初の頃は一生懸命過ぎてあらら？ということもありましたが

だんだん要領もつかめてきてなかなかいい感じ！

今は私にとってとても頼りになる存在になっています。



そして昨日。

彼からある公務員の試験に合格したので

来年の3月いっぱいで仕事を辞めさせてくださいと…

うっわぁ！おめでとう！

ボスも私も大喜び！

でも、まだ3年生よね？学業と仕事は両立できるの？

面接でもそれについてはずいぶん訊かれたそうですが

卒業に必要な単位はすでに取得しているので問題はなく

来春からは興味があって、仕事に支障のない授業に出るつもりです

と説明したそうです。

私たちは何も知らなかったけどがんばっていたんですね。



考えてみたら山田くんから一番多く聞いた言葉が

「ありがとうございます」でした。

どんな些細なことでもボスや私が「これはこうよ」と説明したり

ちょっとした連絡事項にも「わかりました」ではなく

「はい。ありがとうございます」と返ってくるのです。

私はあんなに自然に「ありがとうございます」を言えるかしら？

どんな小さなことでも吸収したいといつも思っているから

知ることを喜びだと感じることができるから

あんな風に言えるんでしょうね。

今ごろになってやっと気づきました。



来年3月のお別れの時には　　　　　　

少しでも山田くんの「ありがとうございます」に近づけているように

心を新たに毎日を過ごしたいと思うのです。