日々の便り

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

河のほとりで (13)

2017年07月11日 09時10分16秒 | Weblog

 霧雨のけぶる土曜日の昼下がり。 帰校後、大助は中間試験を何とか終わり、ヤレヤレの思いで廊下で一人昼食後の牛乳を飲んでいると、タマコが訪ねて来た。
 大助の様子を見ると
 「大ちゃん、寂びしそうな、お昼ご飯ネェ~」
と言いながら後片付けをしてくれて、椅子に座るや
 「わたしの、お手紙読んでくれた?」
と、早速、感想を求めて来たので、大助は
 「ウ~ン 夕べ読んだよ」
と、物憂げに答えると、タマちゃんは
 「なによ、そんな元気のない返事をして・・」 「試験が思う様にいかなかったの?」
 「それとも、何か、大ちゃんの気にいらぬことでもあったの?」
と、少し気落ちした顔つきで聞き返すので、大助は彼女に無理に理恵子さんの靴の修理を頼んだ手前、これはシマッタと思い
  「僕、試験勉強の合間に読んだが、タマちゃんらしい可愛い文章だったよ」
  「返事を書かなければ、タマちゃんに怒られると思い、大急ぎで書いておいたよ」
と言って、昨晩、書いた手紙をタマちゃんに渡すと、彼女は急に機嫌を直して笑いながら
  「大ちゃん、ありがとう。今夜、床の中でコッソリと読ませてもらうヮ」
と言いながら、大事そうに持参した漫画本に挟んで仕舞うと、愛用の布袋からチョコレートを取り出して
  「コレ タベテェ~」
と、お礼のつもりか差し出した。
 大助は、何時もと違い、今日ばかりはチョコレートを貰うことに、ためらいを感じ
  「いいよ、何時も貰ってばかりで気が引けるよ」
と言いつつ遠慮したが、彼女は
  「どうしたの? 何時もの大ちゃんらしくないヮ」 「勉強して疲れているの?」
と言いながら、テーブルの上に置いておいたら、隣家のシャム猫のタマが、網戸に顔を寄せて泣いたので、彼女はタマを家の中にいれ
  「こんな日は来てはだめョ」 「ほら、大ちゃんも元気ないみたいだしさァ~」
と文句を言いつつも、タオルでタマを拭いて抱いてあげていた。

 大助が、チョコレートを遠慮したのには、手紙のことが気になったからである。
 それと言うのも、大助は勉強の疲れもあるが、小学生のしかもオンナノコに、なんて書けばよいか思案にくれて、真面目に書く気にもなれず、遊び半分の考えで、たまたま、英語の勉強をしている最中でもあったので、面倒臭いこともあり、咄嗟の思いつきで
 「タマちゃん、何時もおやつを分けてくれて有難う」
 「最近のタマコちゃんは、笑窪も可愛いし、とっても綺麗になったョ」
 「きっと、将来は、宮城から西半分の都内では、一番の美しいオンナノコになると思うョ」
と書き出したが、そのあと、アルフハベットのZから逆にAまでを書き並べて、途中に適当にandやofを入れて体裁を整えて、最後にgood nightと書いておいた。
 大助にしてみれば、こんないたずらを知らずに嬉しそうに手紙を仕舞い込んだタマちゃんが、読んだあと果たしてどんな気持ちなるだろうかと、一寸、心配になり可哀想にもなった。

  雨模様もあり、沈んだ気分でいる大助に、何時の間にか帰宅していた理恵子と珠子が、二階の部屋で時に笑い声を出しながら賑やかに話あっていた。 すると突然、珠子が
 「大ちゃん、一寸、部屋に来てくれない」
と声をかけてきたので、大助は彼女等の部屋に呼ばれることはめったに無いことでもあり、何事かと思い元気よく返事して、タマコちゃんと二階に上がると、珠子が
 「ねェ~ 理恵子さんの、この服どうかしら、涼しそうでお似合いと思うんだけど、男性の目で見た感想を聞かせてェ~」
と言われ、大助は一目見て、卒直に
  「理恵姉ちゃん、色白で全体がスレンダーだし、それになんと言っても、薄いブルーのフレヤスカートの裾から覗いて見える均整のとれた長い足がとっても艶けがあり、魅力的で凄く似合うョ」
  「切角だから、僕の感想と言うか希望を言わせて貰うと、上着のフレアーの刺繍もよいが、もうちょっと、胸の谷間が覗いて見えるほうが、いいんじゃないかなァ~?」
と、真面目くさって言うと、理恵子が
  「わたし、その様な服は、一寸、恥ずかしくて着れないゎ」
と少し赤くなって返答すると、珠子が険しい顔つきになり、燃える様な黒い瞳で、睨みつける様に
  「大ちゃん、あんた雑誌のグラビヤの見すぎョ」
  「どうして、中学生らしく素直に感想を言えないの」「もう、いいゎ 下に降りなさい」
と文句を言いだしたので、大助は
  「なんだョゥ~ 人を呼びつけておいて・・」 「僕、男性として正直に感想を言ったのに・・」
  「姉ちゃんは、理恵姉さんの美しさに、やきもちを焼いているんだろ~ッ」
  「大体、姉ちゃんは発育不全で、表も裏も区別がつかない様な胸では、比較の仕様がないからナァ~」
と捨て台詞を言うと、一緒にいたタマコが
  「大ちゃん、そんなことを言うと、また、珠子姉さんからお仕置きを受けて熱がでるわヨ」 「わたし、知らないからネ・・」
と言いながら大助の頬をつねった。
 その後、タマコちゃんは後難を恐れてか、猫を抱えて
  「わたし、今日は帰るヮ」
と言い残して階下に降りていってしまった。
 大助も、今日は昼から気分が冴えず、タマコちゃんを玄関で見送ったあと、自分の部屋に戻り寝転んでしまった。 試験の出来具合も気になっていた。



 

 
 
  

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