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news commentary

ビデオ・メッセージ

2017-05-05 17:54:07 | Weblog

憲法記念日の3月3日、日本国首相で自由民主党の総裁である安倍晋三氏が、日本会議が中心になって開いた改憲集会に①2020年の東京オリンピックの年を新しい憲法が施行される年にしたい②憲法9条の第1項、第2項を残したうえで、自衛隊についての項を追加する③あわせて高等教育の無償化も憲法に書き込むと語った。

安倍氏が集会に出席して発言したわけではなく、集会主催者が安倍氏から送られてきたビデオ・メッセージを披露した。

米国大統領のトランプ氏が、ツイッターの書き込みで、米国の市民やメディアを右往左往させているのと同じ手法である。安倍氏は先ごろ読売新聞の首脳と会食し、その数日後に同紙が首相にインタビューを行い、3月3日の朝刊でこのニュースを報じていた(『朝日新聞3月4日付朝刊』。とはいえ、日本のその他の新聞はそのニュースの後追いをせざるをえなかった。

安倍首相はこれまでも日本会議の改憲集会にビデオ・メッセージを送ってきたが、内容は改憲派の季節のご挨拶に毛の生えたようなものだった。それが、今回は異様に中身の濃いメッセージだった。

安倍氏が2020年を目標に本気で9条変更に走り出したのか、憲法記念日をとらえての政治的ジャブだったのか、多くの市民も、多くの新聞も、自民党内でさえ、判断に迷ったようだ。

本気だったらもっときちんとした場を選んでいたはずだから、あれはアドバルーンをあげただけだ。読売新聞に特ダネとして書いてもらい、改憲派の憲法集会でビデオ・メッセージを流したが、自民党総裁として党幹部を引き連れて改憲スケジュールと内容を堂々と発表したわけではない。いやいや、かたちはどうあれ、2020年目標という流れがこれでできることになる、など。

そのころ安倍氏はというと、3日の午前から午後にかけて、東京・富ケ谷の自宅で過ごし、午後になって山梨県鳴沢村の別荘へ向かった。夕方には富士吉田市の中国料理店で首相補佐官、秘書官らと食事し、夜8時半ごろ別荘に帰った(朝日新聞3月4日朝刊・首相動静)。

翌4日は、早朝からお友達とゴルフ。ゴルフのあとは夕刻から別荘で、夫人、官房副長官、補佐官らとバーベキューを楽しんだ。官房副長官らが別荘を辞したのは夜10時ちょっと前(朝日新聞3月5日朝刊・首相動静)。

のどかなものである。首相は北朝鮮からミサイルが飛んでくることはないと知っているのであろう。

世間を騒がせておいて高みの見物である。憲法に自衛隊を正式認知する条文を書き込んだところで、北朝鮮がミサイルを飛ばすのを躊躇するわけでもあるまい。そもそも憲法9条の1項と2項を残したままで、自衛隊について書き加えるという発想が、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなものである。

日本政府の高等教育に対する公財政支出は、OECDの平均の半分ほどで、加盟各国中最低の水準だから、高等教育の無償化は素晴らしい約束になるが、さて、その財源をどこからひねり出すか? 教育国債? ビデオ・メッセージに託すには、これまた重大すぎる政策転換である。

(2017.4.5 花崎泰雄)

 

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