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治安出動

2011-03-23 23:52:11 | Weblog
憲法改正がもはや議会制度下ではむずかしければ、治安出動こそその唯一の好機であり、われわれは治安出動の前衛となって命を捨て、国軍の礎石たらんとした。
   (三島由紀夫、1970年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地で演説)

今日の東京をみますと、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もはや東京の犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況で、すごく大きな災害が起きた時には大きな大きな騒じょう事件すらですね想定される、そういう現状であります。こういうことに対処するためには我々警察の力をもっても限りがある。だからこそ、そういう時に皆さんに出動願って、災害の救急だけではなしに、やはり治安の維持もひとつ皆さんの大きな目的として遂行して頂きたいということを期待しております。
   (東京都知事・石原慎太郎、2000年4月9日、自衛隊練馬駐屯地で演説)



2000年4月9日都知事・石原慎太郎が、自衛隊練馬駐屯地で、自衛隊の治安出動に期待すると演説したとき、世間は戦争・兵隊オタクの石原が子どもっぽいクーデタの夢でもみているのだろうと馬鹿にしたものの、政治家の発言としては正面から問題にすることがなかった。問題にしたのは「三国人」発言。ゆがんだ排外主義と民族蔑視の面から石原を追及した。

その一例。正確を期すために、ここで都議会民主党のサイトから、当時の東京都議会民主党幹事長・河合秀二郎と石原のやりとりを再録しておこう。

●石原知事の「三国人」発言について(談話)
200年4月12日東京都議会民主党幹事長・河合秀二郎
 
石原知事が本日の記者会見で釈明され、謝罪されることを期待していたが、全く残念である。

 私たちは、二つの点から「三国人」発言を重大であると考える。
 石原知事は本日の記者会見で、「一義的には外国人という意味。ずっと日本にいる在日の朝鮮人や韓国人を三国人とは思わない」と述べた。しかし、それ以前の記者団の質問に対しては、「戦後の混乱の中で、せっかく作った青空市場で、いわゆる三国人が」と述べており、敗戦後、日本の支配から解放された旧植民地の朝鮮や中国の人々を指した意味での「三国人」という言葉を使っていることは明らかである。そして、この言葉は、当時、かっての植民地意識から抜け出せない日本人が、単に不法行為者に対してのみ使ったのではなく、植民地支配から解放された朝鮮や中国の人々全体に対する反感と憎悪の意味を込めて使ってきたのである。
 石原知事は、「日本人にとって厄介な、迷惑千万な外国人のことをかって第三国人と表現した」とも伝えられているが、朝鮮や台湾を植民地化し、その地に住む人々を「臣民」とした日本が、日本の敗戦によって解放されたこれらの人々を「厄介な、迷惑千万な外国人」として扱ったことこそを恥ずべきであろう。
 しかも、知事はこの言葉を外国人犯罪に結びつけ、自衛隊の治安出動に結びつけた。戦後の混乱期の日本の誤りを、50余年後の今改めて再現しようというものであり、いたずらに排外主義を煽るものですらある。極めて危険な発言といわざるを得ない。
 二つ目は、これまでの東京都の人権施策と齟齬をきたしている点である。
 かつて10年前、東京都の庁内紙「週刊とちょう」6万部が回収され、次号で「おわび」を掲載した経緯がある。それは職員から投稿された文章のなかに「第三国人」の文言があり、人権施策の立場から「偏見を助長するおそれがある」と問題にしたからである。
 また、昨年12月には人権施策推進のあり方専門懇談会が、東京都に対して差別解消にとどまらない幅広い施策の展開を求めているところである。
 石原知事の「三国人」発言は、東京都のとり続けてきた人権施策にすら反するのである。
 よって私たちは、賢明な石原知事が速やかに歴史に学ばれ、発言を撤回するとともに関係者に謝罪されること、さらにその仔細を都議会に説明するよう強く求めるものである。
以 上

●都知事の回答
  都議会民主党幹事長
  河合 秀二郎 様

 不法入国した外国人のことを不法入国した「三国人」と表現しました。
 この言葉は、私が意図した意味とは異なり、差別的に使われていたため、在日韓国・朝鮮人をはじめとする一般の外国人の皆さんの心を不用意に傷つけることとなったのは、不本意であり、極めて遺憾です。
 一般の外国人の皆さんの心を傷つけるつもりは全くないので、今後は、誤解を招きやすい不適切な言葉を使わぬように致します。
 なお、今後とも在日韓国・朝鮮人をはじめとする一般の外国人の皆さんに対する差別意識の解消を図るなど、人権施策の推進に積極的に努めてまいります。

                              平成12年4月19日
                               東京都知事  
                               石原 慎太郎

不法入国した外国人による騒擾事件というありもしない不安をあおりたてて自衛隊に治安出動の覚悟を促す東京都知事は、いったいなにをたくらんでいるのか、その点を都議会民主党は追及しなかった。

自衛隊は数々の災害出動をこなしてきているが、治安出動をしたことはただの一度もない。自衛隊法によれば治安出動は、①総理大臣が命ずる②都道府県知事が総理大臣に要請し、その要請に基づいて総理大臣が命じる、の2つのケースがある。

「60年安保」のさい、当時の岸信介首相が治安出動を赤城宗徳防衛庁長官に催促したが、赤城長官が罷免覚悟でこれを拒否、結局、自衛隊が治安出動することはなかった。のちに、『ニューヨーク・タイムズ』のピュリッツアー賞記者、ティム・ワイナーの著書Legacy of Ashesで、岸はCIAのエージェントだったと暴露された。ワイナーの本は邦訳されている(『CIA秘録』文藝春秋)が、このことで関係者から名誉毀損や訂正の申し立てがあったとは聞いていない。

話が横道にそれた。自衛隊の駐屯地に出かけて隊員に向かって「治安出動」に備えよと叫んだのは、いまのところ三島と石原の二人だけだ。三島は自衛隊の治安出動でクーデタを起こすことを妄想した。石原は現職の東京都知事で、三島よりは政治的妄想度は低いが、石原の公式サイトをのぞくとサイトの名称が『宣戦布告』。

総理大臣に治安出動を要請できる現職の「宣戦布告」知事が、直接、自衛隊員に治安出動に備えよと声をかける姿は不気味である。

(2011.3.23 花崎泰雄)


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