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発作性短絡症候群

2013-01-18 20:41:56 | Weblog

先の総選挙で落選して国会議員の議席を失った田中真紀子がまだ文部大臣だったとき、大学設置審議会が基準を満たすと判断した大学の新設を、「大学の乱立は教育水準を落とす」という理由だけで、設置OKの詳細な中身を知らないままで、認可しないと独自の判断をしたことがあった。彼女は、「認可する、しない」は文部大臣の権限であると言い張ったが、結局は受験予定者をはじめとする周囲からの「boo!」で、不認可を取り消した。

大阪市立桜宮高校の体罰問題で、大阪市長の橋下徹が同校の体育系2科の入学募集中止を大阪市教育委員会に求めた。これに対して市民から「受験生には罪がない」「子どもの夢を摘むのか」などの反対意見が大阪市に寄せられているが、橋下は「(桜宮高は)子どもを迎えられる態勢ではない」「(それでも反対なら)選挙で僕を落とす手段が与えられている」と話した。大阪の市立中学の校長会が「影響は非常に大きい」として募集実施を求める要望書を市教委に提出したところ、橋下市長は「そういう校長はいりません」と言った。受験生の声をくみ取ったものでは、との記者の質問にも「一番重要なのは亡くなった生徒のこと。(受験生は)生きてるだけで丸もうけ。またチャンスはある」と反論した。(2013年1月18日 読売新聞オンライン)。

文部大臣の下村博文は「入学試験を行うかどうかは教育委員会が権限を持って判断することで、現場の判断を尊重したい」「出願時期の直前に中止すると、受験の準備をしてきた中学生に重大な影響を与えることも考えられる」「(橋下氏は)よく言えば発信力があるということだが、厳しく言えばいろいろな騒動を起こすきっかけになっている」と記者団語ったと報道された。

文部大臣に言わせると大阪市長は騒動屋というわけだ。

過去の橋下の体罰関連発言を新聞から拾うと、

●「口で言って聞かなきゃ手を出すよりしょうがない」(2008年、大阪府と大阪府教育委員会主催の討論会)
●「もみ上げつまんで引き上げるくらいはいい」(2012年10月、大阪市教育振興基本計画有識者会議)
●「胸ぐらをつかまれたら放り投げるくらいまではオッケー」(同上)
●「蹴られた痛さ、腹をどつかれた痛さが分れば歯止めになる」(同上)
●「正直僕は、クラブ活動の中でビンタをすることは、ありうると思っている」「きちっとルール化できていなかったのが問題だ」「全国大会を目指す桜宮高校の体育科では、保護者も含め、ある程度のところは教育的な指導だという暗黙の共通認識があったのではないか」(2013年1月10日)

ルール化された体罰であれば教師に許された「教鞭」の内というのが、どうやら橋下の体質のように見受けられる。

ではなぜ、桜宮高校体育系2科の募集中止なのか。体罰に関係して高校生が自殺した桜宮高校は大阪の市立校なので、学校教育法第2条が定める同校の設置者は地方公共団体である大阪市だ。その大阪市の当面の責任者が橋下である。死者が出たとあれば、学校の設置者として何らかの対応を迫られることになる。その対応の仕方として募集中止を選択したのだが、今回はしくじったようだ。

不祥事を起こしたのは教師だから、教師、学校、教育委員会を対象に体罰と身体的な懲戒について再教育を行うべきところを、一般進学希望者に迷惑をかける学校の一部閉鎖を唱えた。持病の短絡症候群の発作である。

ではなぜ、発作が起きたのだろうか。先の総選挙では日本未来の党が小沢一郎グループと組んだあげく空中分解した。橋下・大阪維新の会も石原新党と合流したのち、国会に議席を持たない橋下の求心力は弱まり、庇を貸して母屋を取られつつある。

長い目で見ればこれが潮目の変わり時、大阪都構想の凋落の始めになるかもしれない。

(2013.1.18 花崎泰雄)
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