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「問題ない」は条件反射?

2017-03-21 22:59:57 | Weblog

 主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明に、これまでは盛り込まれてきた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が今回は米国の抵抗で削除された。このことについて、日本国の菅義偉官房長官が3月21日の記者会見で、「問題ない」と発言した、と日本の新聞各紙が伝えた。

菅氏から見れば「問題ない」問題なのだが、G20に集まった各国の財務相・中央銀行総裁は、侃々諤々の議論をし、挙句のはてに、内に忸怩たるものを持ちながらも、米トランプ政権の横車を入れたのである。

菅官房長官の「問題ない」発言を不見識とする意見もある。菅氏が国際政治や国際経済に優れた見識持っているかどうかはさておき、彼は永田町における自分の役目に限って言えば、十分な見識を持っている。

麻生太郎財務相(副総理)が現地バーデンバーデンで、「反保護主義」が盛り込まれなかった点に関して、「『毎回同じこと言うな』って言って、次のとき言わなかったら『なんで言わないんだ』という程度のもの」と説明(日経新聞)している以上、麻生コメントを否定するような発言を控えるのが役目柄というものであろう。官房長官は閣内融和の要である。

菅官房長官は3月14日の記者会見でも、稲田朋美防衛相が2007年に学校法人「森友学園」が起こした民事訴訟に原告側代理人弁護士として出廷したことを示す記録が見つかったことについて「個人的な活動に関することなので政府としてはコメントを差し控えたい。稲田氏から適切に説明されると思う」と述べるにとどめた。稲田氏の進退に関しては「まったく問題ない」とした。(3月14日、産経新聞電子版) 

稲田防衛相は安倍総理大臣のお気に入り閣僚なので、稲田氏を擁護することが安倍首相擁護につながる。

とはいうものの、菅官房長官の定例記者会見での「問題ない」の多発に、気を悪くしている国民もいると見えて、インターネットの世界をのぞくと、菅官房長官の「問題ない」というコメントをメディアの報道から集めた書き込みがあちこちにあった。そのいくつかを拾い読みしていて、筆者の頭の中にも過去の発言がよみがえってきた。

菅官房長官自身の政治資金集めパーティーで同氏の事務所が白紙領収証のやり取りをしたことについて、官房長官が「問題ない」(2016年10月)。望月環境相の政治資金めぐる問題でも、「返金しており、全く問題ない」(2015年2月)。宮沢経済産業大臣が過去に代表を務めていた自民党の支部が、外国人が株式の過半数を保有する企業から献金を受けていたことについて、事実が判明したあと、すぐに返金して適正に処理しているとして、「問題ない」(2014年10月)。原子力規制委員会の委員に就任予定の田中知・東京大工学部教授が、原子力関連事業者から今年前半まで報酬を受け取っていたことについて「いずれも少額で、また専門技術委員の立場から助言を行うような内容であり、委員に就任するうえで全く問題ない」(2014年7月)。百田尚樹・NHK経営委員の個人的発言「南京虐殺は無かった」発言について「は問題ない」 (2014年2月)。NHK籾井会長の「戦争地域ではどこでもあった」という慰安婦問題についての発言も「問題ない」(2014年1月 )。米国の諜報機関の各国首脳の電話盗聴の件で、安倍首相の携帯電話は大丈夫かと聞かれ「問題ない」(2013年10月)。

まあ、ざっとこんな調子である。政権に降りかかる火の粉を払うのは官房長官の役目だろうが、ここまで来ると、定例会見での記者の突っ込み質問に、梅干しを見ると唾が出るような条件反射で「問題ない」と答えているようにも思える。

(2017.3.21 花崎泰雄)

 

 


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