詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

映画『残像』 アンジェイ・ワイダ監督 岩波ホール

2017-07-17 13:07:25 | 日記
主人公はポーランドに実在した前衛画家。第1次世界大戦で左腕と右足を失って松葉杖で軽やかに移動。創作のかたわら大学で教えている平和な日々が政治的な理由で一転する物語。

映画が終わって『残像』として残ったのは、主人公が三度倒れる場面。豊かなポーランドの自然の中で絵を描いている学生達を丘の上から見下ろし、丘を転がって降りていく。身体は不自由になっても、創作と教育で充実した人生を送っているのが分かった。

娘が持ってきた聖画を隠してしまうほど無宗教な主人公。きっとバリバリの社会主義者だったか芸術にしか興味がなかったか。全てを失い薄汚い路上に倒れこむ主人公。無関心な人々の中にあって助けてくれたのは正教徒の信者らしい老婦人。

ショーウインドウの装飾の仕事を得たものの、マネキンとともに倒れる主人公。窓の外には普通に歩く人々。それは水族館の水槽の魚のように思えた。

映画を見ると主人公が何を飲み何を食べるかが職業柄気になる。主人公は賄いのおばさん?が作るスープを毎晩届けてもらっているようで、毎回スープとふた切れのパン。それすら2カ月分食事代が払えなくなり、取り上げられたスープの皿を犬のように舐める姿を描いて衝撃的。

燻んだ街の中にあって、そこだけ別世界のような主人公の作品を飾った美術館の展示室が無残に破壊されていく場面では心が痛んだ。アンジェイ・ワイダ監督によって、その存在が世界に知ってもらえただけでもよかったか。
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