詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

ばらの騎士 2回目 新国立劇場 2007年6月16日

2017-12-01 21:55:54 | 日記

しつこいですが、『ばらの騎士』2007年新制作の時は2回観たのです。この演出のキーワードは「つまみ喰い」だったみたいです。


初日の公演が、あまりにも素晴らしかったので普段は同じ演目を観ることはしないのだが、仕事の都合をつけ当日券を手に入れて「ばらの騎士」を再見する。これまた「ブラボー」とかスタンディング・オベーションのような恥ずかしい真似はしないのだが、スタンディングをしてカーテンコールではオックス男爵のペーター・ローゼに小声で、元帥夫人のカミッラ・ニールトンに普通に、オクタヴィアンのエレナ・ツィートコワには特大の「ブラボー」を浴びせた。カーテンコールには最後までつきあって、終わってから化粧室で顔をゴシゴシと洗わなければならないほど泣いてしまって…。今まで一番泣いてしまったかも。もう一度観たいけれど日程的に無理なのが本当に残念。劇場で配られるステージ・ノートにフライング拍手や前のめり禁止の注意書きがはさんであったが、周囲の人は最低の観劇マナーの人ばかり。普段なら気になるマナー違反の行為も舞台に集中していたおかげか全然気にならなかった。

 さて演出家のジョナサン・ミラーは旺盛な人間観察、想像力、好奇心の持ち主のようで舞台から発せられる情報量の多さに今回も圧倒される。それにしても舞台のアチラコチラで「つまみ喰い」をする人の多いことに驚いた。特に第3幕のアンニーナ!初日には気がつかなかったが、あんなに飲み食いしていたとは驚き。

 考えてみればマルシャリンはオクタヴィアンを、オックスはマリアンデルこと女装したオクタヴィアンをそれぞれ「つまみ喰い」したり、しようとしたのだから潔く身を引くのも対照的であり、また二人は似ているとも言えなくはない。そんなところにも演出家の細かな目配りがあったのかと感心させられた。

 そして身を引くマルシャリンにはオックスと差し違える覚悟のような迫力があって、なんだか「極道の妻たち」みたいな…。ロウソクの扱いの効果とか、舞台奥で暖炉の火を愛おしむように見詰めるマルシャリンなど、傑出した場面の連続だった第3幕だったが、オクタヴィアンとゾフィーのファースト・キスを目撃?したと思ったお小姓の視線は、「つまみ喰い」しようとしたフルーツだったというオチも「家政婦はみた」になる一歩手前で踏ん張った感じで面白すぎだった。

 今年は「タンホイザー」と「ばらの騎士」の当たり年なのだが、チューリッヒやドレスデンが、この舞台成果を超えられるのだろうか?話題の指揮者で音楽的な充実は約束されたようなものだが、この演出を超えられるかどうか、この目で確かめてみるつもり。大いに楽しみである。

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