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2012.12.2記事補足(加藤‐真部戦の解説)

2012年12月11日 | 横歩取りスタディ
 『平野流(真部流)』の記事の補足です。
 『将棋世界』2000年2月号の真部一男『将棋論考』で、真部さん自身が1977年の「加藤一二三‐真部一男戦」の将棋を振り返っていましたので、そこから一部を切り取って解説の補足とします。 〔〕内が真部一男の文章です。



初手より
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5五歩  ▲2四歩 △同歩
▲同飛 △3二金 ▲3四飛 △5二飛  ▲2四飛 △5六歩 ▲同歩 △同飛 ▲5八歩

〔 ▲2五歩に△5五歩は古い指法で近藤式は △5二飛である。ただ、△5二飛には「丸山ワクチン」があるから、それがイヤなら△5五歩とすればよい。△3二金に▲3四飛と横歩を取るのが当時の定型であった。現代は▲2八飛と指す。というのは▲3四飛の後、私が新手を出して後手が指しやすいのでは、と判断されるようになったからだ。△5六同飛が新手であった。〕

〔 前の▲3四飛に3時間18分の長考をした加藤九段も、△5六同飛は読まなかったそうだ。〕


△6二玉  ▲2八飛 △7二玉 ▲6八金 △7六飛 ▲6六歩 △1四歩
▲7八銀 △7四飛 ▲6九玉 △3三桂 ▲6七銀 △6二銀  ▲4八銀 △1三角
▲5七歩 △2五歩 ▲9六歩 △4二銀  ▲7七角 △5三銀左 ▲7八玉 △4四銀
▲6五歩 △3五銀  ▲3八金 △3四飛 ▲1六歩 △9四歩 ▲5六銀 △4二金
▲7六歩 △4四銀 ▲8六角 △5二金寄 ▲7七角 △5三銀上 ▲4六歩 △5四銀
▲4七銀上 △5五歩 ▲6七銀 △3五銀  ▲8六角 △6二金上 ▲1七桂

〔 指しやすさは感じても具体的に良くするのはむずかしい。銀をどんどん繰り出したがこの構想が最善かどうかは分からない。〕



△2六歩 ▲3六歩 △同 銀  ▲2六飛 △4七銀不成 ▲同金 △3八飛成
▲2一飛成 △4七龍  ▲5三銀
 
〔 加藤九段は既に1分の秒読みになっている。毎度のことながら驚くばかりだ。私の方は3時間ほど残っていて、何だかハンデをもらっているようだ。先手がついに戦機を見出し▲1七桂で戦闘の火蓋が切っておとされた。乱闘の始まりだ。〕



△3一歩 ▲5二銀成 △同 金 ▲1一龍 △4九龍  ▲6九香

〔 そこで加藤九段は凄い勢いで▲5三銀と放り込んできた。この手を私は見えておらず動揺したのを覚えている。あわてた私は1分で△3一歩と打ったが、ここは勝負どころなのだからしっかり腰を据えて読まなければいけなかった。△5三同金直と取り▲同角成△同金▲7一金△8二玉▲8一金△9三玉の変化を読み切るべきだった。△3一歩からは混戦である。〕

 〔 △4九竜に▲6九香がぴったりで、ここでは先手が良くなっている。頼みの綱が秒読みでは情けない。〕



△2二銀 ▲1二龍 △5六歩 ▲同 歩 △5七歩  ▲5三金 △6一銀
▲5四金 △5八金 ▲6三金

〔 △5八金の喰らいつきに▲6三金が凄い。1分将棋でよくこういう手が思いつくものと、いつも加藤九段には感心させられる。〕



△6三同金 ▲6四歩 △5四金 ▲1三龍 △同 銀 ▲2七角 △6八金
▲同角 △5八歩成 ▲4九角 △6八と ▲同香 △6四金  ▲2七角 △5四歩
▲5三銀 △6三金打 ▲4二飛 △6二金打 ▲6四銀成 △同金 ▲5八銀 △4四角
▲7七金 △3七飛  ▲6四香 △2七飛成

 〔 ▲6四香に△2七飛成として首を差し出した。〕



▲6六歩 △5二銀打 ▲5一金 △2八龍  ▲3八歩 △1九龍 ▲5二金 △同銀
▲6二香成 △同玉  ▲6四金

 〔 そこで▲6六歩が逸機、▲6三金△8二玉▲6二金と平凡に攻めて先手の勝ちであった。加藤九段はトン死筋を心配してしまったようだ。△5二銀打で後手にも希望が生まれた。〕



△5三金 ▲4一銀 △5一香 ▲5二銀成 △同香  ▲6三銀 △同金
▲同金 △同玉 ▲4三飛成 △5三銀  ▲4二金 △7九金 ▲6八玉 △5九角
▲6七玉 △1七龍  ▲5七金 △7二玉 ▲5二龍 △6二香 ▲7八金 △同金
▲同玉 △6六角  まで152手で後手の勝ち

 〔 ▲6四金がまたもや勝ちを逃した。ここは▲4一銀△5一香▲5二銀成△同香▲4三飛成で勝ちであった。〕


投了図

 〔それにしても加藤九段の1分の芸には感心する。本局では1分将棋になってからなんと百手近く指しているのである。最後の勝ちは僥倖であった。〕



 やはりプロの解説がないと、まともな形勢判断はできませんね。足らないように見えていたが、加藤さんが途中優勢になっていたのか…。



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