はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part92 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月03日 | しょうぎ
≪8四金図≫

 終盤探検隊は「先手」を持って、そして≪亜空間の主(ぬし)≫が「後手」を持って、我々は≪戦争≫を繰りひろげてきた。この≪亜空間戦争≫は、何度でも手をさかのぼってやり直しができるという、特殊ルールで、そのために「終わりがない」戦いであった。
 我々と≪ぬし≫は、このたたかいに決着をつけるため、≪最終一番勝負≫を行うことと決めた。

 その“決戦の日”はまだ先だ。
 今回の報告は、その決戦に向けての準備としての「研究」である。


    [さすらいの山の古老]
古老は書き、いった。

 もしも はてしない物語が
 自身をその中に含むなら
 この本の中の世界は
 亡びてしまうのだ
 
幼ごころの君は答えた。

 いいえ、もしもかの勇士が、
 わたしたちに加わるなら、
 新たな命が芽生えましょう。
 今こそかれも、心を決めるでしょう!

「まことに、おそるべき方じゃ、君は!」古老はいい、書いた。「最初からまたはなすということは、終わりなき終わりじゃ。われらははてることのないくりかえしの環にはまることになる。そこから逃れるすべはない。」                                                             (ミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』より )



 M.エンデ著『はてしない物語』(『ネバー・エンディング・ストーリー』として映画化もされている)は、少年バスチアンが、古本屋で見つけた本を読むうちに(その本のタイトルが『はてしない物語』)、その本の物語の中で必要な人物となって、本の中に入っていく話である。
 上に切り取った場面は、その本を書いた古老と、本の中の物語の“中心”である幼ごころの君との会話であるが、本来出会ってはいけない二人である。そうせざるを得ないほどの大ピンチが本の中の世界(=ファンタージエン)に訪れていて、幼ごころの君は、それを救うのは“かれ(かの勇者)”しかいないと言うのである。
 “かれ”とは、この本を読んでいる少年、バスチアンのことであった。
 バスチアンは“勇者”として迎えられ、ヒーローとして大活躍。前半はそういう話。
 しかし活躍して自信を得たのはよいが、そのうちにバスチアンは自分を見失い(性格も自己肥大してしまい顔も姿も変わる)、本の中の世界(=ファンタージエン)から現実世界に戻れなくなってしまう。
 ある日ハッと気づき、戻りたい、どうしたら現実世界に戻れるのだろう―――というような話が、後半部である。

 何かに“感情移入”することは楽しいことである。しかし夢中になるあまりいつの間にか、帰り道がわからなくなるようなことは、実はだれもが何かしら経験することである。
 時にそれは危険な旅になることもある。

 我々のこの≪亜空間の旅≫も、そういう危険な旅だったようである。
 棋譜の観測者であった終盤探検隊は、“感情移入”して先手番に肩入れしていたら、いつの間にか「先手番」をもって闘う立場になっていて、この≪亜空間戦争≫から抜け出すことはできなくなっていたのである。
 唯一の脱出方法は、「勝つこと」である。


≪夏への扉図≫
 この図から、3三歩、同銀、3四歩、同銀、9一竜、5九金、6六角、5五銀引、9三角成、9四歩と進むのが、我々終盤探検隊が≪亜空間の主(ぬし)≫を相手につくってきた“定跡”である。
 
≪9四歩図≫
 後手の9四歩(図)に、そこで、3三歩、3一歩、4一飛と進めば、これが先に終盤探検隊が成功して勝利の雄叫びをあげた『黒雲(くろくも)作戦』である。この道で「先手勝てる」と信じている。
 
 さて、ここではその道ではなく、この≪9四歩図≫から、「3三歩、3一歩」の後、“9六歩”とし、すると後手は先手の8五玉からの“入玉”を阻止するために8四金(次の図)と金を打つのがほぼ必然手となる。

≪8四金図≫
 ここで我々は、新たな二つの有力手を試したいと考えている。
 一つは、4一飛。 もう一つは、3九香だ。
 (すでに「勝ち筋」を一つ見つけてはいるが、もっとよい道があればそれに越したことはない)


<新・黒雲作戦>

≪4一飛図≫
 『黒雲作戦』は、「3三歩、3一歩」のすぐあとに「4一飛」と敵陣内に飛車を打ち込む作戦であったが、その飛車打ちを保留して、「9六歩、8四金」の後に、“4一飛”(図)はどうだろうか、というのが以下の研究テーマである。
 ここでのこの、“4一飛” を、『新・黒雲作戦』と呼ぼう。

 先手の9六歩に、後手が8四金としたのは、先手の8五玉からの“入玉”を阻止するためだ。先手を持つ終盤探検隊は、この「8四金+9四歩」の後手の壁を見て、どうやら“入玉”は無理と悟り、ここは先手自信なしと以前は一旦あきらめた図なのであった。
 しかし、落ち着いて考えてみると、この場面で8四金と打つのは、後手としてもそれほど嬉しい手ではないだろう。後手も“しかたなく”打ったという面がある。実際、先手の9六歩には、8四金以外の選択肢がない場面なのだ。
 だから、先手も強気に考えて、“後手に8四金と持駒の金を使わせた”として、そこで4一飛から敵を倒す(つまり攻める)という考え方もありなのではないか。あの“8四金”を質駒にする展開がより望ましい。
 『黒雲作戦』のときの4一飛は、“攻めるぞとおどして入玉する”というような意味合いが濃かったが、今度の『新・黒雲作戦』は逆に、“入玉するとおどして金を使わせて敵玉を攻める”という思想の飛車打ちなのである。

 具体的に、指し手を見ていこう。
 図の“4一飛”は、3一飛成以下の“詰めろ”である。したがって後手は何か受けなければいけないが、どう受けるかというところ。
 考えられる手は、次の4つ。
  〔鉄〕4二銀
  〔銅〕3三玉
  〔錫〕3二桂
  〔鉛〕7五銀
 4つめの〔鉛〕7五銀は受けの手ではないが、先手玉をある程度王手で追ってから、後で受けようという意味である。
 我々は、検討の結果、後手の最強手順は「7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉」であると、判断した。その解説をする前に、〔鉄〕4二銀でどう進むのか、それをまず示しておきたい。これもほぼ互角の闘いである。

≪4二銀図≫
 〔鉄〕4二銀と、後手が指したところ。
 後手としては、理想的には、4一に打った先手の飛車を取って、それを攻めに使いたい。だから、4二銀の後は、3三桂として3二玉~4一玉、または3三銀~3二玉~4一玉、それから3三玉~3二玉~4一玉もあり、この3通りのどれかを実現させたい。いずれにしてもあと3手の手数が必要である。
 それが無理なら、7五銀として、7七玉に、6六銀左や6五桂などで玉を下段に追い込むことをねらいとするのが後手の立場である。 

4二銀図01
 4二銀と引いた場合、5三歩(図)が手筋となる。次の5二歩成が“詰めろ”になるので、ここでは後手は放置できず、しかし取るなら、5三同銀引しかない。
 すると先手は7三歩成とと金がつくれる。
 以下、6四銀引、7四金、7五歩、8六玉、7三銀、同金、7四桂(次の図)

4二銀図02
 7四同金、同金、8五銀(次の図)

4二銀図03
 後手から7六金、9七玉、8五桂と攻められては負けなので、先手8五銀(図)とその攻めを受けた。8四金打なら、7四銀、同金、2六桂、3三銀、6一角と攻めていける。
 しかし8五銀にも、7六金と後手は打ってくる。
 7六金、同銀、同歩。そこで先手は攻めに転じる。
 2六桂、3三銀、5四歩(次の図)

4二銀図04
 この5四歩(図)で、代えて3四桂は、同銀なら3九香で先手勝てるが、3二玉とされるとどうも不利である。
 ここは図の5四歩が最善手と思われる。
 対して後手6四銀と出たいが、それは4二銀で後手玉に“必至”がかかる。6二銀は、3四桂で先手良し。
 よって4二銀右と引く。
 そこで3四桂。これを同銀は、6三銀で先手良し。
 したがって後手3二玉。

4二銀図05
 そこで6一銀(図)が決め手となる。先手優勢。
 4一玉なら、5二銀成、同玉、6二金、同玉、5三金、同銀、7一馬以下“詰み”。
 6二金には、5二金と打つ。この手は、4二金以下の“詰めろ”になっており、5二金を同歩も、同銀成で、先手玉は詰まないので、先手勝ちだ。(5二同銀成を同金なら、3一飛成、同銀、4一角まで) 

 〔鉄〕4二銀は先手良し、と結論したい。


≪4一飛図≫(再掲)
 「〔鉛〕7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉」がおそらく後手の最善の手順である(次の図)

≪3三玉図≫
 図の3三玉に代えて3三桂は、8四馬と金を取った手が後手玉の“詰めろ”になっていて先手良しになる。
 だから3三玉だ。
 後手は7六桂と打つ手を保留している。これは場合によっては、7六銀と銀を使うことも含みにしている。
 ここで先手は、(1)1一角と(2)3一飛成と2つの手がある。
 (1)1一角とする手をまず見ていくと、これを2二桂と受け、以下3一飛成、4四玉、2二角成、3三歩、6一竜、6二歩、2一竜は、先手良さそう。
 ところが―――

変化1一角図1
 (1)1一角に、3二玉(図)と引かれる手がある。これが好手で、この図は先手不利である。
 先手には、3一飛成、同玉、8四馬という勝負手がある。8四馬を同歩なら、2二金以下後手玉が詰むが、しかし8四馬に2二桂と受けられて、9四馬、7六桂、9七玉、8九飛(次の図)となって―――

変化1一角図2
 先手負けである。(9五歩としても、9九飛成、9八香、8八桂成、9六玉、9八竜、9七金、同竜、同玉、8七成桂となって、以下先手玉は詰み)

≪3三玉図≫(再掲)
 したがって、この図では(2)3一飛成と攻めることになる。後手は4四玉(次の図)

≪4四玉図≫
 この“中段玉”をどう捕まえるか。(「激指」評価値は[-240])
 “中段玉”は捕まえにくいが、しかし先手には四枚の大駒がある。

 <r>4六金、<s>2六角、<t>4六香が候補手。
 以下順に見ていく。


変化4六金図01
 <r>4六金(図)には3三桂(3三歩も有力)。 以下、6一竜、6二歩、3八香(次の図)

変化4六金図02
 後手はここで8五桂。以下、3四香に、7六銀(次の図)

変化4六金図03
 先手玉はまだ詰まないように見えるが、実は“詰めろ”がかかっている。7七銀左成、8九玉、9七桂打、同香、同桂不成、9九玉、9八香、同玉、8七銀成以下。
 よって先手は、3三竜、5四玉として、取った桂馬を7九桂と受けに使う。
 対して後手は7七桂成、9八玉、7五桂(次の図)

変化4六金図04
 後手勝勢。

変化4六金図05
 3八香に代えて、2六角(図)はどうだ。
 3五歩、4五歩、同銀、3五金、5五玉、3三竜、7六桂、9八玉、3四歩(次の図)

変化4六金図06
 後手に金を渡すと先手玉が詰む。なので先手2五金。つらいがここはしかたがない。
 しかし7七銀成、8九香に、8八桂成、同香、7六桂と迫られて―――(次の図)

変化4六金図07
 “受けなし”になった。後手勝ち。

 <r>4六金では、どうやら先手に勝ちはない。


変化2六角図01
 <s>2六角(図)と打って、3五歩に、5九角と金を取るのはどうだろう。
 後手は6五桂と打つ。このままだと、7七桂成、同角、7六桂以下、角がタダ取りされてしまう。
 先手は4九香(次の図)。 王手。

変化2六角図02
 これを4五桂と受けてくれれば、4六歩で先手有望になる。
 後手は持駒の桂馬は攻めに使いたい。よって、4九香には4五銀と受ける。
 以下、6一竜、6二歩、2六角、7七桂成、9八玉、3三桂(次の図)

変化2六角図03
 3五角、5五玉、4五香(3三竜は4四銀がある)、7六銀、8六金、8五桂(次の図)

変化2六角図04
 先手は適当な受けがなくなった。後手勝ち。

 <s>2六角も先手勝てない。


変化4六香図01
 <t>4六香。 どうやらこの手が先手の最強手。
 4五桂と受けるのは、2六角、3五歩、6一竜、6二歩、6五金で、形勢不明(互角)。
 4六香には、後手5五玉で勝負。後手はなるべく二枚の桂馬を攻めに使いたい。
 当然先手は3四竜と銀を取る。
 以下、7六桂、9八玉、7七銀成(次の図)

変化4六香図02
 ここで(1)4五竜とするか、あるいは(2)7九銀と受けるか。

 (1)4五竜、6六玉、5五角、6七玉、7七角、同玉、7九銀、6六桂(次の図)

変化4六香図03
 この図はわずかながら後手が良いようだ。
 8八銀打と打つのは、同桂成、同銀、6八玉、7九金、5八玉、7五竜、同金、同馬、7八銀、6六馬、7九銀不成、同銀、6七歩…、やはり後手良し。 
 8九銀と受けると、5六角、8八金、同桂成、同銀直、6七玉、7五竜、同金、同馬、2九角成(次の図)

変化4六香図04
 やはり少し後手寄りの形勢だ。

変化4六香図05
 戻って、一旦(2)7九銀(図)と受けてみる。 

変化4六香図06 
 後手は6六玉(図)が最善手と思われる。
 そこで先手がどうするか。
 3五竜と、4三香成を考えていく。(4五竜は6七玉で後手良しがはっきりする)

 3五竜は、5五角や6五金を狙うと同時に、場合によっては3八竜のような活用を考えている。6七玉なら3八竜だ。
 とりあえず6五金と打つ手がきびしいので、後手は6四銀上とそれを受ける。
 以下、6一竜、6二歩、4三香成、同金、5一竜、8五桂(次の図)

変化4六香図07
 8五桂(図)と打たれて後手優勢になった。 後手玉に対する有効な攻めがありそうで、ない。
 今の手順、4三香成のところで他に良い手があればというところだが、形勢を先手に引き寄せるほどの手はないようだ。例えば6七歩、同玉、3八竜は、6八桂成と応じて、やはり後手が良い。

変化4六香図08
 戻って、4三香成(図)が有効な攻めで、同金、同竜は、次に4六竜と引く手を見て、先手有望となる。
 よって、後手は8五桂。これでどうなるか。
 対して先手5二成香は、同歩で、その時に8八桂成以下、先手玉が“詰めろ”になっていて、後手良し。

変化4六香図09
 なので、先手は8九角と勝負手を放つ。
 対して6七となら、3六竜、5七玉、4七金、5八玉、5六竜となって、これは先手良しになる。
 後手は4三金が正着。同竜は9七香の一手詰。
 なので先手は3六竜だが、5六香、6一竜、6四歩、4七金(次の図)

変化4六香図10
 4七金(図)で、後手玉に“詰めろ”をかけた。これが先手8九角のねらいだが…
 8八桂成、同銀、同成銀、同玉、7七桂成、9八玉、7八銀(次の図) 

変化4六香図11
 7八銀(図)で、逆に“詰めろ”をかけられた。これは後手優勢がはっきりした。
 それにしても、四枚の飛車角に囲まれても、それに負けないこの後手玉の強靭さよ。「参りました」と言うしかない。

 <t>4六香も先手は勝てなかった。


≪4一飛図≫(再掲)
 この「9六歩8四金型」での「4一飛」(新・黒雲作戦)は、7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉と対応され、先手が勝てないようだ。
 8四金と後手がここに金を打った後の4一飛は、先手の9三馬を5七馬と引く手がなくなっているので、後手3三玉から“中段玉”にされると捕まえるのが難しくなる。後手としては、なるべく持駒の桂馬を受けに使わないで、玉を捌いてかわすのが最良の応手となった。

 『新・黒雲作戦』は不発に終わった

 
 次回は、上図の4一飛に代えて、“3九香” と打つ攻めを調査してみよう。


                       『終盤探検隊 part93』につづく
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