法律の周辺

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婦女暴行訴訟における衝立の設置について

2006-07-11 17:18:50 | Weblog
被害者保護,本人尋問で異例のついたて…婦女暴行訴訟 YOMIURI ONLINE

 記事の「証言台と傍聴席との間についたてを設けること」は,裁判公開の原則(憲法第82条)との関係が問題となる。
本件は性的陵辱による損害賠償請求事件だが,公開することにより「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」場合とまではいえない。よって,公開が原則であり,衝立の設置は許されないようにも思える。
しかし,翻って考えるに,裁判公開の原則は,「裁判の公正確保」,「当事者に対する適正手続保障」及び「国民の知る権利」等に資するものとして認められている制度。
もし,衝立の設置がないとすれば,当事者は傍聴席の好奇の目に曝されることになり,訴訟の提起を躊躇することにもなりかねない。そうなっては,「裁判を受ける権利の保障」(憲法第32条)は画餅に帰する。もはや,「当事者に対する適正手続保障」どころの話しではない。手段を貫くために目的を犠牲にしては,本末転倒である。

本件のようなケースでは,まさに,「当事者に対する適正手続保障」,さらに言えば,「裁判を受ける権利の保障」を損なわないためにも,憲法第82条を緩やかに解すべきは当然である。衝立の設置により得られる利益を考えれば,「裁判の公正確保」及び「国民の知る権利」が蔑ろにされたなど,言う必要はなかろう。
よって,衝立を設置するという本件訴訟指揮,合目的的処置として妥当である。

なお,訴訟記録の閲覧の制限に関して民訴規則第34条がある。


日本国憲法の関連条文

第三十二条  何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第八十二条  裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。
2  裁判所が,裁判官の全員一致で,公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には,対審は,公開しないでこれを行ふことができる。但し,政治犯罪,出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は,常にこれを公開しなければならない。

民事訴訟法の関連条文

(裁判長の訴訟指揮権)
第百四十八条  口頭弁論は,裁判長が指揮する。
2  裁判長は,発言を許し,又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。

(当事者本人の尋問)
第二百七条  裁判所は,申立てにより又は職権で,当事者本人を尋問することができる。この場合においては,その当事者に宣誓をさせることができる。
2  証人及び当事者本人の尋問を行うときは,まず証人の尋問をする。ただし,適当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,まず当事者本人の尋問をすることができる。

民事訴訟規則の関連条文

第三十四条 秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を当事者に限る決定を求める旨の申立ては,書面で,かつ,訴訟記録中の秘密記載部分を特定してしなければならない。
2 前項の決定においては,訴訟記録中の秘密記載部分を特定しなければならない。

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