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  <title>はな to つき</title>
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  <dc:creator>hanazono7</dc:creator>
  <dc:date>2018-01-13T10:33:11+09:00</dc:date>
  <language>ja</language>
  <copyright>Copyright:(C) 2018 NTT-Resonant Inc. All Rights Reserved.</copyright>
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   <title>はな to つき</title>
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   <description>花鳥風月</description>
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  <description>花鳥風月</description>
  <docs>http://blogs.law.harvard.edu/tech/rss</docs>
  <item>
   <title>桜の下にて、面影を（27）</title>
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   <description>
<![CDATA[
☆☆☆<br>
<br>
「ところで、ご両名は、付き合っておいでなのですか？」<br>
<br>
すでに狂酔の域に達していた、無遠慮が取り柄で、<br>
それがどういうわけか容認されるという、妙な人徳を備えている寂念が、<br>
脈絡もへったくれもない流れで口にした。<br>
<br>
西行研究会、夏合宿恒例の酒宴でのことだった。<br>
<br>
「突然、なに馬鹿なことを言い出すんすか」<br>
<br>
同じく酩酊の域に達していた二年生の弟分寂超が、<br>
いつもの十倍突飛押しもない無駄口に、酔いも吹っ飛ぶかのごとく、<br>
咄嗟に反応した。<br>
<br>
「馬鹿ってことはなかろう。ここだけではなく、いよいよ以って、<br>
学校中の関心事だと思うのだが」<br>
<br>
鼻の頭には玉の汗をかきながら、まったく悪びれることもなく寂念は続ける。<br>
<br>
「確かに、そうかもしれないすけど」<br>
<br>
「どうにも釈然とせんのですよ。何と言いましょうか、<br>
特に白駒嬢の振る舞いと申しますか、言動が」<br>
<br>
この春卒業した先代の部長から、栄誉ある法名を授かった常盤三寂（さんじゃく）の二兄弟。<br>
<br>
実は、今年の新入生は入部と同時に、末弟の寂然と命名されることが、<br>
二兄弟の密かな決め事となっていたのだが、<br>
さすがに鶏群の一鶴とあってはそうもいかず、三兄弟の揃い踏みは夢と消えていた。<br>
<br>
「それは、どういう――」<br>
<br>
未成年ということもあり、ひとりオレンジジュースを飲んでいたしらふの二葉は、<br>
突然すぎる寂念の暴投に返答を詰まらせた。<br>
<br>
「能う御座んすか。住友先輩といえば、岡目八目、<br>
押しも押されぬ我が校のプリンスであらせられるのです。<br>
余所目（よそめ）には、そんな御方と全校あげての公認カップルと言われているのに、<br>
何かこう、よそよそしいと申しましょうか」<br>
<br>
「あ、それは、僕もちょっと思ってたっす」<br>
<br>
いったいどの立場なのかが、自分でも分からなくなった寂超が、兄寂念に同調してきた。<br>
<br>
一方、槍玉に挙げられているはずの片割れ苗雅は、<br>
まるで他人事のように相変わらずのポーカーフェイスのまま、<br>
粋に着こなす白薩摩を、少しも崩さず面正しく酒を飲んでいる。<br>
<br>
「もしや他に好きな御仁でもござりませぬか？住友先輩以上の男子など、<br>
この世にあるはずもなかろうというのに」<br>
<br>
「え、そうなの？白駒さん、誰か付き合ってる人いるの？」<br>
<br>
完全なセクハラ発言の温床である。<br>
<br>
「いいえ、そのような方はいませんよ」<br>
<br>
まさかの急展開に、二葉の動揺は青天井を突き抜ける。<br>
<br>
「誠にそうでありましょうか。西行研究会随一のロマンティスト寂念の推理をもってすれば、<br>
当たらずといえども遠からずと存じますが」<br>
<br>
「それで先輩、その相手の殿方というのに心当たりはあるんすか？」<br>
<br>
「さあて、我ながら斯様なことを考えるのは笑止千万なのじゃが、<br>
それは人跡未踏、絶対に手の届かない方なのじゃよ」<br>
<br>
「手が届かない？それって、どういうことすか？<br>
住友先輩がすでに手の届かない殿上人のように思えるんすけど」<br>
<br>
「如何にも、寂超君。先輩は殿上人であるからして、世が世なりせば、<br>
おいそれと近づくことも許されぬランクのお方なのじゃよ。<br>
それは間違いのないことなのじゃよ。さりとて、そんな先輩でも敵わぬ御仁が、唯一人おられるのじゃよ」<br>
<br>
「じゃよ、じゃよ、うるさいんすけど。で、それって誰なんすか？もったいぶらないで教えてくださいよ」<br>
<br>
泥酔している寂超は、隣の酔っ払いの肩を掴んで激しく揺らす。<br>
当然揺らしている本人も大きく揺れる。<br>
最悪の酒宴コンビだ。<br>
<br>
「こら、揺らすな。揺らすまいてや。気持ち悪い。良いか、聞いて驚くでないぞ、<br>
白駒嬢の白馬の王子様はな、何を隠そう、言語道断、天地神妙に誓って、さあ御覧ぜよ…」<br>
<br>
「もう、なに意味不明なこと言ってんのよ。そんな口上はどうでもいいから、早く言えっての」<br>
<br>
まんじりとしている寂超は、敬語もそっちのけで寂念を急かす。<br>
<br>
「それはな――西行法師、その人ぞ」<br>
<br>
ぽかーん、という大きな吹き出しが、間抜けな音を立てて寂超の頭上に現れる。<br>
<br>
「はあ？なに言ってるんすか。わけ分かんないんすけど」<br>
<br>
「おうよ、小生にだって、わけが分からんよ。誰がどう分かるっていうのかね、そんなこと」<br>
<br>
「なに言ってるんすか、先輩が自分で言ったんじゃないすか」<br>
<br>
もう誰の手にも負えない酔狂どもである。<br>
ただの場末酒場の飲んだくれどもである。<br>
<br>
「で、どうなのよ？」「して、いかに？」<br>
<br>
本物の兄弟顔負けの阿呆二寂は、肩を組んで同時に二葉を覗き見た。<br>
<br>
「して、いかに、と言われても――」<br>
<br>
酔っ払いの戯言のようではあったのだが、二葉にとってはその実、<br>
真を突かれていたことで、返答に窮してしまったのだ。<br>
<br>
「君たち、今夜はもうここまでにしておきなさい。少しばかり酒に飲まれております。<br>
二葉さんとわたくしは、これから一寸外の空気を吸って参りますから、<br>
二人はもうお休みになっていてください」<br>
<br>
「そんな殺生なあ――」<br>
<br>
漫画に出てきそうな、ど阿呆二人組風情に成り果てた後輩たちを袖にして、<br>
そのまま苗雅は、二葉を連れ立って四条通りへと繰り出した。<br>
（つづく）]]></description>
   <category>【小説】桜の下にて、面影を</category>
   <dc:date>2018-01-13T10:33:07+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>月夜舟　五十三夜</title>
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   <description>
<![CDATA[
今宵は、 <br>
山水画の原風景の中、邪魔にならないように身を屈めています。 <br>
<br>
どこまでも静止画のような景観は、色の世界を超越します。 <br>
水面に映える静寂に心を清めて、お月さまとお話します。 <br>
<br>
お月さま、 <br>
<br>
論理は、感情を超えないよね。]]></description>
   <category>月夜舟</category>
   <dc:date>2018-01-12T18:35:24+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>桜の下にて、面影を（26）</title>
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   <description>
<![CDATA[
「思い出の松なのでしょうか？」<br>
<br>
砂を踏む雪駄の音に気づくこともなく、松を見遣る桐詠の横に、<br>
風流な装いの男が立っていた。<br>
<br>
「いえ、少々懐かしい気がしたもので」<br>
<br>
何の違和感もなく、いつの間にか寂かに佇んでいた参拝者らしき人に、<br>
桐詠は答えた。<br>
<br>
「昔見し　松は老木に　なりにけり　わが年経たる　程も知られて」<br>
<br>
「三十一文字（みそひともじ）、あなたも嗜まれるのですか？」<br>
<br>
たった一度、それも聞こえるか聞こえないかの声で詠った一首を諳んじたことに驚きながらも、<br>
その堂に入った節回しが、紛れもない練達のものであることを悟った。<br>
<br>
年の頃なら、二十代半ばといったところだろうか。<br>
青磁色の紐に、墨流しの羽織が、この松と浜の風情に合っている。<br>
<br>
実家に暮らしていた頃は、三代にわたって和装で過ごしていたこともあってか、<br>
桐詠は隔世の感など抱くこともなく、その風采にしみじみと見入っていた。<br>
<br>
「白眉でしたので、ついなぞらせていただきました」<br>
<br>
「恭悦です。こちらへはよくいらっしゃるのですか？」<br>
<br>
どことなく勝手知ったる場所のような気がして、桐詠は聞いた。<br>
<br>
「ええ、ずいぶん前にここから讃岐へ渡ったことがございます。お分かりになりますか？」<br>
<br>
「あ、いえ、何となく。初めての場所ではなさそうな気がしましたので」<br>
<br>
「そうでしたか。そういえば、先ほどあなたも懐かしいと仰っておいででしたね」<br>
<br>
「私のは、これとよく似た松を知っていたもので、記憶が混同したのだと思います」<br>
<br>
と言ってはみたものの、どこかこの風景に心当たりがあるような気がしていた。<br>
<br>
「それにしても、斯の歌は、まさにこの松から生まれ落ちてきたかのような秀歌でしたね」<br>
<br>
そう言うと男は、今方とは違って目を押し瞑り、深け（ふけ）そめた声で、あらためて吟じた。<br>
<br>
「これは、情緒溢れる詠唱だ。あなたのために、松が生み与えたように思えます」<br>
<br>
桐詠は本心からそう言った。<br>
<br>
「わたくしのために、ですか。それは僭越です」<br>
<br>
「いえいえ、本当に、何だか怖いくらいの説得力を感じました」<br>
<br>
怖いと言うのは少し大袈裟だったが、自分の歌でありながら、<br>
これほどまでに誰かに合致することなど経験したことがなかった桐詠は、<br>
この出会いに対する縁のようなものを感じていた。<br>
<br>
「お褒めいただきありがとうございます」<br>
<br>
「これも何かのご縁かもしれませんね。私は、宇野里桐詠と申します。<br>
もし差し支えなければ、お名前を伺ってもよろしいですか？」<br>
<br>
「もちろんでございます。わたくしは、住友苗雅と名乗る者です。<br>
以後お見知り置きいただけますと幸甚です」<br>
<br>
その男の最早武士（もののふ）のごとき、板についた口上を耳にするや、間髪入れない呼吸で、<br>
<br>
　　この世にて　また逢ふまじき　悲しさに<br>
　　勧めし人ぞ　心乱れし<br>
<br>
と、弾かれるように桐詠の口から新たな一首が流れ出た。<br>
<br>
そしてなぜだか、この歌こそ、今会ったばかりの住友苗雅と名乗る男のために<br>
詠まれたもののように思えた。<br>
<br>
その流れに乗るように今度は、現代の武士から返礼の一首が詠じられた。<br>
<br>
　　まどろみて　さてもやみなば　いかがせむ<br>
　　寝覚ぞあらぬ　命なりける<br>
　<br>
それはまさに、無類の相性が誕生したような瞬間だった。<br>
その後は、二人、歌も言葉もなく、ただ隣りあいながら海を見つめていた。<br>
<br>
<br>
『夕方の松』を完結させるための旅だったのだろうか。<br>
それとも、住友苗雅なる歌人との出会いが目的だったのだろうか。<br>
<br>
宇野駅に戻り、帰りの時間が遅くなる旨の連絡を宿に入れ、<br>
夕暮れの始まる物寂しいホームで、次の列車を待ちながら桐詠は考えていた。<br>
<br>
昨日の法金剛院といい、今日の渋川八幡宮といい、<br>
単なる偶然で済ませるには奇妙すぎる。<br>
<br>
畏怖のようなものはないにしても、自分一人では開くことのできない重い蓋が、<br>
自分以外のものによって、少しずつずらされていっている心地である。<br>
<br>
そしてその蓋が取り払われた後に訪れることは、<br>
果たしてどのようなものなのかを考えると、<br>
やはり楽観的なことばかりを当てはめることはできなかった。<br>
<br>
もしかすると、とてつもない禍患が待っていることだってあり得る。<br>
<br>
ただ言えることは、どちらにしてもそれが現実的なレベルを超えていることだからこそ、<br>
すでにこのような奇妙で、非日常的な現象が前触れとなっているのであって、<br>
だからこそ、その終着駅が日常的な思考で想像のできる範疇のものではないということである。<br>
<br>
日常的な思考で想像できないものであれば考えても仕様がない。<br>
<br>
桐詠はそんな少し気だるい頭を連れて、ほとんど埋まることのないであろう、<br>
折り返し列車のボックスシートに体を沈めた。<br>
<br>
彼同様、他の乗客たちにも、<br>
一人ひとりにもれなく四人がけのボックスシートが用意されていたかのごとく、<br>
皆一様に進行方向に従う窓際に着席していた。<br>
<br>
夕暮れには似合いの控えめな発車ベルに見送られ、<br>
岡山駅へ向かう列車は静かに動き出した。<br>
<br>
考えても仕様のないことは考えるだけ無駄であり、<br>
それこそ理性の欺瞞というものだと思っていたはずなのに、<br>
気づけば双子の松によって成就したように思えた一首を思い出していた。<br>
<br>
既視感のように思えたシーンを振り返っていた。　　<br>
<br>
そんなことを考えていたら、見るものすべてに既視感が伴ってくるような気がしてきたので、<br>
手持ち無沙汰の時間から余計な雑念を生みたくないと、地図の入った鞄に手を入れた。<br>
<br>
「明日の行き先でも決めておくか」<br>
<br>
無理にでも思考回路を前向きベクトルにするべくそう呟いて、<br>
誰もいないシートで遠慮なく広げた。<br>
<br>
こうして無機質な地上の図面を見ても、細々と書かれたこれまた無機質な文字が踊るだけで、<br>
一向にぼんやりした思考回路は、その焦点を合わせようとしてくれない。<br>
<br>
「これでは行き先どころか、自分の居場所すら見つけるのも難儀だな」<br>
<br>
トワイライトの窓外も、まばらな車内の光景も、<br>
今のアンニュイな桐詠のスイッチを切り替えるには、脆弱すぎる条件だった。<br>
<br>
それならばと、気休め半分に上半身を大きく反らせ伸びをした。<br>
<br>
すると、頭上の網棚に一冊の読み捨てられた週刊誌が置かれていることに気づいた。<br>
のそのそと立ち上がって、それを手にする。<br>
<br>
週刊誌を読まない桐詠だったが、それはまるで、<br>
毎週購読しているのではないかというくらいに見慣れたもののように思えた。<br>
<br>
「そうか、この既視感もどきの正体は――」<br>
<br>
昼間の列車と同じ列車だったのだ。それも同じ車輌の同じ席。<br>
進行方向だけが変わって、それ以外はまったく同じだったのだ。<br>
<br>
「これは既視感というには、記憶が新鮮すぎる」<br>
<br>
なんでもかんでも都合の良いシンクロニシティのようにつなげようとしていた、<br>
浅膚な自分に苦笑しながら、ケバケバしい文字と写真で、<br>
ごちゃごちゃに構成されている表紙に目を落とした。　<br>
<br>
――芸能ゴシップ。<br>
<br>
別にそれ自体を揶揄するつもりなど毛頭ない。<br>
それだって一つの仕事である。<br>
<br>
それを楽しみにしている人がいて、それを編集している人がいる。<br>
ただそれだけのことである。<br>
<br>
しかし如何せん進歩がないのは、週刊誌のネタの方ではなく、<br>
人間の本質の方である。<br>
<br>
そんなことを思いながら、表紙をめくるでもなく、<br>
ただ黒と赤の物体にしか見えない週刊誌を弄んでいた。<br>
<br>
「声に出したら、この世で廃る」<br>
<br>
という独り言が、自動装置の指示に従ったように発せられると、<br>
以前同じことを口にした場面があったことが想起された。<br>
<br>
電車の中だっただろうか。<br>
週刊誌を見ていた時だろうか。<br>
<br>
いや、通勤途中の電車でもどこでも、週刊誌を目にすることはない。<br>
違う。<br>
もっと生活の中心の場面で、もっと重要な一幕だった気がする。<br>
<br>
矢継ぎ早に頭をかすめる可能性が、<br>
あまりに生活の外の瑣末なイメージ映像ばかりだったことで、<br>
<br>
「これでは、思い出せるものも思い出せやしない」<br>
<br>
と諦めかけた、その時である。<br>
<br>
「お話があるのです」<br>
<br>
気配をほとんど感じさせない、どこか面妖な風情をした黒髪女性が、<br>
出し抜けに姿を現したかのように、座席右の通路から声をかけてきた。<br>
（つづく）]]></description>
   <category>【小説】桜の下にて、面影を</category>
   <dc:date>2018-01-12T11:26:15+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>月夜舟　五十二夜</title>
   <link>http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/ed41bb5445e201ef218859a5620a129b?fm=rss</link>
   <description>
<![CDATA[
今宵は、<br>
七つの丘の都、坂の多い石畳の町を歩いています。<br>
<br>
どこまでも細い曲がり角を、器用に黄色い車両が縫っていきます。<br>
夜風に乗ってきた潮の香りを追うように、お月さまとお話します。<br>
<br>
お月さま、<br>
<br>
悲しいことと同じように、<br>
嬉しい気持ちも、忘れずにいたいな。]]></description>
   <category>月夜舟</category>
   <dc:date>2018-01-11T18:33:24+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>桜の下にて、面影を（25）</title>
   <link>http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/9b6e1f9bea8992406994db55a8111542?fm=rss</link>
   <description>
<![CDATA[
☆☆☆<br>
<br>
馴染み深い名前のついた宇野駅へは、<br>
岡山駅からおよそ五十分の列車旅だった。<br>
<br>
そこからバスに乗り換えて三十分ほどのところにあるという、<br>
渋川海岸へと向かう。<br>
<br>
今朝決めたばかりの本日の目的地だ。<br>
<br>
海岸横にある七階建てのオフホワイトのホテル前のバス停で降りると、<br>
もうそこは海岸の目の前だった。<br>
<br>
それほど奥行きも幅もないきれいな砂浜が続く、<br>
シーズン遠い閑かな海だった。<br>
<br>
青というよりも緑に近い穏やかな瀬戸内海を挟んで、<br>
讃岐までが目睫（もくしょう）の間（かん）というロケーションは、<br>
思いつきで決めた目的地としては大いに合格点だった。<br>
<br>
可愛らしい砂浜に沿うようにして続く松林も、<br>
実に風情があって良い。<br>
<br>
出勤ラッシュ直前のまだまだ閑かだった京都駅を出発してから、<br>
すでに昼時になっていたのだが、駅弁を買い込んで車内で食事を済ませていた桐詠は、<br>
そのまま辺りを散策することにした。<br>
<br>
とはいえ、散策というほど広くない海岸は、<br>
端から端までをゆっくり歩いたとしても、それほど時間はかからなそうに思えた。<br>
<br>
バス停は海に向かって海岸右側に位置していたので、<br>
ひとまずその反対側までを空中の塵にも邪魔されず、<br>
手の届きそうなくらいにはっきりと見える讃岐を右手に見ながら歩いた。<br>
<br>
そうして浜の左半分に入ってほどなくした辺り、<br>
波打ち際をすぐそばに感じられそうな、一本の松の木陰に腰を下ろすことにした。<br>
<br>
――今日は、桜ではなくて松なのかもしれない。<br>
<br>
朝、上賀茂神社の横で思い出した『夕方の松』の記憶が、<br>
まるでこの松林まで運んできてくれたかのようだった。<br>
<br>
これまで岡山の地を訪れたことはなかったはずなのだが、<br>
どういうわけか今こうして砂浜でしゃがみ見ている讃岐の風景が、<br>
どこか遠い記憶として残っている気になるのは、日本人の原風景というものだろうか。<br>
<br>
古の人たちも、きっとこうして四国讃岐へ渡る前、同じ風景を見ていたのだろう。<br>
その日本人としての記憶が、ＤＮＡレベルで脈々と受け継がれているのだろう。<br>
<br>
などと、生物学を専攻していた人間とはとんと思えない文学的な発想を抱きながら、<br>
凪いだ海からのわずかな潮風を感じていた。<br>
<br>
そうこうしているうちに、ネイティブ日本人の汎用的なノスタルジーは、<br>
桐詠限定のオリジナルなノスタルジーを引き込んできた。<br>
<br>
この数週間で起きた出来事。<br>
数李との死別、教師との決別、目的の消失。<br>
<br>
一言で片付けるならば無常ということになるのだろう。<br>
もちろん理屈では分かっている。<br>
<br>
永遠に続くものなどこの世にはない。<br>
そんなことは分かっている。<br>
<br>
しかし彼が今考えていることは、そういうことではない。<br>
現実に起こったこと、現象としての出来事に対する理屈探しではない。<br>
<br>
それらの現象が起点となって生起しそうになっている、<br>
生得的な記憶のようなものである。<br>
<br>
　生得的、内在的<br>
　遺伝子での記憶の継承だろうか<br>
　ＤＮＡによる風景の伝承だろうか<br>
　いや、やはり非科学的だ<br>
　でも、今の私の記憶でないものがある<br>
　今回の出来事はそれを掘り起こすために用意されていたものなのか<br>
<br>
数李との突然の別れからこのかた、<br>
努めて自分の心に向き合わずに過ごしてきた桐詠だったが、<br>
眩いほどの細波に翻弄されたように、閉ざされていた蓋を開こうとしていた。<br>
<br>
　生得的な記憶を取り戻すための旅<br>
　それを取り戻す目的とは、いったい何なのか<br>
　それを取り戻したら、果たしてどうなるというのか<br>
<br>
――分からない。<br>
<br>
無理矢理にこじ開けようとするには、<br>
どことなしに濃厚で重苦しい蓋のように思えた。<br>
<br>
そんなものかもしれない。<br>
<br>
閃きやきっかけというものは、他力本願的な要素が、<br>
多分に必要になったりするものかもしれない。<br>
<br>
焦れば焦るほど遠ざかるものかもしれない。<br>
時間だけには困ることのない桐詠は、この海岸での妄想に決着をつけて、<br>
あとはもう何も考えずに只管打坐（しかんだざ）に徹した。<br>
<br>
どのくらいの時間が過ぎただろうか。<br>
<br>
いよいよ空腹を感じて食事にでもしようかと、すっかり固まってしまった体をほぐすように、<br>
やおら捻りながら立ち上がった。<br>
<br>
すると、ずっと背後で待ち続けていたかのような、海岸に近い場所にあるというよりも、<br>
もはや海岸の中にあると言ったほうが良いくらいの小さなお社が目に入った。<br>
<br>
『渋川八幡宮』<br>
<br>
上賀茂神社とも実家前の神社とも、まったく異なるサイズ。<br>
これなら神様も、コンパクトに仕事を済ますことができそうなサイズだ。<br>
こういう神社であれば、彼は躊躇なく鳥居をくぐることができる。<br>
<br>
――夕方の松。<br>
<br>
桐詠は目を疑った。<br>
夕日の似合う一株の松の老木がすぐそこで枝を伸ばしているではないか。<br>
<br>
人は誰しも、よく似た他人が三人はいるということを聞いたことがあるが、<br>
それは万物共通のことなのかもしれないと思わせるような、<br>
あまりに相似した松だった。<br>
<br>
黒松独特の色合いといい、胴回りといい、年なりといい、<br>
そして何よりその腰の折れ具合といい、実にそっくりだった。<br>
<br>
ふつと足を向けることのなくなっていた夕日エリアの神社から、<br>
いつの間にかひっそりと引越しを済ませたかのような双子の松が、<br>
「腰でも掛けていかんかね」と言わんばかりに桐詠を待っていた。<br>
<br>
すっかり空間を錯覚してしまいそうになりながら、懐かしさとともに横に立つ。<br>
慈しみの思いで両手を置けば、心の奥に松の声さえ届いてきそうに思えた。<br>
<br>
ふと、腰折れ松との再会が二つの意味を持っているような気がした。<br>
『夕方の松』と讃岐を前にして立つここ渋川の松、<br>
その二本の松との時間を超えた邂逅のように思われたのだ。<br>
<br>
そして、二十年の時を経、場所を移し、あらためて詠じた。<br>
決して腰折れ歌とはならぬようにと慎重に。<br>
<br>
　　昔見し　松は老木に　なりにけり　　（むかしみし　まつはおいきに　なりにけり）<br>
　　わが年経たる　程も知られて　　　　（わがとしへたる　ほどもしられて）<br>
<br>
あの時の『夕方の松』の折れた腰での詠誦が二十年後の予行演習だったかのような、<br>
まるで今日ここで詠まれるのを待っていたかのような、この歌の成就を思わせた。<br>
<br>
それは、確かに以前ここでこの歌を詠んだ記憶があると思わずにはいられない、<br>
無形の根拠によってもたらされている。<br>
<br>
今よりもはるかに歳を重ねた自分が詠んだ記憶である。<br>
傍らには誰かの気配を感じていたことさえ信じられる記憶である。<br>
（つづく）]]></description>
   <category>【小説】桜の下にて、面影を</category>
   <dc:date>2018-01-11T11:29:30+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>月夜舟　五十一夜</title>
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   <description>
<![CDATA[
今宵は、<br>
陽気な家庭教師と彼女を慕う兄弟姉妹が歌う高原で、脚を伸ばしています。<br>
<br>
どこまでも手の届きそうに思える山々は、きれいな呼吸で眠っています。<br>
そこにあるだけで貴重で偉大な存在に感謝して、お月さまとお話します。<br>
<br>
お月さま、<br>
<br>
信じる。<br>
信じるよ、ボク。<br>
<br>
<br>
<a href="http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/93c24fb0c50d0f662be871d25179f14d">「女の子と先生は、今ここにいます！」<img src="//blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0172.gif"></a>]]></description>
   <category>月夜舟</category>
   <dc:date>2018-01-10T18:19:17+09:00</dc:date>
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  <item>
   <title>桜の下にて、面影を（24）</title>
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   <description>
<![CDATA[
そんな、幕開けから再会サプライズが待っていた二葉の大学生活は、<br>
見事に順風満帆で船出した。<br>
<br>
そして、入学式ウィークが終息して、大学が普段のペースを取り戻す頃には、<br>
すでに学内ベストカップルと称される二人になっていた。<br>
<br>
すべてにおいて効率重視の苗雅は、最終学年を迎えるにあたり、<br>
すでに卒業に必要な単位のほとんどを修得し、<br>
残すはゼミの二単位と卒業論文だけという状態だった。<br>
<br>
四年生に進級するのを待たず、卒論の執筆にも取り掛かっていたので、<br>
そちらもいたって順調そのものだった。<br>
<br>
それにくわえて、就職活動なぞ我関せずといった彼の学生生活は、<br>
とにかく優雅の一言に尽きた。<br>
<br>
一方の二葉は、入学直前に天命のごとく研究対象が舞い降りて来たことで、<br>
脇目も振らずまっしぐらに九百年前の歌人を追い始めていた。<br>
<br>
生まれついての本好き少女には、<br>
これまで誰の何の心配もなく優秀な成績を収めてきた実績があることで、<br>
ここでもそつなくこなすことは、衆目一致するところだった。<br>
<br>
とはいえ一年生の時間割は、大学生活の中でもっとも空きが無くなるのが定石ということもあり、<br>
週に一度のゼミ通いという、初手の打たれたばかりの碁盤のような苗雅のスケジュールが、<br>
冗談のように羨ましかった。<br>
<br>
それでも、講義と講義の合間も、講義が引けた夕方も、<br>
いつでも苗雅のいる研究会へと足を運んだ。<br>
<br>
和歌のみならず古代文学から現代文学まで、おそろしく造詣の深かった彼のいる場所は、<br>
彼女にとっては、さながらもう一つの大学のようであった。<br>
<br>
そんな彼に、実証不可能な西行研究の進捗を話す時間が、二葉にとっては至福の時でもあり、<br>
二人の間に流れる感覚の一致は、すべての会話に彩りを与えてくれるようで、<br>
日常会話さえ楽しかった。<br>
<br>
疑いようもない引力に導かれているような時間。<br>
<br>
それまでに経験したことのない、光速で過ぎていく日々が流れていた。<br>
まだ気づくことのない、ほんの少しの違和感も同居しながら。<br>
<br>
「苗雅さん――」<br>
<br>
<br>
西行研究会秘密のアジトに向かう途中、二葉は突然立ち止まった。<br>
<br>
「はい、いかが致しましたか？」<br>
<br>
一拍置いて苗雅は足を止め、前を見据えていた顔を糸を引くような滑らかな動きで、<br>
二葉の方へずらして言った。<br>
<br>
「聞いていただきたいお話があるのです」<br>
<br>
清水の舞台から飛び降りんばかりの面持ちで、意を決したように彼女は切り出す。<br>
<br>
「それでは、どこか落ち着いてお話ができるところにでも掛けますか。<br>
それとも、このまま歩きながらの方がよろしいですか？」<br>
<br>
「このまま歩きながらの方が良さそうです」<br>
<br>
どこまでも気の利く性質だなと感心しつつ、<br>
どうしてか変に落ち着いた環境になるよりも、<br>
このままの方がうまく話せそうな気がして答えた。<br>
<br>
「そうですか。それでは、このまま歩くことに致しましょう。<br>
要点をまとめようなどとはせずに、思いつくままにお話ください。<br>
あらたまった話をする時には、大概その方がうまく話せたりするものです」<br>
<br>
「ありがとうございます。そう言っていただけると気が楽になります」<br>
<br>
あたかも二葉がこれから言い出そうとしていることを、<br>
すべて見通しているような先制打に思えた。<br>
<br>
と同時に、そうであるならば余計な気を回さずに、<br>
素直に言葉にしてしまおうと心も決まった。<br>
<br>
「では、二葉さんのタイミングで始めてくださって結構ですので」<br>
<br>
お膳立ては揃った。完全に彼女のターンだ。<br>
<br>
しかしこれだけ完璧な準備を施してもらうと、<br>
かえって何から話して良いものかと詰まってしまったりする。<br>
<br>
本当に人間というものは面倒な生き物だな、<br>
などといっそ関係のないことに考えを逸らしてみたら、<br>
存外するっと最初のキーワードが吐き出された。<br>
<br>
「声が聞こえてくるのです」<br>
<br>
とはいえあまりにも突飛な冒頭に、論理の飛躍どころではない、<br>
物事の段取りさえ無視した暴挙に、二葉は自分で苦笑した。<br>
<br>
「西行の声、ですか？」<br>
<br>
「えっ。どうしてそれが？」<br>
<br>
苗雅のあまりの察しの良さに、どれだけ話を端折っても、<br>
すぐに理解してくれる超能力かと思えた。<br>
<br>
「隠し立てしても仕方ないので正直に申しますと、初めてお会いした喫茶店でも、<br>
あなたが同じことを口にしようとしていた気がしたのです。声が聞こえるということを」<br>
<br>
「すごい。読心術みたい」<br>
<br>
超能力なのか鍛えられた技術なのかは、この際問題ではない。<br>
<br>
とにかく、それらを平然とやってのける苗雅に、<br>
話すことも忘れて魅入ってしまいそうになる。<br>
<br>
「大袈裟ですね、二葉さんは。でも、ということは、<br>
わたくしの洞察は正しかったということですね？」<br>
<br>
そう言って、脇道に逸れそうだった展開を、何事もなかったかのように軌道に戻した。<br>
<br>
「はい。確かにあの時も、この話を聞いていただきたいと思っていました。<br>
けれど、お会いしたばかりの人間が、突然そのような話を始めたら、<br>
さぞかし気味悪く映ってしまうと思って自重したのです。<br>
でも、どうしてそれがお分かりになったのでしょう」<br>
<br>
「わたくしが、一度だけ西行の声が聞こえたような気がした、<br>
というようなことを申し上げた時のあなたの表情が、そのように見えたのです」<br>
<br>
「そうでしたか。まったくその通りで、苗雅さんが声を聞いたことがあると教えてくれた時、<br>
驚いたのと同時に、私も同じ経験をしたことがある、と喉元まで出かかっていました」<br>
<br>
同志を見つけたと跳ね上がらんばかりの嬉しさを覚えた、<br>
その時のことを思い出しながら言った。<br>
<br>
「やはりそうでしたか。それで今日、漸く告白をしてくださったのですね」<br>
<br>
「はい。告白、しました」<br>
<br>
「とても勇気のいる告白だったことでしょうね」<br>
<br>
「ええ、とても時間がかかってしまいました」<br>
<br>
旅先で出会い、その後すぐに大学で再会してから、<br>
ほとんど毎日のように顔を合わせていたにもかかわらず、<br>
その勇気が持てずに今日まで来てしまったのである。<br>
<br>
「大切なのは、今日それが打ち破れたことだと思います。勇気が持てたことだと思います。<br>
そして、もう何も怖がることはないということです。なぜならわたくしは、<br>
そのことを疑念なく受け入れていますから。<br>
オカルトなどとは思いませんから」<br>
<br>
「よかった。自分自身でも、信じるに値する根拠のない不確かなものでしたから、<br>
初めて肯定してもらえたようでとても安心します」<br>
<br>
「ええ、どうぞ安心なさってください。そう致しますと、西行の声が聞こえるということと、<br>
それをわたくしに打ち明けることとは、どのようなつながりになりますか？」<br>
<br>
段取りを考えさせずに自由に切り出させておいて、<br>
その後は知らぬうちに会話をリードしてくれる苗雅に、<br>
彼女はそのまま委ねた。<br>
<br>
　和歌に親しむようになってから、平安末期の歌人に限って声が聞こえること。<br>
　その中でも西行の声が、際立って耳に馴染むこと。<br>
　そしてたった一つだけ、どうしても声が響かない歌があること。<br>
<br>
まるで大好きな映画のストーリーでも話すかのようにすらすらと口にした。<br>
<br>
苗雅は変わらずにまっすぐ前を見つめながら歩き続けている。<br>
時折小さく頷きながら。　　<br>
<br>
あまりに普通の日常会話をしているような流れのまま、<br>
彼女は白桜の下での出来事も続けざまに話していた。<br>
<br>
その時の後ろ姿と声が苗雅のものだったことも、<br>
その二日後に苗雅に出会ったことも。<br>
<br>
それまで封印してきたものを、一遍に開放してしまったことへの後悔に気づくのは、<br>
大抵その直後と相場が決まっている。<br>
<br>
御多分に洩れず、二葉も激しい後悔に襲われた。<br>
<br>
さすがに見えるはずのないものを見たとか、それがあなただったとか、<br>
仮に話すにしても、言い方やタイミングというものがある。<br>
<br>
そんな遅すぎる後悔と反省の目で彼の横顔を見上げると、<br>
苗雅は囁くように、その夜二葉が耳にした一首を口にした。<br>
<br>
二つ、驚いた。<br>
<br>
一つは、二葉の心配をよそに何の疑問も持たずに話を聞いていたこと。<br>
もう一つは、そのたった一つの歌を一発で見抜いたこと。<br>
<br>
そしてそれは、二葉の確信に変わる根拠となった。<br>
<br>
「どうして、その歌だと分かったのですか？」<br>
<br>
「それならば簡単なことです。あなたはあの時、西行の西行たる所以が、<br>
秀歌というだけではなく、それを詠んだ声だと仰いました。そして出家説の一つとして、<br>
恋愛説の立場を取っていることもお話くださいました。<br>
さらに、そのお相手の君は待賢門院ではないかと。根拠はないが絶対的な自信があると。<br>
そして最後に、この一首が待賢門院に捧げられた歌だということも分かると仰いました。<br>
それでこの歌は、あなたにとってとても大切なものなのだと思えたのです」<br>
<br>
まるで昨日のことのように鮮明に苗雅の記憶が語られた。<br>
<br>
「そうか――そうでしたね。まさしくそのことをお話した際に、<br>
自分自身でその歌を諳んじたことを思い出しました。確かにその話の展開をたどれば、<br>
私にとって大切な一首がそれになるということは、推測可能かもしれませんね」<br>
<br>
とはいえ卓見であることに間違いはない。<br>
そして、さらなる卓見は止まることを知らない。<br>
<br>
「そうすると、今まで聞くことのできなかった唯一の歌と、<br>
わたくしと思しき後ろ姿の男性に関係がある話、<br>
ということになるのでしょうか？」<br>
<br>
「はい」<br>
<br>
もう二葉には、驚きの色さえ見えない。<br>
<br>
非日常のことを受け入れる柔軟性と、散乱した物事を一直線に結ぶ合理性、<br>
ただただ一級品である。<br>
<br>
「わたくしが、それを詠ったということなのですね？」<br>
<br>
「はい」<br>
<br>
一歩間違えれば、というか話す相手を間違えれば、<br>
完全にストーカーと思われてもおかしくないような妄想話にも成り得る。<br>
<br>
「それはこういうことでしょうか？西行の声では聞こえない歌も、西行以外の声であれば聞こえる。<br>
とすると逆説的に、西行の声でその歌だけが聞こえない理由が存在する、<br>
という仮説立てをしたということでしょうか？」<br>
<br>
彼女は静かに頷く。<br>
<br>
「なるほど、筋は通っていますね」<br>
<br>
そう言うと、彼はそのまま言葉を止めた。<br>
<br>
「あらま、起こしちゃったか。二葉ちゃん、カフェラテ、おかわり持って来るかい？」<br>
<br>
西行研究会のアジトと称される珈琲店のいつもの席で、苗雅の来るのを待ちわびた二葉は、<br>
いつの間にか夢の中へと迷い込んでいた。<br>
<br>
「あ、梅雀さん。すみません、うたた寝していました」<br>
<br>
「いいの、いいの。学生というのは、いつだって眠たい生き物だから」<br>
<br>
ふくよかで、ほんのりピンクががったつやつやした頬。<br>
まるで七福神の中に紛れ込んでいそうなマスターが、いつもの笑顔で気遣った。<br>
<br>
「ありがとうございます。それにしても、どのくらい寝てたのかな」<br>
<br>
ずいぶん長く眠っていた気もするが、腕時計を見るとほんの十分も経っていない。<br>
妙にクリアな夢だったことで、時間の感覚がおかしくなったようだ。<br>
<br>
「そろそろ、殿も二寂さんたちも来る頃だろうから、おかわりはその時にするかい？」<br>
<br>
「はい。よろしければ、そうさせていただけますか？」<br>
<br>
「了解」<br>
<br>
そう言って、空になったカップだけを持って、丸い背中はカウンターへと戻って行った。<br>
<br>
「――夢で、よかった」<br>
<br>
少し脚色されていた夢に、後悔が先に立ってよかったと心底思った。<br>
<br>
それから、お冷の入ったグラスだけが乗るテーブルに『ふたばノート』を広げ、<br>
忘れないうちに今見た夢の逐語録のようなメモを残した。<br>
<br>
最後には筆圧を上げた文字で、『決して口にしないこと』と結んでひっそりと閉じた。<br>
マスターの予想通り、苗雅たち一行はそれから間も無くやって来た。<br>
（つづく）]]></description>
   <category>【小説】桜の下にて、面影を</category>
   <dc:date>2018-01-10T11:33:12+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>月夜舟　五十夜</title>
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   <description>
<![CDATA[
今宵は、<br>
サメの名にゆかりの、人魚伝説のモデルたちが勢揃いする海へ漕ぎ出しています。<br>
<br>
どこまでもゆるりと舞う人魚たちは、心と体の移ろいが同じ歩幅。<br>
気持ちも視線も努めて穏やかにして、お月さまとお話します。<br>
<br>
お月さま、<br>
<br>
僕が、僕が。<br>
がんばった。<br>
私が、私が。<br>
がんばった。<br>
<br>
私は、私は。<br>
悪くない。<br>
僕は、僕は。<br>
悪くない。<br>
<br>
人間の本能は、一人称の考え方なのかな。<br>
二人称で考えられるように意識することが大切なのかな。]]></description>
   <category>月夜舟</category>
   <dc:date>2018-01-09T20:35:39+09:00</dc:date>
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  </item>
  <item>
   <title>桜の下にて、面影を（23）</title>
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   <description>
<![CDATA[
☆☆☆<br>
<br>
散り際の早かった桜並木の門をくぐった二葉は、<br>
あまりの人並みでなかなか前に進めず立ち往生していた。<br>
<br>
新入生を歓待する上級生たちは、まだまだ大学生の風情を漂わすことのできていない、<br>
見るからに一年生という学生たちに群がっては、<br>
その横を通り過ぎようとする、別の一年生にも触手を伸ばしている。<br>
<br>
華やかなる、新歓小径。<br>
足元にはそこかしこに、読み捨てられたビラが散乱している。<br>
<br>
そんな騒然とした人だかりの中で、<br>
引く手数多の二葉は男子学生の恰好の的となっていた。<br>
<br>
あまりに強引な勧誘要員の誘いに断りを入れられない彼女は、<br>
蟻地獄のような様相を呈した小径で、困惑ぎみに右往左往しているのである。<br>
<br>
大学生といえばこれ、というようなお馴染みのサークルが群雄割拠している。<br>
それはそれで楽しそうとは思いながらも、彼女の心はすでに決していた。<br>
<br>
しかしその目指すサークルが、どこに陣取っているのかが分からない。<br>
<br>
到底、派手な勧誘劇を繰り広げているとは思えないサークルだったので、<br>
探し当てるのに時間が必要になるだろうことは予想していた。<br>
<br>
それにしても、見当たらない。<br>
そうこうしているうち、三歩と進むこともできずにまた新しい声がかかる。<br>
<br>
笑顔のエネルギーだって、無尽蔵ではない。<br>
ただでさえ体力に自信のない二葉は、するするとくたびれてしまう。<br>
<br>
「どこにいるのかしら」<br>
<br>
今にも両の手からこぼれ落ちそうな、<br>
Ａ４コピー紙でかりそめに作ったことが明々白々たるビラの中で、<br>
どれだけ増えてもその一番上に来る異質なビラが導く先、そこが彼女のゴールだ。<br>
<br>
前日の入学式の帰り、何も知らずに受け取っていたビラ。<br>
手漉き和紙に、草書体の筆文字が踊る。<br>
<br>
直筆のビラで、しかも手漉き和紙ときている。<br>
どれだけお金と労力がかかっているのだろう。<br>
<br>
そんな余計なお節介を焼いてしまうくらいに、<br>
『ビラ』の一言で片付けてしまっては申し訳ないくらいの代物だ。<br>
他とは明らかに一線を画した勧誘ツールだ。<br>
<br>
「西行研究会の方々は、どちらにいらっしゃいますか？」<br>
<br>
しびれを切らしたかのように、失礼承知で横に張り付く男子学生に聞いた。<br>
<br>
「いいから、いいから、そんなサークル。それより、ここに名前書いてよ」<br>
<br>
人の話になどまったく耳を貸さないようだ。<br>
質問する人を思いっきり間違えた。<br>
<br>
「ごめんなさい。私、先を急ぎますので」<br>
<br>
言われるがままに調子を合わせていたら、<br>
果てしなく目的地に到達できないような気がしてきた彼女は、<br>
黒山をいなす方法を実践し始めた。<br>
<br>
立ち止まったら最後だ。<br>
耳を塞いで、目を皿にして、パノラマビューでアンテナを張る。<br>
<br>
そう思った瞬間から、彼女のパーソナルスペースには見えないバリアが張り巡らされた。<br>
誰をも寄せ付けない、強力なオーラが一気に放出された。<br>
<br>
不思議なもので、そういうオーラというのは、類似するオーラを引き寄せたりする。<br>
まるで正中開けるがごとく、モーゼの十戒よろしく進む先が割れていく。<br>
<br>
どれだけのエネルギーを費やして、このわずかな距離を進んできたのか、<br>
という二葉の努力をあざ笑うかのように、静々と一直線に小径のど真ん中を歩いてくる。<br>
<br>
上級生も新入生も、すべての喧騒が鳴り止むような異空間だ。<br>
誰をも寄せ付けないうぐいす色のオーラだ。<br>
<br>
うぐいす色の西陣羽織だ。<br>
見覚えのある衣紋。心覚えのある気品。<br>
<br>
これを運命と呼ばずに何と言おう、というような再会劇だった。<br>
<br>
「やあ、二葉さんではありませんか」<br>
<br>
「こんにちは。先日は、大変お世話になりました」<br>
<br>
二つのオーラが合流した強力な磁場に引き寄せられるように、<br>
視線が一点に注がれる。<br>
<br>
大学きっての有名人と新入生きっての小町候補の遭遇シーン。<br>
天下無敵カップルの誕生シーンである。<br>
はたまた、悪い虫たちが金輪際手を出せなくなった瞬間でもある。<br>
<br>
「まさか本学の新入生でいらしたとは。驚きました」<br>
<br>
「本当に。こんなことってあるのですね」<br>
<br>
「めぐり合わせとは、こういうものなのかもしれませんね」<br>
<br>
「そうですね」<br>
<br>
笑顔を捨てることを決心したのも束の間、電光石火の早業で元通りの笑顔に戻った二葉は、<br>
膨れ上がる安堵とともに、数日前の京都での彼との出会いを思い出していた。<br>
<br>
不躾なまでに凝視してしまった風貌。<br>
不気味なまでに相似していた感覚。<br>
不謹慎なくらい急速に心を許してしまった物腰。<br>
<br>
「西行研究会ですね。それでは我がサークルまでこのわたくしがお連れ致しましょう」<br>
<br>
大事そうに抱えていた二葉の手元に目をやり、分節を感じさせない動きで踵を返した。<br>
<br>
「ありがとうございます。たどり着けないかもしれないと思っているところでした」<br>
<br>
「そうでしたか。それは申し訳のないことを致しました。<br>
もう少し気の利いたところに陣が張れれば良いのですが、<br>
なにせ弱小サークルなものでして、恥ずかしながら隅へと追いやられている身なのです」<br>
<br>
そう言って、さんざめくギャラリーたちの中央を苦もなく歩き出した。<br>
<br>
「この直筆は、苗雅さんのものですか？」<br>
<br>
「ええ、そうです」<br>
<br>
「ご達筆ですね」<br>
<br>
これまで、どれだけ同じ賛辞を受けてきたことかと思いながらも、他の言葉が見当たらずに言った。<br>
<br>
「いえいえ、いたって凡庸な字です。<br>
それより、よろしければ陣へ着くまでの間、<br>
我がサークルの概要をご説明させていただきましょうか」<br>
<br>
「はい。ぜひお願いします」<br>
<br>
「承りました」<br>
<br>
そうして、小さな本陣が敷かれている新歓小径のどんつきまでの道すがら、<br>
三名の在学メンバーと、毎年定められているかのように加わる一名の新入生で構成される四名で、<br>
長く受け継がれてきた研究会のあらましを聞いた。<br>
（つづく）]]></description>
   <category>【小説】桜の下にて、面影を</category>
   <dc:date>2018-01-09T11:25:55+09:00</dc:date>
   <guid isPermaLink="true">http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/44a7d65260037aa8a95338976218f417</guid>
  </item>
  <item>
   <title>月夜舟　四十九夜</title>
   <link>http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/54e2ca98a93a1eac2a79a136ab3051bb?fm=rss</link>
   <description>
<![CDATA[
今宵は、 <br>
未確認巨大生物が潜むかもしれない湖に、息を殺して目を走らせています。 <br>
<br>
どこまでも波立つ気配のない静かな湖面は、終わりのない興味を掻き立てます。 <br>
不確実な決定機に心を引きずられながら、お月さまとお話します。 <br>
<br>
お月さま、 <br>
<br>
理屈から判断すること、経験から判断すること。 <br>
理屈で説得しようとする人、経験で伝えようとする人。 <br>
<br>
大きな違いがあるよね。]]></description>
   <category>月夜舟</category>
   <dc:date>2018-01-08T19:43:50+09:00</dc:date>
   <guid isPermaLink="true">http://blog.goo.ne.jp/hanazono7/e/54e2ca98a93a1eac2a79a136ab3051bb</guid>
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