中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

怖いユナイテッド航空

2017年04月18日 | 雑記
 今からおよそ130年前、イギリス領だった南アフリカへ弁護士として赴任したマハトマ・ガンジーは、一等車のチケットを持っていたにもかかわらず、人種差別主義者の車掌から列車の外へ叩きだされてしまった。

 映画『ガンジー』(R・アッテンボロー監督)にも描かれていた、強烈な実話である。

 しかし繰り返すがそれは130年も前の、そして植民地での出来事だった。先日起こったユナイテッド航空の乗客引きずり下ろし事件は、現代アメリカの、大都市の、おおぜいの目撃者の目の前で起こった。

 ニュースではオーバーブッキングと報じられているが、正確には違う。満席の飛行機に、航空職員4人を乗せる必要ができただけの話だ。不手際としか言いようがない。

 航空会社は800ドル(現金ではなくクーポン券だったとの情報もある)とホテル一泊宿泊チケットと翌日の3時の振り替え便を提示して降りる人を募ったが、誰ひとり応じる者はいなかった。距離の短い国内便なので、確かにこれでは乗客にとってのメリットなどあまりない。

 最高額1300ドルを提示する手段もあったのに会社側はそうせず、コンピューターで無作為に人を選んで彼らに直接交渉した(全てアジア系だったとの情報が本当なら無作為ではありえない)。4人のうち3人は譲歩して降りた。しかし一人ベトナム系アメリカ人の医師は、患者がいるのでと断った。

 すると会社は3人の空港警備員を呼び出した。彼らが医師を取り巻く。そして悲鳴が聞こえ……医師は鼻と口から血を流し(鼻骨折、歯2本折れ、脳震盪と後に判明)、死んだ家畜のように通路を引きずって運ばれて行った!!

 他の乗客たちは騒ぎ、批難し、動画を撮って次々にネットにアップした。

 会社のCEOは謝罪文を出したが、それは医師に対してではなく他の乗客に向けたもので、あたかも医師が迷惑行為をしたかのごとき文面だった。医師はお金を出してチケットを購入し、すでに自分の席に座り、降りろと言われて患者がいるのでできないと言っただけなのに。

 ネット社会の弊害が言われるが、そんなことはない。もしこの事件が携帯もSNSもない時代だったら、この医師は満員の飛行機内で暴れた危険人物とされ、逆に医師免許まで取り上げられた可能性だってある。事実もう医師に対するネガティブキャンペーンがはられ、彼はそう同情すべき人間ではない、などの書き込みが見られる。

 ユナイテッド航空ボイコット運動が起こるのも、医師が提訴する構えだというのも当然としか言いようがない。


☆☆☆「怖い絵展」情報
http://www.kowaie.com/

☆☆今後の講演会

・7月8日(土)14:00~15:30 NHKカルチャー大阪梅田教室
「中野京子と読み解く『怖い絵』~出版10周年記念~」

☆☆月刊「文藝春秋」連載「中野京子の名画が語る西洋史」のオンライン化 全文、無料で読めます🎵
・第1回(本誌における第54回)は「忘れえぬ女(ひと」(クラムスコイ)  http://bunshun.jp/articles/-/21
・第2回 ブリューゲル「雪中の狩人」
http://bunshun.jp/articles/-/1375
・第3回 ボヌール「馬市」
http://bunshun.jp/articles/-/1743

☆日経新聞夕刊エッセー<プロムナード>に木曜連載中。1週遅れで電子版でも読めます。
第15回は「倫敦塔とジェーン」~「怖い絵」展で日本初公開される「レディ・ジェーン・グレイの処刑」について書きました。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO15250840T10C17A4NZ1P00/

☆最新刊『中野京子と読み解く 運命の絵』(文藝春秋社)
name="amazletlink" target="_blank"> alt="中野京子と読み解く 運命の絵" style="border: none;" />

☆「名画と読むイエス・キリストの物語」(文春文庫)

時代小説作家の千野隆司氏がHPで紹介してくださいました♪

http://blog.livedoor.jp/chino17jidai/archives/52067341.html#comments

☆「美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯」(NHK新書)
美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯 (NHK出版新書 497)

☆「新 怖い絵」(角川書店) 6刷になりました🎵
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☆「はじめてのルーヴル」(集英社文庫) 2刷になりました🎵



☆「名画に見る 男のファッション」(角川文庫) 
target="_blank">


☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文春文庫)

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫 な)
  『弐代目 青い日記帳』さんがさっそく紹介してくださいました♪ 3月6日のページです。
http://bluediary2.jugem.jp/


☆「残酷な王と悲しみの王妃 2」(集英社)

残酷な王と悲しみの王妃2
担当者さんが紹介してくれました♪


http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/151023_book01.html


☆『「絶筆」で人間を読む - 画家は最後に何を描いたか』(NHK出版新書)
 3刷になりました♪

「絶筆」で人間を読む―画家は最後に何を描いたか (NHK出版新書 469)

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇」(文藝春秋)2刷になりました🎵
<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163903089/hanatumuhiton-22/ref=nosim/" name="amazletlink" target="_blank">中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇
「青い日記帳」さんが紹介してくださいました。素敵な紹介で嬉しいです♪
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4050

☆文藝春秋WEBサイトでは、短いですけどわたしのインタビュー記事も載りました。お読みくださいね!→http://hon.bunshun.jp/articles/-/3935


☆「名画の謎 ギリシャ神話篇」(文春文庫) 2刷になりました🎵

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)


☆「愛と裏切りの作曲家たち 」(光文社知恵の森文庫)

愛と裏切りの作曲家たち


☆「マンガ西洋美術史03」(美術出版)

マンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホ



☆「マンガ西洋美術史02」(美術出版社)
マンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家  ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス


☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川文庫)

危険な世界史 運命の女篇 (角川文庫)

☆「マンガ西洋美術史01」監修(美術出版社)
マンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブラン


☆「ヴァレンヌ逃亡」(文春文庫)
ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫 な 58-2)


☆「名画で読み解く ロマノフ家12の物語」(光文社新書)2刷になりました♪

名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)   

☆「印象派のすべて」(宝島社別冊ムック)
印象派のすべて (別冊宝島 2200)

☆「名画に見る 男のファッション」(角川書店)
名画に見る男のファッション (単行本)

☆「橋をめぐる物語」(河出書房)
中野京子が語る 橋をめぐる物語

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇」(文藝春秋) 3刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇

☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社文庫)4刷になりました♪
残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

☆「怖い絵」(角川文庫) 単行本に新しく書き下ろし2作を加え、全22作品です。8刷になりました🎵 怖い絵  (角川文庫)

☆「はじめてのルーヴル」(集英社)2刷になりました🎵 はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文藝春秋) 5刷になりました🎵
中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

☆「怖い絵 死と乙女篇」(角川文庫) 6刷になりました🎵 怖い絵  死と乙女篇 (角川文庫)

☆最新刊「名画と読む/イエス・キリストの物語」(大和書房) 3刷になりました🎵
名画と読むイエス・キリストの物語

☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川書店) 2刷になりました🎵
危険な世界史 運命の女篇

☆「危険な世界史 血族結婚篇」(角川文庫)6刷になりました🎵
危険な世界史 血族結婚篇 (角川文庫)

☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化~ 11刷になりました🎵
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 7刷になりました🎵
中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇


☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)6刷になりました♪
印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 14刷になりました♪
「怖い絵」で人間を読む 生活人新書


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」 7刷になりました♪
名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書) 20刷になりました🎵 名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫) 2刷になりました🎵 おとなのための「オペラ」入門 (講談社+α文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。
歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

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☆以下の単行本は絶版としました。文庫本をお求めくださいまし~

☆「怖い絵」16刷中。怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。 怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。 怖い絵3



 

















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5 コメント

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中野先生ーっ! (ヴィオです!)
2017-04-19 21:26:29
今時分になってしまい、
申し訳ありませんでした…!
先日は、新宿の朝日カルチャーでまた、
先生の楽しい楽しいお話を伺った後に
直接、お話することが叶いました…!
私、おかしな質問をしてしまった
(どのようにして、
本に書かれていらっしゃるような
楽しくて驚きに満ちた裏話を
お調べになられるのでしょうか…という、
愚問中の愚問でした…)
にもかかわらず、お優しくお答えくださって、
本当にありがとうございました…!
私が先生を、とてもとても遠いのですが、
でも近しい、と勝手に感じさせていただいております、目標にさせていただいているところが
まさにその点で、
読んだり聞いたりしてくださった方に、
より近しく親しんで、
楽しみながら色々なお話、歴史を知っていただけること、が何よりも嬉しいので、
ヒントを頂きたかったのでした…!
本当にありがとうございました…!
あの日のfacebookには、先生とまたお目にかかれ、
その上、(”怖い絵展”へのお客様ナビゲートのことです…!)
”頑張ってね!”とまでも
言っていただいた!…という大喜びの投稿を
大ハッスルして致しました…!

またお目にかかれる日を
心から楽しみに致しております…!

ひどい (うさこ)
2017-04-22 20:28:37
ユナイテッド航空のあの事件、本当に胸が苦しくなりますね。暴行事件だと思います。
それにしても、日本のテレビ報道では、人種差別的な見方のニュースはあまり無かったように思います。
明らかに根底に人種差別的なものがあると思うのですが…日本人サイドにある種「黄色人種差別なんてないさ」と信じたい気持ちがあるのかもしれません。
とりとめのないコメントですみません。
Unknown (豆吉)
2017-04-24 17:59:22
ユナイテッド航空の暴挙、本当にうすら寒い思いがしました。
最初に一報を目にしたとき、内容をすぐに理解できないくらい、わけがわかりませんでした。
この動画を撮って配信した人がいたのがせめてもの救いです。
オペラとハプスブルク家のご本について (大和田繭)
2017-04-28 22:43:55
中野先生こんばんは。
大変ご多用な日々をおすごしのことと思います。
くれぐれもおからだお大事になさってください。
そうは申しましても原稿の締め切りなどあるのでしょうが(; ̄ー ̄A

幼稚園の時に英会話に通っていて、アメリカは自由の国なんだよとトム・ソーヤに似た青年講師が言ってたのですが(日本人の先生が訳したのですが)ロンドンにいた時に英国人がアメリカほど差別する国はないと言ってました。英国人でさえアメリカに行くと疎外感尼遣られるそうですね。もちろんアメリカの総意ではないと思いますが、自由の国と笑顔で今もトム・ソーヤ先生が言えるのかしら?と考えると悲しくなります。

ところで先生が新しいご本を次々に書いてくださるので、買いだめしたものの、もったいつけて読んでいたご本をゼイタクに次々に読んでおります。

最近やはり印象にあるのは、オペラの裏側を書かれたもの、とりわけプッチーニのエピソードが何とも言えない気分になり、プッチーニの音楽を私は本の少ししか耳にしたことはないですが、時系列に聴いてみて心境の変化を確かめたくなりました。

それとハプスブルク家の物語は本当におもしろくて一気に読んでしまい、またすぐ読み直ました。ミステリを読み終えた後、また読み返すような感覚で2度目は読みました。やはりマリーアントワネットが強烈ですが、エリザベートも印象に強く残ったので、先生の他のご本に出てきた部分を読み返してみたいと思います。

世界史を学生時代は拒絶していたのですが、もっと前に先生のご本に出会っていたら、ものすごい得意科目になっていたと思います(笑)

今回も勉強させていただき、ありがとうございました♪
Unknown (みなさま(kyoko))
2017-05-02 11:17:21
 2週間近くブログを開かず、お返事おそくなりました。

ヴィオさん
 フェイスブックに「怖い絵展」のことを発信していただき、ありがとうございます🎵渡しはフェイスブックをしていないものですから見られなくて残念。フェイスブックどころか未だ携帯も持ってないんですよ~骨董ものですね。

うさこさん
 人種差別という言葉すらNGワードになっているのかと思う報道ぶりですよね~ 学校では歴史的事実として教えているのかなと心配になってしまいます。

豆吉さん
 久しぶりにネットサーフィンすると、裁判ではなく和解が成立したようですね。本当に良かったなと思います。CEOは責任とらないみたいですけど。。。

大和田繭さん
 たくさん読んでくださって嬉しいです🎵 プッチーニはとにかくもてまくった人なので、繊細な女性の感情を驚くほど的確に音楽化しているんですよね~半面、男性は描き足りなくて、「蝶々夫人」ももう少しピンカートンの歌がほしかったなあ、と、、、

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