『最後の言葉』は、ターニングポイントだった。
手応えを感じて、大人の話が出来ると確信し『ラストシーン』の構想を練る。
今回は満を持して、映画そのものを取り上げる作品。
そして、いつもより特にセリフに拘ることにした。
これは役者(只今休業中)として、ずっと大事にしてきたことで、きっかけはやはり「筒井ワールド」だった。
2000年に上演された「筒井ワールドファイナル」『夢の検閲官』に出演したことが、いい経験になった。
主演は、納谷悟朗さんと永井一郎さん。お二人は、子供を亡くした母親の夢の中を検閲する係。僕はその部下。
稽古でお二人の一挙手一投足に注目し、めちゃくちゃ勉強になった。なによりセリフの重みを感じた。これが役者の仕事なんだ、と思った。
僕は、早速自分の役に取り入れる。セリフは「次の者は入れ」「なんだ、君か」だけだったが、作品の中での自分の役を突き詰めた。
共演者にあとから聞いた話だが、演出の伊沢さんが「花ちゃんのあのセリフ良かったよ」と言ってくれていたらしい。伊沢さんに初めてセリフで褒められた。
伊沢さんはセリフに厳しい演出家で、活舌が悪くイントネーションが怪しい僕を褒めるなんて皆無だったのに。
『短いセリフでも、気持ちは伝わる』
納谷さんと永井さんから得たものを、今度は増山さんと一緒に作りたいと考えた。
ラジオドラマは、短いセリフで伝えたいことを伝えるのは難しいが、増山さんだからこそ出来ると思った。
いつものように、書けない日々が続く。
主人公の池内ゆりの事を考える。
映画女優の池内ゆりが、これまでなにを思い映画の仕事をしてきたのか?
シナリオを書いていると、よくこういう問いに悩ませられる。
登場人物の心情は、そのひとの心情であり、作者の心情ではない。だから、僕が考える別の角度から考えなければならない。
書くということは、自問自答という作業が多い。
自分の想いだけで書き上げてしまうと、都合よく書いて、いろんな疑問に気づかないのだ。
なぜ、こう言ったのだろう?
なぜ、こんな行動をしたのだろう?
そして、もっともブレてはならないのが、
なぜ、この作品を作ったのだろう?ってこと。
結局、いつも以上に推敲を重ねて『ラストシーン』は完成した。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます