母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

紫紬の細帯の

2017年10月09日 | 歴史
紫紬の帯一本
ばあさまの織った私の家の
いまは形見の蚕の糸

大きな玉繭を煮て糸にして
染め上げつむいでとんからり
七人の子を育てながらとんからり
逢ったことのないばあさまを
この細帯に偲ぶ秋
秋は昔を引き寄せる

長火鉢の熾かき寄せて
長いキセルで吸う煙草
頭のてっぺんそり上げて
二百三高地とかいう髪型に
たすきを掛けて山の家
蔵の二階でとんからり
機織りしていた昭和初期


時は非情
沢山の人が長い歳月
生れ育った家にはもう誰も居ない
棲む人の居なくなった思い出溢れる生まれ家に
私の秋は今年もやって来る
秋海棠がこぼれ咲き 柿の実が残る秋がー

単衣の着物が終われば
あたたか紬の季節が来る
時間はこころのなかの機織りの音
とんから流れて誰も居ない
沢山の家の歴史も星になる


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青くて高い秋の空には

2017年09月29日 | Weblog
空は高い

すじ雲引く 秋の空はもっと高い

青が彩度を増し 遠くにこころを誘う九月のおわりの

涼しい風渡る空の果ては

いのちを集め愛する方がいる

いのちは魂となりさまよいながら

その方の手のひらに乗り

安らぎは永遠に護られてゆく


地上に居る人間の生身のいのちは日々うごめき

愛し 裏切り 悩み 喜び 畏れと闘い 傷を受ける 

それでも最後に何かに気づき 辛さを堪えて優しい心に戻る

それはきっと天上から 見つめて見護る方たちの

愛や慈しみの中にあ(存)るから
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吾亦紅の花

2017年09月11日 | Weblog
都会の花屋の吾亦紅
どこから来たか野の花は
校庭の坊主の集まりのよう
大小高低群れて咲く
紅いあたまのいがぐりの
びっくり顔のいとしさに
いつも手に取り持ち帰る

高原の風も空も白雲も無い
都会の花屋の店の隅
なにかひかえめに戸惑って
背を伸ばして集っていてれば
悪ガキの走り回った校庭を
ことしも想い出し瓶に活ける

つんつん吾亦紅
はなの咲くころは
田んぼにイナゴの群れも飛んでいた
柿の実枝に垂れ下がり
稲穂の波に埋もれた日本の秋
季節の歌は何処に行った



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酒と器と

2017年08月30日 | 季節
晩夏の朝夕肌をかすめる涼風は
遠来の懐かしい旅人です

庭に薄の穂が伸びて
揺れて空を写す季節の草の葉

備前の高坏の辛口の冷酒は
火と土の語り

津軽の海の香りは
透き通る群青の器に美味なる漬物になる

ビロードのように甘い
高原の花豆は
白い皿に大粒

酒が季節を詠う夕暮れはすこしだけ優しい
思い出が重なり記憶も薄れてゆきそうな
夕暮れの蜩の啼き声



ことし訪れるのは あなたの
何十回目の秋ですか

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八月の句

2017年08月10日 | Weblog

☆ 水草の丸葉の集いの涼しくて

☆ 根を流し浮かぶ水草の小さな葉

☆ 兄弟か姉妹かメダカの目の多さ

☆ 灼熱の陽の下水に動く影

☆ 地を這って松葉ボタンの花のあり

☆ 明日は散る短いいのち夏の花

☆ ユサユサと揺れるハーブは夏の息

☆ チャービルは朝のサラダに遠慮がちに

☆ シナモン茶汗の通りの清めとす

☆ 立秋を忘れず開くススキばな

☆ 心もて秋待つ夜のまるい月 
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花の夏

2017年07月25日 | 
それは遠い夏
若かった父さんが庭を花で埋め私たちに
蝶や虫を仲間にさせた

白百合の丈高く 
黒揚羽蝶が飛び交った日

目眩するようじりじりと
耳の鼓膜に残る生き物たちのざわめき
眠っても眠っても子供の頭から消えない
光る空白い入道雲 高原の大気 土と水の匂い

思い出は花垣に動く父さんの手の厚さ花の群れ
ピンクのダリア 深紅のカンナ グラジオラスの色はとりどり
地面にはちいさな松葉ボタン
おしろいばな
ホウセンカの種がはじけ
オジギ草の細い葉がひらいて閉じる

白い顔の都会のはとこと
アブラゼミの鳴き声を聞きながら軒下の
蟻地獄の巣を掘っていた

キャンデー売りの声通りを行き
午睡の蚊帳の色涼しくゆれた 


おとな達の思い出語りに
軍刀や手袋 大陸のトランプが暗い土蔵からふわふわと
家の中をさまよっていた八月

山麓の短い夏はすぐい去り
客たちは白い帽子と共に消え
毎年約束のように訪れる
夏のたそがれー

国も人も若くひたむきに
人々が生きたいとしい時代が蜃気楼のようにぽっと浮かび
やまなみは素知らぬ顔でうねるだけの


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蒟蒻の葉雨に打たれ

2017年07月22日 | 花(夏)
命拾いした蒟蒻は
夏になると大きな葉を茂らせた
売りものだったちいさなちいさな蒟蒻玉
まだ小さく幼くて
食べるには可哀想な姿の蒟蒻玉

すり下ろして水に入れて
アルカリ混ぜられ煮詰められ
かき回されて冷やされて
薄切りされて皿に乗り山葵醤油などで刺身にされ
消えてゆく短い命の筈だった

ところが春めく縁側笊の中で
ちび蒟蒻玉は反乱しちいさなピンクの芽を出した
円錐形の赤い芽が
おもちゃ遊びで興奮したオスの仔猫のおしりのようで
食べられなくなり土に入って春になって
青い葉っぱを伸ばし出した

夏の夕立嵐に雨に耐え抜くと
いきなり風格が出て蒟蒻玉は
大きな葉を広げ雨に打たれてもゆらりゆらりへこたれない

明日のことは知れぬこの世
消えて去る者ばかりでないと
蒟蒻の玉は語っている





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時間

2017年07月11日 | Weblog
旅の街は砂の中だった
さらさらさら と 頭上からは
足下に砂が落ち続けていた

窟は初夏のオアシスの
清潔な木立に囲まれ 埋もれ
壊れやすい宝の小箱のように護られながら
健気に忍び寄る砂漠の中に立っていた

壁画の線色は蒼く
時は密かにも澱み
訪れる人間の数を数えながら
仏陀は途方も泣く長い時間をいまも過ごされていた

緑したたる私たちの島で
紫陽花は青く
梅素麺を食せば
天山山脈は南アルプスの褶曲と重なり
銀色の翼の向こう
乾大陸の夥しい先人の足跡
故城の土塁も壁も伝説の燃える赤い山も
此処にもささやかに積もる時間の中
しずかにしずかに
アルバムの中に眠ってゆくのだった
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雨降る季節

2017年06月30日 | ふるさと
雨降れば

母を想い

風吹けば

父を慕い

細い通り行けば

祖父の着物姿


歳月は人を遠くしても

降りしきる雨の粒に

濡れて立つ花菖蒲

竹垣に紫陽花

思い出は降りしきる

雨のごとくに
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ほたるぶくろ

2017年06月09日 | Weblog
雨降る土手はみどりの茂み

紬の織り生地むらさきに

薄い色したほたるぶくろをいとしんで

手折れば何かもの悲し

ほたるぶくろに眠るのは

源氏ボタルかはたまた

平家のほそいほたるの群れ


都を追われ山深く 密かに生きた公達らが

ちらばり別れ山間の

ちさき村村に伝説となり住んだ里は

いつも深い森と谷に囲まれていたのだった


栄華の日々を都に刻み 身を隠し落ちていった平氏の涙は6月の雨となり 

ほたるぶくろに宿るのを

誰が知るのか知らないか

雨降る土手には今年限りの 

初夏の花々ただに咲き乱れて

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アサリの夢

2017年05月16日 | Weblog
アサリは夢を見るのだろう

知らない所知らない場所

台所という栖みかのせめて光の遠い隅で

小さな皿に乗せられ

わずかな塩水に浸され

海の香も潮の流れもない皿の上

この静かな真夜中に

プシュッ といのちの潮を吹き 狭苦しい空気を吸い

ごろんと動き砂を探し

それでも元気に生きている

明日はどうなるのかも知らず

アサリは広い海の砂原 目に入ってくる広い青い空を

明日は見れると希望をつなぎ

または

何も考えず

夜の気配にいつものように潮を吹き

小さな皿の上で小さな夢を

みているのだ

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わたしの冬菜は

2017年04月25日 | 花(春)
わたしの冬菜は春が来ると

すっくと伸びて黄色い花を明かりのように咲かせた

わたしの冬菜は秋に蒔き

厳冬期には緑色に生いそろい

朝の食卓にいつも乗ったかりかりベーコンをトッピングして

わたしの冬菜は優れもので

摘んでも摘んでもへこたれず

寒い朝ほどきりりと葉っぱを広げ

とても頼もしい友達でもあった


季節が変わると冬菜はなんだかのんびりし出して

一斉に沢山の黄色い菜の花になってしまった

健気な葉っぱも寒さをすぎるとただの菜の花

青い花瓶に香る花を集め飾ると

リズムを取るように話し合うように黄色が広がり

すまし汁に花菜を一本浮かべるとやはり健気な

わたしの可愛い冬菜でした
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わたしのペギー

2017年04月21日 | Weblog
ドミノ を歌ったペギー

南国 を歌ったペギー

ドレミ を歌ったペギー

はなやかな笑顔 美しいドレス

力強い歌声に勇気を得て大人になったら

こうありたいと思わせられた憧れの女性 ペギー

チャリテイショーで聴衆をリードした母のような

歌の天使 ペギー

桜吹雪の中をにっこり笑い 

長いドレスの裾翻し

ことしの花 春の空に昇っていった大きなペギー


絶えず聴いてきた健康印の歌声 にこやかな笑顔

時の流れに沿いなにもかもを素直に受け入れ

ゆっくりと又歩いて行く

ペギー葉山の歌とともに
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白い花の咲くころ

2017年03月24日 | 花(春)
心柔らかなころ
ラジオから流れていた歌がある

高い嶺があるというふるさとの
白い花は何の花だったろうか

白い花が咲いていたのは
嶺の残雪深く 庭の日だまりには
淡雪のような白い雪柳が咲いていたろうか

雪柳は大きな庭石に沿い
白い花をつけた柳になってゆらゆらと
いくつもの枝を揺らし流していたろうか

そして庭石の上には金色の目の
若い黒猫がいただろうか


白い花の咲くころ
銀色の高い嶺に囲まれふるさとは
目覚めの陽光を生き物たちの上に振り撒いたろうか

白い花の咲くころ
若者たちは 幸せでいたろうか

雪柳 水仙 白菫
白梅 こぶしに泰山木 白木蓮 
命を先導する 
白い嶺の連山白い花の咲くころ





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水仙が咲いた

2017年03月11日 | Weblog
水仙が咲いた 南天の下に
冬枯れの草を押し分け
芽を出し始めたのは 冬だった

スミレが咲いた 通りの石垣
細い枝葉を落として
春陽を待って三月に咲いた


春を歌う花
北風をやり過ごし
土に眠り 季節に目覚め咲く花

白い花は無垢の音楽
薄い紫はやんごとなき憂い

水仙が咲いた庭の日だまりに
黒土はやがていつものように
柔らかい青草で埋もれる
黄色い菜の花で埋もれる

石垣スミレが満開になるころ

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