昭和・私の記憶

途切れることのない吾想い 吾昭和の記憶を物語る
 

羊羹(ヨウカン)と、クリープ の話

2021年08月23日 07時35分49秒 | 5 青春のひとこま 1973年~

私には二人の師匠が存る
赤崎尚信先生
その一人である。
昭和48年 ( 1973年 ) 3月5日(月)、18才9ヶ月
設計士に成る夢を抱き 赤崎建築事務所に入社した私
赤崎先生に将来の夢を託したのである。
リンク→ 昭和48年 (1973年) 3月5日

先生45才、私19才 昭和48年合歓の里

先生の人物像を語るに
逸話多き人物なりと
先輩達より数々の、伝説的逸話を聞かされた。
その中の一つ
羊羹(ヨウカン)の話
午後三時は小休止、
頂き物の羊羹が御茶うけである。
皆して、一本半を食べた。
先生は所用で、後で食べるとの事
「しめた」・・と
此ぞと、皆の心に茶目っ気が湧いたのである。
さっそく、残り分の半分を模型製作で使う粘土で以てそっくりに作り、
そして、残った半分と合せ、元の一本として綺麗に包み紙に戻して置いたのである。
然しそれは、そっくりとは謂っても所詮は粘土、
殊更注意して見ずとも、子供でも一目で分るであらう程度の物
包み紙を開かば、たちどころに見破られ
「 すいません 」 ・・と、謝る振りをして大笑いする。
これが皆の筋書きであった。
ところが、筋書き通りにはいかなかった。
皆の思惑は外れた。
包み紙を開いても気付かなかったのである。
それどころか
つづいて、カッターを入れてゆく
「 ・・・・ 」
皆は、固唾を飲んでその様子を見ていた。
然し、先生、本当の羊羹と信じ切っている様子
皆のイタズラだと、全く気付こうべくもない。
そして
スワッ 大変
「 この羊羹、おかしいです 」
「 変な臭いがします 」
「 メーカーに連絡しなさい 」
・・と、いかにも真顔で叫んだ。
「 先生、気が付いていない 」
これで、慌てたのは仕掛けた方の皆であった。
「 まさか、真に受けるとは想わなかった 」 ・・と。
先生には冗談は通じない。
先生の生真面目は、皆の茶目っ気を凌駕したのである。

昭和49年11月3日 隠岐


オイルショックこそあれども、景気の良かった昭和49年(1974年)
大同門の新築工事に於いて、超突貫で設計を片づけなければならぬ事態が起った。
どうしても、期日に間に合わさねばならない・・と、
事務所の全員でその仕事を完成させることとなった。
「 皆が一丸と成って頑張るしか無い 」 と、赤崎先生。
各自、自分の担当仕事を一旦置いて手伝うことに成ったのである。
当仕事の担当者であった宮田さん。
統括責任者として、
皆からの質疑等の解答、各図面の連携、等々、専ら調整約に徹する態勢とし、皆に作業を割り振り
皆は割り振られた図面を作図したのである。
私は、展開図の作図の任に当った。
私は、急ぎの場合に多数で一斉に作業する方法をここで学んだのである。

 展開図サンプル
2005年、パソコンで作図したもの
手書きの1974年当時 からすると、考えられないくらい
作図する作業はスピードUPした

休日出勤となる土曜日
私は、( 平日の定刻は9時 ) 午前10時過ぎに出勤すると、
「 僕は、一睡もしなかった 」
「 君は何時間、寝たのかね 」
と、赤崎先生。
昨日は芦屋の自宅へは帰宅せず、唯一人 事務所に残って頑張ったのである。
「 僕は、徹夜した 」 ・・と、自慢する先生の手前
「 3時間程寝ました 」
・・私は、家へ持ち帰って仕事をしようとしたるも
帰宅するやバタンキュー、そのまま寝てしまった。
従って何もしていなかったのである。

クリープの話
ランチタイム
既に社会は、週休二日制が定着し始めていた。
土曜日とあって、仕出し弁当も休日、
平日なら、吾母の手作りである弁当持参の私も、さすがに持参しなかった。
そこで私は
事務所で用意していた カップ焼きそば を食べる事にしたのである。
 
お湯を注ぐだけで簡単に作れ 当時としては画期的なものであった

「 一緒に食べましょう 」
と、先生
いつもの如く、腰に手拭ぶら下げたるスタイルで現われた。
そして、二人肩を並べて食することに成ったのである。
ところが、何を思ったか先生
コーヒー用のクリープを取り出して
「 こうすると美味いんですよ 」 ・・と
ソース焼きそば にクリープをまぶして、然も 混ぜて食べ始めたのだ。
そして
「 美味しいですよ、君も ( クリープをまぶして ) 食べなさい 」 ・・と
私は遠慮した。
美味しい・・・なぞとは
とうてい想えなかったから。
満足そうに食している先生の横顔をまざと拝見しながら、
これぞ、赤崎先生の真骨頂
・・かな、と
感心したのである。


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