昭和・私の記憶

途切れることのない吾想い 吾昭和の記憶を物語る
 

天神鼻

2016年06月12日 | 1 想い出る故郷 ~1962年

「 アッ !! 猫が死んじょる 」
猫の死骸を見つけた私
「 どこなぁ ? 」
「 ここじゃあ 」 ・・と、指をさした。


天神鼻

「 天神鼻でなあ、タッケンがダイナマイトで自殺してな・・・」
「 わしがあの時、声をかけちょったら、死なんで済んだかも知れんのに・・」
親父は知人の死を、いつもそう言って悔やんだ。
天神鼻には、その半ばから先端にかけて大きな看板が立っていた。
その看板の下で事に及んだそうな。
幼き吾々にとって、天神鼻は怖ろしい処であったのだ。
子供が足を踏み入れてはならぬ場所 ・・と、
小学生に成っても、
看板を越えて先に行くことは勇気がいったのである。

死骸を指さしたら、死ぬるぞ
坂本九の 「 上をむいて歩こう 」 が流行った 昭和36年 ( 1961年 )

天神鼻の先端まで、友達3人で山道を通って行こうと謂うことになった。
天神鼻には、フロの焚き木拾いに、叔父達と一緒に何度か入ったことが有る。
それでも、松林の天神鼻を歩くのは怖かった。
然し、七歳 ・小学一年生とは雖も男の児
「 誰も恐ろしい 」 ・・・とは、言えなかったのである。

天神鼻も中ほどまで来たところで、猫の死骸を見つけた。
カラスに突つかれたのであらう
頭部にその後が判るほど、気持ちの悪いものであった。

「 アッ!! 猫が死んじょる 」

猫の死骸を見つけた私

「 どこなぁ ? 」

「 ここじゃあ 」・・と、私は指をさした

「 指さしたら、死ぬんど 」

「 ほいでも、まじないがあるきん、死にゃあせん 」

「 こうするんじゃ 」

そう云って私は、両手のひとさし指と親指の先をくっ付けてダイヤの形を作った。

それを口元に運び、唾を吐いたのである。

「 手の真ん中を手がたなで切って呉れ 」

切って貰うと

「 ヨシ、これでだいじょうぶじゃ 」

これ、先輩達より伝授されたもので
先をくっ付けた指を手刀で切り離せば、魔除けになると謂うのだ
一人の場合は、これ全部を片手でやった。
尤も、
「 指さしたら死ぬ 」
・・と謂う迷信も先輩達よりの伝授である。

然し、やっぱり恐ろしい

誰もが皆、同じ気持ちであった。

吾々は勇気を出して、引返したのである。


  山も、海も、家並みも・・・私が瞼に焼き付けた幼年期の風景なぞ、存在しない

山ん中は、山菜や木の実の宝庫であった。
だから、食べれる物を探しに度々入った。
そして、見つけたらその場でかたっぱしから食べた。
然し、山ん中は怖い目にも遭遇する機会も多い、
それは覚悟の上・・・とは雖も、やはり気持ちの悪いものであった。

シマヘビ、アオダイショウ等のヘビは当り前のこと
親父から聞いた伝説のカラスヘビ
・・・・親父は襲われたと謂う
「 カラスヘビはなぁ、空を飛ぶんじゃ 」
「 地蔵の峠で、追っかけられてのぉ ・・ワシの後ろから飛んで来るんじゃ 」
「 パッと軀をよけたんで助かったが、危なかったんどー 」
「 噛まれちょったら、死んじょる 」
私は、親父のそんな話を素直に聞いた。
「 カラスヘビ・・恐ろしいヘビがおるもんじゃ 」・・と、ずっと想っていたのである。
ヘビだけではない、ムカデ、クモ、ハチ、トカゲ・・・ひけはとらなかった。

  類似イメージ
ミカン畑で観た、トカゲの喧嘩

夏の或る日
段々畑の段下で、偶々
互いのトカゲが双方の喉元に噛みついたまま、
仰向けになって白い腹をみせ、
もう・・白色吐  息斯の姿を見た私、
もう、なんと気色の悪い・・ことか
サブイボがたったは言うまでもない
今尚、瞼の裏に焼付いている。

金色のトカゲ
極めつけ
は、荒れたミカン畑でのこと
雑木林程に雑木や雑草が生い茂っている。
そんな中、探検と称して私は先頭を歩いた。
そこで観たものは
みかんの大木の枝に横たわる、七尾のトカゲ
軀は緑青色をしていた、そして七つのシッポは金色の七色  (コンジキのナナイロ)
私は、此を確かと観た。                             (シカトミタ)
なんとも気色の悪いトカゲ、これまで観た事ない
反射的に体が動いた。
回れ右
「 ここは、何もない、かえるどー 」
と、そう言って退散したのである
男前の私
トカゲが恐ろしいとは言えなかったのである。
類似イメージ ・カナヘビ
あの金色の七色、絶対に幻を見たのではない
確かに此の目で見た
あれはいったい・・・何だったのであらうか。
今尚、不思議でならない。


探検隊長
山を探検しようと

同級生のカワハラコウゾウとオカダケンソウを引連れ

意気揚々、先頭に立って登った。

「 あれ、なんなぁー ・・・? 」

私は、雑木林の中に丸い物を見つけたのだ。

それは、大きなツボであった。

「 なして、こがなとこにタコツボがあるんじゃろ ?

    
その瞬間

ペコン・・、ツボの左目の瞼が開いた。

「 ン ・・・? 」

次の瞬間
こともあらうに
左目から、一匹の蜂が飛出してきたのだ。

「 蜂じゃあ ! ! 」

「 蜂の巣じゃあ ! ! ! 」

の中の叫び 声なき叫びをあげて
私は、スルッと向きを換えて
一目散に山道を駆け下りたのであった。
後にいた二人のことは
知らない


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