うたうつぶやく
花夢



「老人」のお題は読み応えのある作品ばかり。
曲解でしたら、ごめんなさい。


今すぐに追いつめるより老人になるまでゆっくり時間をかけて
五十嵐きよみ

このじっくりとした追いつめ方は、憎しみなのでしょうか?

ゆっくりと時間をかけて追いつめるのは、高度な方法という気がします。
確かにじっくりと追いつめる方法は、相手を苦しめるかもしれません。
しかし、自分の気持ちが静まりやすいのは、今すぐに追いつめる方法だと思います。

ゆっくりと時間をかけるというところが、
その場で首を絞めない、という逃げ道に見えないこともない。
本当に憎んでいる人に対して「ゆっくりと時間をかけて」なんて余裕はないとも思ったりします。

「道」のお題で取り上げた、
憎しみも愛もよく似たものだからこの感情の道なりにゆく
の作品と繋がりがありそうです。

どちらも、ドンナ・アンナの歌だそう。
私は、ドン・ジョヴァンニの歌劇を知らないのですが・・・
このアンナの抱いている感情とは、いったいなんなのでしょう。
あらすじだけを読むと、父親を殺された女性の憎しみ。と受け取ることができるのですが、
うーん。本当にそれだけなのかしら?と思いたくなる。

アンナの身のうちの炎は、くすぶることを知らず燃え続けています。
おそらく、ずっと燃え続けるだろう炎。
その憎しみ方は、なぜか愛に似ている。ようにも見える。



ちちははを老人として眺むれば胸に痛みのひとすじの来る
鈴雨

そう。「老人」というお題を与えられたとき、自分と身近ではないような、よそよそしい単語だなぁ。と感じました。
おじいさんでも、おばあちゃんでも、祖父でも、祖母でも、父でも、母でもない、老人。
そんなよそよそしい単語を使って、どう近づけばいいんだろう。と途方に暮れた記憶があります。

この鈴雨さんの作品は、その「老人」という単語の持つよそよそしさを、無理に近しいものにしようとはせず、「客観視」という視点からよそよそしいままにさせています。
そのよそよそしい単語を使い、すこしだけ自分の身近な人を客観的に見る。
そのことにより、かえって、自分の身近な人の「老い」の悲しみをリアルに浮き彫りにさせているように思います。



南極老人(カノープス)みてゐるやうなペンギンの直立不動 あきらめなさい
飛鳥川いるか

南極老人 カノープス という星があるそうです。

参考:ウィキペディア画像の載っているサイト

ここに出てくるペンギンは、南極から連れてこられた動物園のペンギンなのでしょうか?
ペンギンの立つ様は、確かに、直立不動で、なにかをじっと考えているようなんですよねぇ。
あれは、故郷のカプーノスをみていたのでしょうか?

その直立不動で立ち続けるペンギンに、ぽつんとくだされる
「あきらめなさい」。

なぜか、ひろいひろいしずかなしずかな南極の地、真っ白い氷の地面、真っ黒な空のした、ひとり、ポツンと、空を仰いでいるペンギンの姿が浮かびました。
どこまでも凛としていて、さびしい。



老人の速度でふたり立ち上がるおうちに帰るまでが恋です
ハナ

ハナさんのキュートな遠足の常套句みたいな、恋の短歌。
ふたりとも、できるだけゆっくり。



死ぬまでにつきたい嘘があるという美しい老人の横顔
田丸まひる

女は、嘘と秘密を抱えながら美しくなっていくものだそうです。老いても、なお。



コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 070:章のうた 072:箱うた »
 
コメント
 
 
 
TBありがとうございます (鈴雨)
2007-06-25 18:03:37
花夢さま、はじめまして。
拙歌を取り上げていただきまして、ありがとうございます。
先日、アクセス解析のリンクをたどり、こちらにお邪魔したところでした。
「老人」の歌、ただ何気なく生まれたのですが、花夢さんに解説していただき、逆に自分で納得しました!
私も花夢さんの歌で心に残るものがあり、お名前は存じ上げておりました。
またおじゃまさせていただきます♪
 
 
 
ありがとうございます (花夢)
2007-06-25 21:28:53
はじめまして。
いらしてくれてありがとうございます。
鈴雨さんの作品、お借りしました。
「老人」という言葉が、一番自然に織り込まれている作品のように思いました。
ありがとうございました。

未だに2006年の題詠を読んでいますが、こうしていろんな方のステキな作品に出会えて嬉しいです。

私の短歌も読んでくださったんですね。
重ねてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
 
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。