すごく遅ればせに、『バベル』を観ました。いや、去年の話なんですが。
何というか、菊地凛子さんのハダカが痛々しかったし、ワタシの中でどうにも評価が定まらない映画でしたが、ウニさんのエントリー(今年のテキサス人@壊れる前に・・・)を読んで、あーそういえばと、物語の中の一エピソードを思い出しました。
アメリカ白人の家庭で、長らく乳母として働いていた女性が、メキシコからの不法移民であったため、あるトラブルをきっかけに強制退去させられるエピソード。
アメリカ移民の歴史は古いです...というか、国家の枠組みが移民によって成り立っているわけですが、だからこそ枠そのもの(国境)を無きものにして入ってくるメキシコからの不法移民は、それまでの移民対策を一考させるムーブメント(移動)だったことは想像に難くありません。
しかし、ほぼ自分の孫に対するように、乳児のころから子供たちの世話をしてきたメキシコの女性にとって、「不法滞在者であるということ」は、大した問題ではないだろうと思うことも想像に難くありません。
そして、生活のすべてがある街から、一瞬にして追い出される人々。
ウニさんのエントリーでは、大阪・茨木の入国管理センターで、収容者の自殺者が出たことを伝える記事が紹介されていました。
強制送還を悲観してのことだったと上の記事は伝えています。先日行った講演会で支援者からの報告を聞いた者としては、入管の環境や医療も心配ですが、『バベル』のメキシコ女性と同様、生活のすべてがココ(日本)にあったのであれば、強制退去そのものへの悲観は想像に難くありません。
そういえば、講演会のレポートを、日本の状況を、早くアップしなければと思っていましたが、主催者のウェブページに報告されていたので、下にリンクしておきます。
まとめると、拷問等禁止条約(CAT)とは
①NGOなどの働きかけによって成立した。
②CATには政府報告制度(第19条)、個人通報制度(第22条)がある。
③日本は1999年に加入/発効したが、国内法改正なく、第22条を留保している。
んで、昨年(2007年5月)ジュネーブで開かれた日本政府報告書審査の最終所見報告で、
「不服申し立て制度が機能していない」と委員会から勧告を受け、また、ノン・ルフールマンの原則(第3条)が守られているか、1年以内(2008年5月まで)に回答を要すると言い渡されているそうです。
しかし、これがどれほど深刻に受け止められているのかを思うと、先日も書きましたが、忸怩たる気持ちになります。
むしろ、流れは外国人行政の管理と拡大を活発化させ、在日外国人の個人情報を積極的に収集する動きになっているように思います。
そうして「見せしめ」的に強制送還される人々は、入管法違反以外、何の罪も犯していない、「善良」な人々がほとんど。
また、むしろ深刻さへの反応を裏返しにして、不毛なセキュリティ強化にもつながっているようにも思います。
TVでは防犯ビデオの映像が幾度も流されるようになりましたが、「後で確認するだけ」のツールに興じる心境とはどのようなものなのでしょう。
自分自身はバベルの塔から見下ろす存在であるかのように思いがちですが、実際はほとんどの人が見下ろされる存在なんですよね。
まぁ、よく聞かれるのが抑止力になるという主張で、そこで止まればいいですが、あんな不鮮明な映像を、万が一に犯人逮捕への有力な証拠にでもされたら、「冤罪」の危険性も高まるというもの。
ちゃんと考えていかねばなりません。