浜名史学

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『高知新聞』社説

2017-06-16 21:32:43 | その他

【「共謀罪」法成立】民主主義壊す「安倍1強」


 安倍政権によって「言論の府」が踏みにじられる光景を、これまで何度見せられたことだろう。

 今また「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案の採決を参院本会議で強行、成立させたことで繰り返された。しかも参院法務委員会での採決を省き、本会議採決に持ち込む「中間報告」という奇手を使った。

 中間報告は国会法で「特に必要があるとき」に認められている。しかし今回、委員会審議を打ち切るだけのどんな「必要」があったのか。

 「野党は同じ質問を繰り返すだけ」と与党は批判する。だがそれは、国民が納得できるだけの答弁がなされていないことの裏返しでもある。まるで理由にならない。

 学校法人「加計(かけ)学園」問題の追及を避けるため、早期に成立させ国会を閉じたい。そんな思惑も指摘されている。事実なら実に手前勝手と言うほかない。

 採決の強行は特定秘密保護法や安全保障関連法でも行われた。世論がどれほど割れていようと「審議時間の積み上げ」を理由に、最後は与党が「数の力」で押し切る。異論や反論に真摯(しんし)に耳を傾けることもない。問題点を指摘するメディアには、どう喝めいた振る舞いさえ見せる。

 安倍政権の強権体質への懸念は自民党内にも散見されるが、大きな声となって執行部と対峙(たいじ)することはない。党内に多様な意見を抱え、バランス機能も働いた往時からは程遠い姿だ。

 むろん多数決は民主主義のルールである。そうではあっても立法府には少数意見を尊重し、行政府の行き過ぎにブレーキをかける役割があるはずだ。現状では立法府は行政府のチェックどころか、「追認」「下請け」機関となっている。政権が推し進めていることとは、民主主義を壊すことにほかならない。

 「組織的犯罪集団」はテロ組織や暴力団だけでなく、労働組合など一般の団体も対象となるのではないか。謀議の有無を内偵するため市民監視の手段が拡大され、合法化されはしないか。

 こうした不安に対し政府、与党は「一般市民が処罰されることはない」と、拡大解釈や乱用を否定する。だが、それを担保する仕組みはない。「口約束」だけでどうして安心できるだろう。

 仮にテロ対策であったとしても、プライバシー侵害などに目を光らせる仕組みは必要となってくる。専門家は捜査機関による監視の件数や概要を国会に報告するよう義務付けたり、政府から独立した組織が点検したりすることを提案している。

 実際に共謀罪と同じような法律を整備している国では、検証可能な歯止め策を設けている。組織犯罪処罰法にも最低限、そうした仕組みが入らない限り容認できない。

 安倍1強政権の下、国会で繰り広げられている光景から目をそらしてはならない。民主主義、立憲主義を損なう行為に異議申し立てを続けること。今ほどそれが求められている時はない。

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