松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

窮すれば/すなわち変じ/変ずれば/すなわち通ず

2011-05-10 | インポート

Img_4617_2  今月のことばは、わりと知られた言葉です。

出典は中国古典の『易経(えききょう)』です。「行き詰まってどうにもならなくなると、困難を切り抜ける道がみつかるものだ」といった意味でしょうか。私はとことんまで、自分自身を追い込んだことなどない怠け者だから、窮して人生が変わるような体験などしたことありませんが、幾日か迷ったあげくの些細な発見ならば時々あります。

数日前も本堂にある燒香用の香炉を変えたくなりました。いつもいつも同じ香炉で燒香するのではつまらないじゃないですか。少しは変化しないと、お参りする人も飽きてしまう。面白そうなのを仏具店に注文すれば良いのですが、そういうのはずいぶんと高価だし、ありきたりでつまらない。何かないかと幾日か考えた。ふと花瓶が並んだ物置の棚をみる。「これ、香炉になるんじゃない」と花入れを取りだして灰をいれてみると、粋な香炉のできあがり。線香やお香を焚く器は火を使うので、熱が伝導して火事の原因にならないように気をつけなくてはいけないのですが、その花入れの底はまるで香炉のような作りになっているから、大丈夫。

ところで、売れっ子陶芸家にこんな話を聞いたことがあります。陶芸家に馴染みの問屋からご飯茶碗を三十碗焼いて欲しいとの注文がはいります。問屋の希望に添って焼いて納品しました。納めたあとで、めし茶碗三十個分の料金を受け取ります。それから半年後、例の問屋から飯茶碗用の木箱が三十個送られてくる。著名して陶芸家の印を押して欲しいとのこと。木箱入りのご飯茶碗とは珍しい。陶芸家は気がつきました。「やられた」。何をやられたかというと、飯茶碗として焼いた器を、問屋は抹茶茶碗として売る魂胆なんですね。飯茶碗と抹茶茶碗では形は似ていても、売値はちと違う。それで、陶芸家はどうしたかというと、依頼された木箱に大きく「めし茶碗」と書き添えてから著名したそうな。

香炉が花入れになり、ご飯茶碗が抹茶茶碗になる。花を活かす器はないかと考えあぐねて、香炉に花を活け、美味しいお茶を飲む道具はないかと探訪した結果、飯茶碗でお茶を点てる。窮すれば変ずるわけです。

さて、今回の大震災。福島原発で復旧工事にあたる人々が、次から次へと考え出す工事方法の報道を見聞きすると、まさに「窮すれば/すなわち変じ/変ずれば/すなわち通ず」だなと敬意を表せずにはおられないのです。

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