松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

青空の   与謝野晶子

2013-05-02 | インポート

 

502_2青空の/もと楓の/ひろがりて/君亡き夏の/初まれるかな 与謝野晶子

 

 

今月のことばは、与謝野晶子(明治11年~昭和17年)の短歌です。
晶子が亡くなって後に編集された遺歌集『白桜集』に収められているようです。
故人との最後の季節を歌ったのではなく、亡き後の初めての季節を歌ったのが斬新なのでしょう。この場合の「君」は与謝野鉄幹(明治6年~昭和10年)のことにちがいない。いくら恋多き晶子といえ、これが他の男性だったら困ってしまう。
でも、与謝野晶子の歌に登場してくるいろいろな「君」を巡ってはケンケンガクガク、にぎやかです。

たとえば、「やは肌のあつき血汐にふれもせでさびしからずや道を説く君」(『みだれ髪』所収)の君は、若い頃僧侶であった与謝野鉄幹であるという説あり、高野山の修行僧説や堺市にある覚応寺の跡取りの青年僧説もあります。そればかりか、この「君」は妙心寺派の管長を長くつとめた古川大航師だという主張するのは佐伯裕子氏です。氏の「恋歌 与謝野晶子と古川大航」(『影たちの棲む国』所収)は推理小説を読むようなおもしろさがあります。
さて、「君」といえば少し前の通夜の席のことでした。通夜と言っても坊主ですから、参列したわけではなくて導師をしたわけです。
場所は葬儀社の経営する斎場です。斎場の入り口に故人ゆかりの品が並べられています。こういう飾りをするのは葬儀社の陰謀とわかっているので、普段は素通りして見ないのですが、その晩はなぜか立ち止まりました、故人は警察官でした。幾つもの勲章が並べられています。
家族には職務の内容は一切話さず、こんなに幾つもの勲章があるのも亡くなって始めて知ったとのこと。その中に一枚の賞状がありました。退職時の感謝状です。その文面を読んではっとします。その感謝状は「君は」という書き出しではじまっていたのです。
日本国語大辞典には、「君」は「現代語では同等または目下の相手をさす男性語」とあります。普通、感謝状なのだから柔らかく「あなたは」という書き出しではじまるのではないだろうか。それが「君は」とはじまる。「あなた」なぞとフヌケタ言い方では、生命をかけた危険な職場の秩序がたもてないのだろう。
「君」ひとつの字から、いろいろなことが想像できるから言葉は難しいけれど楽しい。

ところで、もうひとつ。「青空のもと/楓のひろがりて」の楓は、広辞苑には「カエデ科の落葉高木の総称。北半球の温帯に分布。葉は多くは掌状で、初め緑色、秋に赤・黄色に紅葉する」とあります。秋の紅葉を人は賞嘆するけれど、新緑も好いものです。でも、この楓。植生の変化にメチャクチャ弱いのです。冒頭の写真は松岩寺の本堂の南側にある木ですが、6年前に隣にあった染井吉野を伐って、直射日光に当たるようになったら、幹の皮がはがれて木の半分が枯れてしまった。だめかなぁー、と思っていたら、どうにか踏みとどまっています。
そこから10メートルほど離れたところにも楓があるのですが、ここも建物を壊したため、陽の当たる向きがかわったら、どうも元気がない。
松岩寺の楓はどうにか生き残っているけれど、新座市の平林寺の奥庭にある楓の大木が2本枯れてしまって、これも伐採したようだ。一昨年に亡くなった先の老師が庭を大きく作り直して少し移動したので、その変化についていけなかったようだ。出入りの植木屋によると「亡くなった老師が連れて行ってしまった」と言っていたけれど。
いろいろな楓があります。

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