エレベーターから降りると、「よお」と親しげに声を掛けられた。
「女の子の部屋に突然やって来るってどうなんですかねえ」
「差し入れあるんだけど」
李とリチャードと鷲津の3人。
李がビニール袋をごそごそとかき回して、私に手渡したものは「たこ焼きの粉 関西だし風味」だった。
「たこ焼き機も買ってきた。ほら、早く家の鍵開けろよ。俺たちがここにどれだけ待たされたと思ってるわけ。脚が棒だよ」
「ちょっと。あんた…好きなことばっか言いなや」
そう言いながらも、私は彼が足元に置いているダンボールに目を向けていた。
~便利!24個いっきに作れるよ!~
「すいません。急に押しかけちゃって」
リチャードがしょぼんとした姿で頭を下げる。
「リチャードさんだったら大歓迎ですよ。私、オトコマエって大好きだから。はい、どうぞ~」
鍵を開けてマンションのドアを開ける。
靴を脱いで明かりをつけて、ふと思う。
「あ、荷物届いてたみたいなんですけど。いさ子さんからの」
「荷物?なんだろうな」
「私、お礼も言いたいから今から電話してみますね。鷲津さんにも代わりますから」
「えっ、いいよ。別に」
「いいから。いいから」
「とりあえず、そのたこ焼き機は居間に運んでね」
「はいはい。人遣いが荒いね」
李がぶつぶつ言いながらも、居間に荷物を運び入れている間に携帯から鷲津いさ子さんの家にコールした。コール3回目で相手が出る。
「もしもし」
少し語尾が上がった、いつもどおりの…
「いさ子さん。私です。こんばんは」
「あら~。西浦さん。荷物、届いたの?」
「はい。どうもありがとうございます。なんだか色々お世話になってしまって」
「いいのいいの。もうね、息子が自発的に女の子の話するんが嬉しいから」
「いえ。あの、マンションを貸してくださるという話なんですけど」
「いいのよ。あの子つかってないでしょ。私もそこ売ろうかと思ってたんだけどね、あの子の名義だから勝手なこと出来ないし、ほっといたのよ。だから、気にしないで、勝手に使っちゃって」
「あの…家賃とかって」
「なによ。あの子金取るって言ってる?いいのよ。気にしないで。稼いでるんだから。使い道なさそうだから溜め込んでるわよ。せいぜい貢がせてやればいいじゃないの」
容赦ないな、この母は。たじたじになっている私を見かねて、さっと横から手が伸びてきて電話を奪った。
「あのさ、この人困ってるからあんまりポンポン喋るなよ」
「何言ってんのよ。付き合いは私らのほうが長いねんで」
「そうかもしれないけどさ。…もう切るから」
「えっ、もう!?」
この言葉は私といさ子さんの言葉です。
鷲津さんは次の瞬間には携帯電話から指を離して私の手の中に戻していた。
「はい。苦手なんだよ。母親」
「だからってそんな…」
もうちょっと話をさせてよ。お礼もまだろくにできてないのに。
「女の子の部屋に突然やって来るってどうなんですかねえ」
「差し入れあるんだけど」
李とリチャードと鷲津の3人。
李がビニール袋をごそごそとかき回して、私に手渡したものは「たこ焼きの粉 関西だし風味」だった。
「たこ焼き機も買ってきた。ほら、早く家の鍵開けろよ。俺たちがここにどれだけ待たされたと思ってるわけ。脚が棒だよ」
「ちょっと。あんた…好きなことばっか言いなや」
そう言いながらも、私は彼が足元に置いているダンボールに目を向けていた。
~便利!24個いっきに作れるよ!~
「すいません。急に押しかけちゃって」
リチャードがしょぼんとした姿で頭を下げる。
「リチャードさんだったら大歓迎ですよ。私、オトコマエって大好きだから。はい、どうぞ~」
鍵を開けてマンションのドアを開ける。
靴を脱いで明かりをつけて、ふと思う。
「あ、荷物届いてたみたいなんですけど。いさ子さんからの」
「荷物?なんだろうな」
「私、お礼も言いたいから今から電話してみますね。鷲津さんにも代わりますから」
「えっ、いいよ。別に」
「いいから。いいから」
「とりあえず、そのたこ焼き機は居間に運んでね」
「はいはい。人遣いが荒いね」
李がぶつぶつ言いながらも、居間に荷物を運び入れている間に携帯から鷲津いさ子さんの家にコールした。コール3回目で相手が出る。
「もしもし」
少し語尾が上がった、いつもどおりの…
「いさ子さん。私です。こんばんは」
「あら~。西浦さん。荷物、届いたの?」
「はい。どうもありがとうございます。なんだか色々お世話になってしまって」
「いいのいいの。もうね、息子が自発的に女の子の話するんが嬉しいから」
「いえ。あの、マンションを貸してくださるという話なんですけど」
「いいのよ。あの子つかってないでしょ。私もそこ売ろうかと思ってたんだけどね、あの子の名義だから勝手なこと出来ないし、ほっといたのよ。だから、気にしないで、勝手に使っちゃって」
「あの…家賃とかって」
「なによ。あの子金取るって言ってる?いいのよ。気にしないで。稼いでるんだから。使い道なさそうだから溜め込んでるわよ。せいぜい貢がせてやればいいじゃないの」
容赦ないな、この母は。たじたじになっている私を見かねて、さっと横から手が伸びてきて電話を奪った。
「あのさ、この人困ってるからあんまりポンポン喋るなよ」
「何言ってんのよ。付き合いは私らのほうが長いねんで」
「そうかもしれないけどさ。…もう切るから」
「えっ、もう!?」
この言葉は私といさ子さんの言葉です。
鷲津さんは次の瞬間には携帯電話から指を離して私の手の中に戻していた。
「はい。苦手なんだよ。母親」
「だからってそんな…」
もうちょっと話をさせてよ。お礼もまだろくにできてないのに。