ゆううつ気まぐれふさぎ猫

某ミステリ新人賞で最終選考に残った作品(華奢の夏)を公開しています。

視点 推敲 プロット

2011-07-03 18:20:37 | 執筆
昨年暮れ、突貫工事で推敲作業をしている最中、気付いたこと感じたことなどを覚え書きにしてノートにしたためていたものが見つかりました。
どうやら編集氏に途中経過として送ろうとしていたらしいが、書き殴ったままで放置していたようだ。すっかり忘れていました。
読み返してみると、結構おもしろいことを(我ながら)書いているのでここに記すことにします。


*はじまりの問題点

場面が唐突すぎて、読み手を置き去りにしているような気がする。
一気に物語りに引き込むには、もっと遠くから近付く方がいいのか。いっそ二人の出会いから始めるべきか。

*全体の視点

整えること、視点を据えることに気を取られすぎて、文章の流れ、人物の行動や心情の移り変わりがぎくしゃくしている場面が見られる。

*人物の心理と行動

作者として見えているものと読み手に提示する情報が区別されていない。
「~なので……」という押し付けがましい表現が多い。

*改善できたかと思う点

視点(描写の向き)を整えることによって、文章のひとつひとつが立ってきたように思う。それによって並び具合のおかしさも見えてきた。
文章の背筋が伸びたことで、余分な飾りが邪魔に思えてきた。いくらかすっきりとしてきたのでは。
ゆっくりと流れをたどるところと、勢いをつけて駆け抜けるところのメリハリ、全体がひと通り仕上がったらそのあたりにも目を配って直したい。


なんて殊勝なこと書いていました。


さて、今回編集氏から「直すなら今までのものより出来のいいのに仕上げろよ」と突きつけられ、大慌てで自分の小説を分析してみました。
場面ごとに視点人物を細かく書き出していったわけですが、その作業を終えてわかったこと。

「そうか。これがプロットを作るという作業なんだ」と。

今さらです。

けれど、どうしてこの場面が彼もしくは彼女の目から見なければならないのか、というところまで遡ることによって因果関係がくっきりと浮かび上がったのも事実です。
本来ならばこの作業は執筆に先立って行なわれるものなのでしょう。
そうしていれば「視点がぶれています。おかしいです。直して下さい」と編集氏からお叱りの言葉を頂くことも無かったのでしょう。
全く呆れ果てます。
だけど私は物語の波に乗って、作者の特権を思う存分ふるって世界を作り上げたい性分の人間なのです。
そんな方にぜひお勧めしたいです。
とりあえず全体が仕上がったら、冷酷無比な眼差しで物語を分析してみることを。
酔いを醒まして冷静に客観的に小説を見るためにも、場面ごとに分解してみること。
最初にプロットが作れないなら後で作ればいいじゃないか、という作戦です。

さてその結果、実はいくつかの場面でこれは直したほうがいいのではないか、というものが見つかりました。
けれど小心者の葉月は「このままで行きます」なんて返信してしまったのです。
それでも今度お会いできた時に何か指摘されたら「こういう風にしてもいいですか」と答えられるよう、こっそりそちらのプランでも書いておくつもりです。



毎日赤い実にかぶりついています。




2 コメント

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初めておじゃまします。 (はまる)
2011-07-03 23:51:40
はまるです。
blog、拝見させていただいてたのですが、僕なんかがなかなかコメントできるようなものもなく、今までずるずるとROMってました。初めてこちらにおじゃまします。

先にプロットが出来て、それから小説を書く、ってのは理想論ですが、小説が書きながら変わっていく以上、そうはならないんですよね。
そして葉月さんの仰った、小説を書いてから後でプロットを書くって、僕は今まで思い付きませんでした。でも、書き上げてから自分の作品を冷静に分析するには、確かに有効な手かも知れません。(僕の場合、まず書き上げなきゃなりませんが)

プロットなんてほとんど書かない、なんてプロの方もおられるようですが、でも、世の中には記憶力がいい人だとか、物事を論理的に考えるのに長けている人だとか、人それぞれ得意なことがあると思います。逆に人それぞれ苦手なこともある。プロットを「書く」ということは、頭の中だけでは上手くいかないから「書く」わけで、だから人それぞれプロットに書くことは変わってくるんだと思います。

僕の場合、極端に記憶力が悪いので、まず登場人物の名前をきっちりと書いとかないとすぐ間違います。って、レベル低すぎですが……。

話は変わって――
はじまりの問題って難しい、と思います。
終わり方も、読後の印象のかなりの部分を占めるので難しいとは思いますが、始めが良くないと読んでもらえないから、やっぱりはじまりは大切なんですよね。

葉月さんの書いてるように、唐突、というのと、遠くから近付く、というのは相反するかも知れませんが、読者を引き込むという目的においては、両方アリなんだと思います。
僕は、読者としては、突然事件が起こってぐっと引き込まれた作品もありますし、あまり大したことは起こらず、かといって我慢強く読んでるわけでもないのに、すぐに世界に引き込まれた作品もあります。

一つ、今思い付いたことは(本当に今書いてて思い付きました)、僕が読者の場合、はじまりの重要性は、場面の展開が早い遅いにかかわらず、出てきた人間に興味が持てるかどうか、が大きなウェイトを占めてる気がします。その登場人物が何か気になるヤツだったら、多少展開がゆっくりでもついついページをめくるし、誰が何を考えて行動してるか分からなければ、いくら事件が起きても退屈です。

ああ、いつの間にか、長々と書いてしまいました。
今日はこのへんで失礼します。
はまるさん (葉月)
2011-07-04 16:52:01
ようこそいらっしゃいました。
一応「はまるさん」と敬称でお呼びしていますが、ブログを覗かせてもらっている時は「はまっちめ、自分で言っといてこの場面視点が混乱してるぜ」などとすっかり知人気分です、すみません。

後でプロットを作るという案は、まさに天啓のように降って来ました。行空けごとに自分の小説を分解していって表現云々は置いといて視点だけを抜き書きするという作業を完了して、ノートの見開き一面びっしりと埋められた自分の文字を見ていて悟ったのです。
「こいつがプロットだ」と。
文章を弄るよりも先にこれをしておくと楽かもしれないぞ、目から鱗の発見でした。

はまる君(と馴れ馴れしく呼んでもいいでしょうか)もどちらかといえばプロット作業は苦手のご様子。書いているとどんどん物語が膨らんでいくというか、あちこち気になる場面が見えてきてそれも入れたいぞ、なんていう方には本当に勧めたい方法です。

さて、これから私は自分で作った「プロット表」をパソコン上に打ち直します。せっかく書き上げたのだから編集氏にも見てもらおうという心積もりです。

小説、楽しみに読んでいますよ。明菜のキャラ、もっとくっきりと目立たせるとおもしろいかも(いつもピッシリと着物に身を包み、薙刀なんて持っていて事あるごとにその薙刀を振り回して暴れる、とか)。
勝手なこと言って、すみません。お聞き流し下さい。

いつでも大歓迎ですので気楽にお立ち寄り下さいませ。
(あ、物語の始まりについて書こうと思っていたのに、時間が。これはまたいつか)

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