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ストライプ ヴォリューム

魂って何でしょうね?

デューク - Rondo -

2011-02-01 17:59:59 | The SIX ISLES
ヘッドセットを毟り取って這いずるように退室した。

深層意識の渦   混沌  … 回る … 輪舞だ。 





[Rondo syndrome]   (回旋症

対象が衝動の根拠として強く持つ思考のリング。
デッドヒートして、その環から抜けられなくなる。

その状態にはまり込むこと。


彼女の場合。

自我から開放されたのは切望か?欲望の渦か?
暴戻への怨嗟がスパイラルし続けて止まらない。



駄目だ。

ここで解除出来ない。



回る。



グラグラと目眩がして壁に手をつく。

室内灯が眼底に突き刺さるようだ。


心配そうに席を立ちかけた部下を手で制し

「部屋に戻る。大丈夫だから。」 と距離を取る。




ここにいては誰かを殺す。 




殺意の回旋から自力で脱出できそうもなければ
さっさと医局へ直行した方がいい。

しかし医局での薬物を使った強制解除となれば
その薬が手放せないようになる。


抑えるか、、解除か、、、。 いずれかを …。





ゆらゆら揺れる浮遊感に気を引き締めなおす。


自室の区画へ戻る途中から、頭痛と吐き気がじり増して
頬の先、唇がひやりとしてくる。 

たぶんかなり血の気が引いた顔色になっている、だろう。

制帽を目深に直し、悟られないように姿勢と表情は崩さず歩む。
歩行の振動に頭蓋の拍動痛が重なって廊下が奇妙に白く歪む。




--------------




気づくと天井を見上げて床に倒れていた。

白々明るい照明が隅々まで照らしている。

記憶に無いが部屋まで帰り着き、ドアロックして昏倒したらしい。




自分の吐瀉物のなかで、仰向けに寝ていた。

私は医局をコールする余裕も無かったのか。



… まあ抑えきったなら良しとしなければな。


苦笑しながら身を起こしかけるとデスクの側まで転がった帽子が
視界に入った。

変動した血圧により拍動性の鈍痛が戻る。


せり上がる吐き気の波が視野を暗くする。

ヘドロの臭気がする。

床の影が拡がって、いつかの闇に飲み込まれる幻覚。

胸痛に息が切れる。




無意識に口をぬぐった手の甲には乾いたものが張り付いている。

いったいどれだけ経っているんだ? こんな状態で。



床の異臭が懸濁している。

異臭? 
自分が、だぞ? 苦笑



汚れるのもかまわず額に手を当てると、くくっと出る嗤い。

… 腐臭だ  これは。


… … 。



… 検死の上手い奴と死体の識別に歩いたことがあったな。




腐りだした死体をひっくり返したとき、フワッと上がる匂い。

Carrion (屍肉喰い)が、死体をどんどん鑑定していった。



思いの外、食欲をそそる香ばしい甘い匂いが立ち上るとき
人の死体も肉だなと思った。


そうだ。 肉はどんな肉でも甘ったるく匂う時期があるんだ。



人の顔はどうしてそれと思う? 
眼と鼻と口の穴の配置がすり込まれている。

どれだけ砕けた顔でも意外と分かるものだ。


黄濁した白目から、くすんだ赤い粘液が糸を引いて落ちた。
みっしり絡み合う線虫のしずくは蠕動しながら四散して行く。

半ば開いた口に泡、歯茎から骨が見える。  黒い舌。 









ループする思考に偏頭痛が酷くなる。

私の内臓が別の生きものの動きで体液を絞りだそうとする。

喉を掴んだ手までがヌルヌルと滑る。







汚物溜まりに手をついて足掻く。

何度目かの無駄な脱出の試み。


しかし、身体を支えるには腕力が保てない。 

荒い息を吐いても新鮮な空気は入らない。




汗で目が痛い。




褐色の乾きかけた所に、赤い色が広く溶けて混ざっている。

血 か?

胃液で荒れ苦い口の中を舌で探ると右の奥が切れている。

倒れたとき奥歯で切ったようだ。


また眼がくらむような頭の痛み。


吐く。



----------------



症状が沈静しはじめたのでやっと起きあがる。


汚れた制服はランドリーバッグに放り込んで

シャワー室で身体を流しながら、端末を繋ぐ。


湯のあたる皮膚感覚に集中し、思考が散らぬよう慎重に医局と室内清掃を呼び出した。




濡れた身体にガウンをはおってカウチソファへ倒れる。


スタッフが到着する頃には、痛みは大方退いていたが

今度は激しい睡魔に襲われて、意識を保つのがやっと。



簡単に状態の説明をした後は、処置の途中でブラックアウトし

その後のことは分からないが、予想したとおりの療養となった。
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