ちょび爺 思いつき日誌

携帯なくても生きていけるさ

いま カツァリスを聴きのがすな

2013年03月04日 | 音楽

 昨日きいてきたばかりの、シプリアン・カツァリスの演奏会(茅ヶ崎市民文化会館)

これはもう書かずにはいられない、とんでもなく素晴らしいコンサートであった。


 ほかの予定とのかねあいもあり、直前までどうしようか迷っていたけれど、やはり

行ってよかった! カツァリスは昨年、腱鞘炎と脳梗塞というダブルピンチにみまわれ

どうなることかとファンを心配させたが、さいわいにも元気に復帰してくれた。今回の

茅ヶ崎は、腱鞘炎のために昨年中止になったコンサートのふりかえ公演なのだ。

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● 幕前の即興演奏
  指ならしだろうか、極上のビロードのようなアルペジオがホールをつつみこむ。

● ハイドン ピアノソナタ第35番 ハ長調
  ソナチネアルバムにも入っているかわいい曲、吾輩もむかしピアノを習いはじめたころ
 弾いたことがある。しかしカツァリスが弾くとまったくちがう(当たりまえか ^^;) 
 かろやかな音たちが飛び回り、自由に遊び、夢のような幸福感にみたされる。

● モーツァルト 幻想曲 ハ短調K.396、ニ短調K.397
  これも子どもでも弾けるようなシンプルな2曲だが、まぎれもない「モーツァルトの短調」。
 ハイドンから一転、深く静かに人生の悲しみをうたいあげる。そのコントラストも見事!

● シューベルト セレナーデ、水車職人と小川、アヴェ・マリア(リスト編曲)
 こりゃもう 「掌中に収めた」 という言葉も生ぬるいほどの超名人芸。若いころよりもさらに
 やわらかく、瑞々(みずみず)しくなったような印象。宝石のような音の流れを堪能する。

● ショパン ノクターン op.9-1、 軍隊ポロネーズ
  意外にも今回一番感動したのがこの 「軍隊ポロネーズ」。病魔を克服したカツァリスの
 新たな決意がもう痛いほど伝わってきて、途中から涙がとまらなくなってしまった(TT
 音楽からこんなに勇気をもらえたのは初めてかもしれない。

<休憩>

● ベートーヴェン ピアノ協奏曲第五番「皇帝」 ピアノソロ版(カツァリス編曲)
  今日一番の目玉演目であったのだが、前半があまりにも素晴らしかったので割を食って
 しまったか… すこし残念だったのは、重低音をひんぱんに使いすぎて「高貴さ」よりも
 おどろおどろしい印象に傾く場面が多かったこと(とくに第三楽章)。重低音はここぞという
 ポイントのみにしぼり、左手をもっと中域の充実にあてればもっと素晴らしくなりそうな気が
 した(ベートーヴェン=リストの交響曲のときのように)。

  とはいえカツァリスのこの曲にかける意気込みはもうビシビシ伝わってきて、第一楽章の
 キラキラ輝く高域の美しさと迫力は息をのむほど。30年近く前サントリーホールで聴いた
 「英雄」 を思い出し、また目頭が熱くなる。彼の演奏を聴きつづけてきて本当によかった~

● アンコール 「さくら」のイメージによる即興曲、 マルチェッロ オーボエ協奏曲 第二楽章
  1曲目は「さくら」のメロディーを変奏してゆく即興曲。月光ソナタにもぐりこませるように
 はじまり、さいごは彼のアンコール集CDにはいっている「アガンの彫刻による即興」 を思
 わせる神秘的なひびき。ホール全体が不思議な空気でみたされる。

  そしてラストのマルチェッロは、最高に、最高に美しい、心のこもった音。
 それ以上は言葉もみつからない。ブラボ~!!!!!
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 これまで彼の演奏会を10回以上は聴いているけれど、今回が文句なしに最高であった。

試練を克服して、さらなる高みに到達したのではなかろうか。

 今、カツァリスを聴きのがしてはいけない。今週金曜の浜離宮にも絶対行くぞ!


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