経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

‘知財コンサル’とは何か

2008-01-30 | 知財業界
 ある仕事の関係で中小・ベンチャー企業に提供する‘知財コンサル’とは何かについて考えているのですが、図のようにザックリ整理してみました。

 事業活動に必要な知財業務のあるべき流れを考え、その流れの中でできていない部分を作り上げる作業、サポートする作業が‘知財コンサル’の基本形ではないかと思います。その知財業務を、事業分野を選定するためのフェーズ1、フェーズ1の後に進める事業の参入障壁を固めるフェーズ2に分けて考えてみます。尚、ここでは「知財」のうち、技術を強みとする企業について考えます。

 フェーズ1では、その企業の技術的な強みから生み出されるシーズを特定し、その分野の先行技術調査を行って他社の特許網等の特許からみた事業環境を分析、どの分野で勝負すべきかを検討します。その際には、特許の世界の優劣だけでなく、自社の持つ経営資源全般を考慮に入れること(資金力で優位だからライセンスで解決できるだろう、顧客と密接な関係を築いているから他社も簡単に権利行使できないだろうetc.)が求められます。
 この流れの中では、特許調査~分析の部分をメインにする調査系のコンサル(①)、事業分野の選択をメインにする経営戦略系のコンサル(②)があり得るのでしょう。

 フェーズ2では、フェーズ1で選択した分野で事業化を進める際に、開発成果にできるだけ参入障壁を設けて競争環境を優位にすべく、開発成果をどのように守れるか(特許かノウハウか、特許ならばどのような出願戦術が効果的かetc.)という基本方針を検討し、その方針に従って具体的な出願対象等を特定し、権利取得のための手続を進めます。参入障壁を考える際には、特許という視点だけでなく、資金力や営業網、顧客基盤などの経営資源全般を考慮に入れるとともに、ブランド構築などの他の手段を併せて考えることや、時間の概念を考慮に入れることも求められます。
 この流れの中では、参入障壁形成のグランドデザインをメインにする経営戦略系のコンサル(③)、出願案件の発掘や権利化のテクニックを駆使する出願実務系のコンサル(②)があり得るのでしょうが、これは分断せずに一緒にやっていかないと実効性がないと思います。

 とまぁ、「前へ、前へ」なんて言った矢先に抽象的なお絵描きをしてしまいましたが、プールサイドの準備体操に時間かけてないで、どんどんザブンといかなければいけませんね。


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2 コメント

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Unknown (大阪の一弁理士)
2008-01-30 12:51:02
先生の仰る通りだと思います。特許業務の二本柱が「抵触調査」と「権利化」ですから、「フェーズ1」と「フェーズ2」に分けることが本筋だと思います。
ただ、気になった点が一点あります。フェーズ1の「その企業の技術的な強みから生み出されるシーズを特定」という点です。ここで、顧客側の「ニーズ」をも考慮して行なうべきではないでしょうか?
ニーズがないところに、「知財戦略」を組んだところで、「砂上の楼閣」となってしまいます。ソニーのPS3の事例と同じです。「シーズ」に拘りすぎると、あらぬ方向に知財費用をかけ、全く意味をなさないものとなってしまうように思います。
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Unknown (土生)
2008-01-31 01:00:07
大阪の一弁理士さん
重要なご指摘を有難うございます。
その点については少し考えがあるので、別エントリにアップします。
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