経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

休眠特許・・・資金源に?

2006-08-17 | 新聞・雑誌記事を読む
 本日も日経金融新聞から。
<休眠特許、中小の新資金源に?>という見出しの記事で、
「中小企業の休眠特許が知財信託を活用することによって、資金調達の手段として活かされる」
という内容です。
「中小企業の休眠特許が知財信託を活用することによって、資金調達の手段として活かされる」
 何となくこう言われるともっともな印象を受けるかもしれませんが、少し考えてみると何やらよくわからない話です。
 まず、信託という制度そのものは、財産を運用のプロに預けるという制度なので、資金調達とは直接的には結びつきません。信託財産等を証券化して販売することによって、はじめて資金調達になるものなので、「知財信託の活用→資金調達」という論理には飛躍があります。知財が資金調達に活かせるかどうかは、知財信託が普及するかどうかではなく、知財に投資したいという投資家が出てくるかどうかということのほうが問題だと思います。
 次に、この記事によると、中小企業の「時間とお金をかけて取得したものの、うまく活用されていない休眠特許」が対象とのこと。その特許が、「ノウハウ・人材不足から侵害されたり、大手と不利な契約を結ばされたりしている」ので、信託銀行に預ければ、「自らは無償で使いながら、煩雑な管理事務を任せられる」とのことですす。
 「休眠特許」なのに「自ら使う」とは一体どっちが本当なの???
 権利行使ができずに侵害されてしまうのは、「煩雑な管理事務」を回避すれば解決する問題なの???
と、どうにもよくわからない話です。記事の見出しの最後の「?」は、実は記者さん自身も「?」と思っていたのかな、などと推測したりして。まあ、あげ足取りをするのも悪趣味なので記事の話はこれくらいにしておいて、

 「知財信託」についての個人的な意見として、この制度は著作権には有効だと思いますが、特許権については普及は難しいと思っています。左脳的な分析は特技懇の記事に詳しく書かせていただきましたが、一番のポイントは、著作権は出来上がった作品について生じるものなので手離れがよく、完成後は他人に委ねるほうがむしろ好ましいことも多いのに対して、特許権というのは事業との関係で権利化したからといって完結するような性格のものではなく、当事者から切り離して管理することが本質的に難しい権利であるということだと思っています。だったら「休眠特許」ならいいじゃないか、という説もあるかもしれませんが、特に中小企業が考えなければならないことは、「休眠特許を活用する」ということよりも、その前に「休眠特許を作らない(事業化の意思がない特許の出願に無駄なお金を使わない)」ようにすることなのではないでしょうか。


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