経営の視点から考える「知財発想法」
これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える
 



 毎年最初のエントリには「年頭にあたり、今年は〜を」みたいなことを書いていましたが、今年は全国あちこち巡回しているうちに花粉のムズムズを感じる季節となってしまいました。遅ればせながら、最近よく感じていることを一つ。
 中小企業の知財は面白い。
 元々、自分は金融出身で知財の本流ではなく、ベンチャーキャピタリストとしてのニッチトップを狙って知財のスキルを身につけるといったスタートだったので、知財そのものに対しては「たかが特許、されど特許」とか、ややシニカルな見方をしてきたように思います。それが、中小企業をテーマにいろいろ活動をしている中で、この切り口は本当に面白いと思うようになってきました。だからもう一度書きます。

 中小企業の知財は面白い。

 何が面白いかというと、中小企業が知財というところに注目して何らかのアクションをとる、具体的には特許でも、意匠でも、商標でも、何らかの知財権を得ようと思って出願するということは、「ユニークでありたい」という意志の表れ、と捉えることができるからです。つまり、中小企業をひと括りにして見てしまうと、立場が弱くて受身である、だから弱きを助く的なイメージでいろいろな助成制度・政策支援があったりしますが、ここに知財というスクリーニングをかけてみると、その中から、ユニークでありたいという前向きな意志をもった企業が浮かび上がってくるわけです。
 昨年ASEANのワークショップに参加した後に書きましたが、ASEAN主要国でのローカル企業の年間の特許出願件数は数百件〜1,000件強に対して、日本の中小企業の特許出願件数は年間3〜4万件。これだけのアイデアが全国各地で生まれ、少なくとも主観的には「私が世界で最初に考えた」と思って手を挙げている。その時に行政の方にお聞きした話ですが、全国のどこにいても特許を出願できるように、公的機関の支援窓口等のインフラが整っていることに、韓国の知財関係者が驚いていたとのことです。これはおそらく、世界でも他の国にはない(あるとしたらドイツくらいか)、日本ならではのユニークさです。技術のシーズという見方をすればそういうことでもあるのですが、それ以上に、「俺たちは言われたことやってればいいのよ」といった受け身の姿勢ではなく、そこにはユニークでありたい、自分で何かを作っていくんだという意志が、全国各地にたくさん存在しているということです。これまで日本を引っ張ってきた大企業の事業モデルに限界が見えてくるなか、今度はこちらが牽引役を担う番なのではないでしょうか。
 そして、その知財の活かし方というのは、マクロでみたときにゼロサムであっては意味がない。権利を振りかざしてA社からB社にお金を動かすだけでは新しい価値の創造、マクロの経済の成長にはつながらないわけで、中小企業から出てくるシーズ、そしてユニークでありたいという意志を、価値の創造、すなわち新しいビジネスに結びつけること。かつて米国が、シリコンバレーに新しい価値の源泉を見出し、その価値をビジネスに、経済成長に結びつけるシリコンバレーモデルを構築したように、日本もこの中小企業のもつアイデアや意志を、日本ならではのモデルで孵化させていくことができないか。知財は、アイデアと意志のスクリーニングツールであるとともに、新しいビジネスを作る核にもなり得るものです。・・・なんて考えると、これはなかなか面白いではないですか。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 すでに読まれた方も多いかと思いますが、本日は‘スティーブ・ジョブズ II’から一つ。iPadのコマーシャルに関する話です(330p.)。

 iPadのコマーシャルはいずれも機器が主役ではなく、「iPadを使ってなにができるのか」がテーマだった。実際、iPadが成功したのはハードウェアが美しかったからだけでなく、いろいろと楽しめる「アプリ」と呼ばれるソフトウェアがあったからでもある。・・・

 少し前だったかと思いますが、孫が誕生日にケーキの上のろうそくを吹く場に、FaceTimeを使って遠くにいる祖父母があたかも一緒にいるかのようにその場に参加できる、みたいなテレビCMが放送されていました。確かに一般的な多くのユーザーからみると、CPUとか解像度とかハードウェアのスペックがどうこうといった説明はどうでもいいことで、それを使って何ができるのか、どんないいことがあるのか、が最も関心のあるところです。
 前回のエントリに書いた3原則のうちの1つ、「‘知的財産権’でなく‘知的財産活動’の力を理解する。」も、実は同じことです。制度がどうなっている、法律がどう改正された、こんな判例が出た、この判例はこう読むべきだ、といったテーマは、それを専門とする業者間にとっては重要な情報であっても、一般ユーザ、すなわち知財制度をうまく使って事業に役立てたい企業の経営者や事業に携わるビジネスパーソンにとっては、そちら側でうまくやっといてくれ、って話です。彼らが必要としているのはそういった機器、ここでいうところの知財制度に関する情報ではなく、「知財を使ってなにができるのか」という情報です。そしてその「なにができるのか」に対する解が「特許権を取得すると差止や損害賠償が請求できます」に止まっていては、「FaceTimeを使うとテレビ電話ができます」といったレベルで答えているに過ぎない。そこからもう一歩踏み込んで、FaceTimeを使うことでライフスタイルがどう変わり、どう楽しめるのか、そこを伝えないと「やってみようか」とユーザの心を動かすことはできません。これがまさに「‘知的財産活動’の力を理解する」、すなわち「知的財産活動に取組むことでどのような効果が生じるのか、ということを相手の心が動くように説明できる」ということです。
 そしてその「どんないいことがあるのか」という部分を、過去に囚われてしまってはいけない。市場が元気で、経済が成長し、他を押しのけてでもシェアをとろうという経済環境下での「いいこと」と、デフレ経済が長期化して、新しい需要を掘り起こして市場を元気にしていかなければならない経済環境下での「いいこと」は異なるわけです。このデフレ経済の下で知財で何ができるのか。そこを掘り起し、伝えていくことこそが、大きな意味で知財を使ってできることであるはずです。

スティーブ・ジョブズ II
クリエーター情報なし
講談社


コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




 最近、企業や支援者向けのセミナーで講師を務める際には、知的財産を経営に活かすためのポイントとして、次の3つを挙げて説明しています。

(1) ‘知的財産権’でなく‘知的財産活動’の力を理解する。
(2) 知的財産の働きをステレオタイプで捉えない。 (=他社を排除するだけではない。)
(3) 囲い込むのは‘知的財産’ではなく‘顧客’。

 その意味するところはどれも共通していて、詳しくは前回のエントリに書いたとおりです。伸び盛りのマーケットで市場シェアを奪い合うというような経済環境にはなく、何より需要の創造が求められるデフレ経済下においては、知的財産権を暴力装置のように捉えるのではなく、違った側面にももっと目を向けていかなければいけない。最近はよく‘北風と太陽’のストーリーに喩えるのですが、「侵害したら大変ですよ」「他社より先に権利を抑えて攻撃しましょう」と北風を吹かすよりも、「自分たちの造ったものを形にしよう」「形にしたものをアピールして仲間を増やそう」と太陽のように温め、会社の体温を上げるといったスタンスのほうが、特にこういう時代には多くの共感を得られるのではないかと。

<お知らせ> 12月16日(水)に千葉で「知的財産を中小企業経営に活かすには?〜先進事例にみる効果的な知財活動の考え方〜」と題してお話をさせていただきます。具体例を挙げながら、上の3つのポイントについて詳しく説明させていただきますので、年末のお忙しい時期かと思いますが、お時間のある方は是非ご参加ください。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 本日は、前回紹介したある中小企業へのアンケート結果に関連して、もう少し考えてみたいと思います。注目した部分についてもう一度。

■ 経営課題 = 「売上の伸び悩み・減少」が約50%
■ 知財権取得の目的 = 「模倣品排除・参入障壁形成」が70%以上


 さて、知財権の取得も含めた知財活動に取り組む理由は、言うまでもなく経営課題に何らかの成果を上げるためです。この原則を、「ここがポイント〜知財戦略コンサルティング」や「経営に効く7つの知財力」では、

 経営課題 → 知財活動 → (経営課題に対する)成果

というシンプルなフレームワークで示しました。
 では、「経営課題」の部分に中小企業の最も典型的な「売れない」という課題を当てはめてみましょう。そして次にくる「知財活動」を、多くの中小企業がイメージしているように「模倣品排除・参入障壁形成」という目的で推進したとしましょう。これで期待していた「(経営課題に対する)成果」は得られるでしょうか?
 答えは、ある場合にはYesであり、ある場合にはNoとなるはずです。
 つまり、「売れない」理由が何であるかによって、期待していた成果を得られるかどうかは異なってくるはずです。
 「売れない」理由には、大きく分けて次の3通りが考えられます。

(a) そもそも商品に何かが足りない。
(b) 商品の良さが伝わっていない。
(c) 模倣品(類似品)に市場を食われている。


 このうち、「売れない」理由が(c)であるならば、「模倣品排除・参入障壁形成」という目的で適切に知財活動を継続すれば、何らかの効果を期待できるはずです。しかしながら、(a)や(b)が理由である場合には、「模倣品排除・参入障壁形成」に囚われていては、「経営課題」と「知財活動」の間に断絶が生じてしまい、「(経営課題に対する)成果」を期待できるはずがありません。参入障壁を作ったからといって、商品そのものが良くなったり、商品の良さが伝わりやすくなったりするわけではないからです(場合によっては閉鎖的になって、より良さが伝わらなくなってしまうおそれもあるかもしれません)。そして、これはあくまで推測で数値の裏付けがあるわけではありませんが、「売れない」という悩みの原因は、おそらく後者にあることのほうがはるかに多いのではないかと思います。
 では、(a)や(b)のケースにおいて、知財活動が役に立つことはないのでしょうか。ここで拙著「経営に効く7つの知財力」で解説している、知財活動に期待できる7パターンの働き(=7つの知財力)について考えてみましょう。7つの知財力の概略は、次のとおりです。

(1) 無形資産を‘見える化’する
 特許出願などの過程で自社の知的財産を他と比較し、その特徴を客観的に理解する助けになる、という働きです。
(2) 無形資産を‘財産化’する
 技術開発などの活動の成果物を企業の権利=企業の財産にする、という働きです。
(3) 創意工夫の促進し、社内を活性化する
 成果を見える化して情報を共有したり、社員からの提案に表彰制度や報奨制度をかませたりすることによって、やる気を引き出し社内を活性化する、という働きです。
(4) 競合者間における競争力を強化する
 知的財産権の排他的効力を活かして競合を抑える、という働きです。
(5) 取引者間における主導権を確保する
 取引のコアになる部分に関連する権利を抑えることによって、価格交渉等のイニシアチブを握る、という働きです。
(6) 自社の強みを外部に伝える
 知財権の存在を根拠にして、自社のオリジナリティを客観性をもってPRする、という働きです。
(7) 協力関係をつなぐ
 知財権を確保しておくことにより自社の権限が明らかになるので、パートナーと連携しやすくなる、という働きです。

では、これらの知財力が、(a)、(b)、(c)の理由にそれぞれ働き得るかを考えてみましょう。

(a) そもそも商品に競争力がない。 ← (1)、(3)、(7) が効く可能性あり。
  まず、(1)によって、自社にどんな知財があり、何を強みにしていくかを理解すること。あわせて、(3)によって競争力を高めるためのネタ出しを活性化すること。そして、(7)により弱点を補い得るようなパートナーとの提携を進めること。
(b) 商品の良さが伝わっていない。  ← (1)、(6)、(7) が効く可能性あり。
  まず、(1)によって、他との違いであり、自社の強みに結びつく知財を客観的に把握し、(6)によって、その強みを顧客や販売代理店などにわかりやすく、根拠をもって説明すること。そして、自社の営業力(説明力)が十分でなければ、(7)によって販売パートナーとの提携を進めること。
(c) 模倣品(類似品)に市場を食われている。  ← (4)、(5)、(6) が効く可能性あり。
 (4)によって、直接的に模倣品の排除に努めるほか、(6)によって、「本家本元・元祖」であることを顧客に訴えていくことも考えられます。(5)でしっかり原価をコントロールして、コスト競争力を強化するという考え方もあるでしょう。

 このように、「売れない」理由にあわせて、知財の力をどのように効かせていくかをよく考え、そこから知財活動を推進していかないと、先に説明したような「経営課題」と「知財活動」の間の断絶が生じてしまいかねません。
 また、上のような整理や、多くの中小企業にとっては(a)や(b)が深刻な課題であることを考えると、実は知財の典型的なイメージである(4)以上に、(1)、(6)、(7)といった働きのもつ意味が大きくなってくることを理解できるかと思います。その背景には、時代の、そして経済環境の変化が大きく影響しているのではないでしょうか。

 高度経済成長期のように需要が旺盛な時代には、しっかりとモノ作りを続けていれば「売れる」ことは期待できるので、その中でどうやって自分のシェアを確保していくか、(4)の持つ意味が大きくなってくるはずです。これに対して、今のようなデフレ経済の下では、需要を喚起することが強く求められるので、他社排除に熱心になるより、どうやって皆で市場を盛り上げていくかといった観点から、他社との協力関係や顧客への説明能力が重要になってくるはずです。また、各々の企業には一層の効率化が求められるため、得意分野への集中が促され、その結果、苦手な部分は他社との提携が必要になるという背景もあります。
 すなわち、至極当たり前のことではありますが、デフレ経済下において、知財活動についても、高度経済成長期と同じ発想で考えていてよいはずがない。古典的な知財の成功イメージに囚われてはいけない、ということです。
 特に、経営資源の限られている中小企業では、ここが重要なポイントになるはずです。需要喚起につながるような、売るための、伝えるための、デフレ時代の知財戦略。新しい時代を作る経営者と新しい時代を支える知財人で、これを作っていこうではありませんか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 今年度は各地の経産局の中小企業向け知財支援事業をお手伝いさせていただいていますが、今日はその中で最近よく考えていることを、自分の頭の整理という意味も含めてまとめておきたいと思います。
 ある事業で行った中小企業へのアンケートに、次のような数字がありました。
・ 貴社の経営課題は何ですか? ⇒ 「売上の伸び悩みor減少」が約50%で断トツのトップ
・ 知財権取得の目的は何ですか? ⇒ 約70%が「参入障壁の形成・模倣品排除」を選択
 この数字は、おそらくこのアンケートに限ったことではなく、一般的なイメージにも近いものだと思います。しかしながら、よく見てみると何か不思議な部分があるのではないか。売上が伸びない原因が模倣品の流通にあるのならば、確かに「参入障壁の形成・模倣品排除」が経営課題に対して有効なのだろうけど、そんなに多くの中小企業が模倣品に悩まされているのだろうか。参入障壁そのものが売上を生むわけではないし、自社で抱え込むがゆえに商品やサービスを知られる機会が制限され、マイナスに働いてしまう可能性だって否定できません。参入障壁を作れば売上が増えるということではなく、「売上の伸び悩みor減少」の理由はもっと他の部分にあることが多いのではないでしょうか。例えば、
 売上が伸びない理由が、自社の商品やサービスの競争力不足にあるならば、商品やサービスをどうやって磨いていくかを考えていかなければなりません。そのためには、社員やパートナー企業などからできるだけ多くの知恵を募っていくことが大切です。
 売上が伸びない理由が、自社の商品やサービスの良さが知られていないことにあるならば、商品やサービスの良さをどうやって伝えていくかを考えていかなければなりません。そのためには、商品やサービスの特徴を客観的に把握し、わかりやすく伝えること、直接顧客に伝えるだけでなく、顧客とのインターフェイスになる販売代理店や社内の営業マンにも伝えていくことが大切です。
 こうしたことが売上が伸びない理由になっている場合に、知財権の取得=「参入障壁の形成・模倣品排除」という構図にとらわれたままでは、経営者の悩みの解決にはなかなかつながらず、経営者が「知財やってもしゃあないわ」と考えてしまうのも当然の帰結です。「売上の伸び悩みor減少」という本来の悩みに対して、自社の商品やサービスを磨きあげることや、商品やサービスの特徴をわかりやすく伝えることを通じて、どうやって成果をあげられるかというところから考えると、知財権を取得するプロセスを通じて自らと他との違いを客観的に認識すること(「経営に効く7つの知財力」の第1の知財力)や、提案制度等を通じて社員のアイデア創出を活性化すること(「経営に効く7つの知財力」の第3の知財力)や、自らの強みを知財権の存在によって客観的に伝えること(「経営に効く7つの知財力」の第6の知財力)のもつ意味が、参入障壁の形成や模倣品排除ということ以上に、より重要になってくると思うのです。具体的には、まずは自社の商品やサービスの特徴や足りない部分を客観的に把握するために、社員を巻き込みながら知財権を含めた情報を整理する。そして、不足する部分、強化すべき部分のアイデアを広く社内で募り、「自社のオリジナル商品・サービス」を皆で作っていくための仕組みを整える。そして、自社の商品やサービスの特徴を社内で共有するための資料、顧客に説明するための資料を、知財権の情報でインパクトをつけながら、社員と一緒に作り上げていく。こういうプロセスが、「売上の伸び悩みor減少」という課題に立ち向かっていくための知財活動の基本形になるのではないでしょうか。

 話は少し変わりますが、様々な中小企業の経営者にインタビューしていて、伸びている企業と伸び悩んでいる企業の違いに、自社の商品やサービスの特徴、他社の商品やサービスとの違い、自社の強みやこれからやろうとしていることを、経営者がわかりやすく説明できるかどうか、ということがあるように感じることが少なくありません。特徴や違いが「有るか・無いか」ということではなく、「説明できるか・説明できないか」、という違いです。説明できるから、顧客は商品やサービスを理解し、購入するかどうかを判断することができるのです。説明できるから、社員は経営者と会社を理解し、ついていくかどうか、頑張るかどうかを判断できるのです。説明できるから、取引金融機関は会社を理解し、支援するかどうかを判断できるのです。コンサルのように会社を理解することが仕事でない限り、あるいは相手の関心とたまたまピンポイントで一致していたということでもない限り、普通は相手の方からわかりにくい説明をわざわざ掘り下げて、理解してくれようとすることはないでしょう。良いものがありながら、説明が不十分で理解されない(特に多いのは各論の説明に熱心になってしまって全体像がよく見えないというパターン)ということから、売上が伸び悩んでしまっているケースは少なくないように思います。
 ゆえに、やはり知財活動においても、情報を整理し、わかりやすく伝えるということを意識したプロセスが、多くの中小企業に有効ではないかと考える次第です。考えるだけでなく、そういうふうにやっていきます、ということで。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 本日は、今月開催されるセミナーのお知らせです。

11月10日(千葉) 資金供給の場面における知的財産の考え方 〜価値評価との関係性〜
 金融関連の知財セミナーでは、価値評価、知財権担保、証券化や信託といった個別のテーマが対象になることが多いですが、知的財産と資金供給(資金調達)の関係の全体像が掴めるような解説と、金融機関がおさえておきたい知的財産制度の勘所についてお話させていただく予定です。

11月14日(京都) 知的財産を経営に活かすには?〜中小・ベンチャー企業の事例から考える経営に効く知財活動の実践法〜
 昨年来各所でお話させていただいているテーマで、拙著「経営に効く7つの知財力」だけでなく、「知的財産経営プラニングブック」のコラムで紹介した企業の事例もいくつかご紹介させていただきます。

11月24日(新潟) 経営・事業に活かす知財活動〜知財を経営に活かす経営者のために〜
 こちらも京都と同じテーマでお話させていただきます。

11月25日(東京) ITベンチャー、企業戦略と特許
 日本IT特許組合の「ITベンチャーのための実践経営塾」で、トップシェア企業の経営トップ2名のご講演の後に、ITベンチャーにとっての特許の意味と可能性を少しばかりお話をさせていただく予定です。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 経営情報誌「オムニマネジメント」(2011年8月号)にご掲載いただいた原稿、「知的財産を活かして競争力を高めよう」を以下のWebページに公開しました。

  論文・記事アーカイブス http://www.ipv.jp/activity/archives.htm
  「知的財産を活かして競争力を高めよう」 http://www.ipv.jp/images/archives/omni1108.pdf

 論文には長々と書きましたが、要するに(といってもちょっと長いですが)こういうことです。

 「知的財産を活かす」とかよく言われるけれども、企業(特に中小・ベンチャー)の経営者は何をどのように考えればよいのだろうか?

 知的財産というと、技術やブランドを守る、とイメージしやすいかと思いますが、企業の競争力強化という目的を考える場合、大事なことは「技術やブランドなどの知的財産を囲い込むこと」ではなく、「技術やブランドなどの知的財産を活かして『顧客を囲い込むこと」です。では、知的財産がどうやって顧客の囲い込みに結びつくのか。
 技術やブランドなどの知的財産は、自社が工夫して磨き上げてきた他社との違い、顧客に対するセールスポイントとなるものです。
 知的財産に力を入れるということは、第1にそれをしっかりマネージメントする(権利を取得したり情報を管理したりする)ことによって、顧客にアピールする自社の特徴に形をつけること。これをやらないと、どこが自社の特徴なのか、社内で認識を共有することができないし、自社の強みを「会社の財産」として保有することもできません。また、強みに形をつけようとする過程で誰が貢献したかも明らかになってくるので、社員の成果を評価し、ヤル気を引き出すことにもつながります。
 こうして形をつけた知的財産は、知的財産権を得ることで競合他社の排除に結びつくほか、サプライヤーとの交渉も有利になるし、「わが社のオリジナルですよ」とPRすることにも使える。形をつけて権利にしておけば、他社と一緒に使いやすくもなり、自社だけで足りない部分をパートナーにカバーしてもらう可能性も広がる。競合他社を排除するというだけでなく、形を付けた知的財産=自社の強みを顧客に届けるために、様々なオプションを得ることができるということです。
 ステレオタイプの知財の成功イメージ(他社を排除して市場独占・ライセンス料でがっぽり儲ける)に囚われず、こうしたオプションの多様性を意識して、「顧客を囲い込む」という目的のために最適の方策を探ること。これがまさに「知的財産を活かす」ことの本質と言えるでしょう。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 時が経つのは早いもので、銀行を辞めて独立してから昨日でちょうど10年となりました。心技体、どれが欠けてもやっていけないのは勿論のことですが、いろいろ自分で動いてみて感じるのは、特に「心」の影響が大きいということです。「気」というものが周りに伝わるのか、前向き・外向きな気持ちで動けているといろんなチャンスをいただけることが多い。後向き・内向きになってしまわないよう、気を付けなければいけないと改めて思う次第です。

 さて、今年度も中小企業の知財支援関連のいくつかの事業でお声掛けをいただき、アンケート調査や委員会での議論などがスタートしました。こうした機会に感じることは、「知財活用」という言葉に表れているように、どうも「知財」というと「創造→保護→活用」、すなわち「発明をして特許を取り、市場の独占や他社へのライセンスでお金を稼ぐ」というステレオタイプの思考から抜け出せないことが多い、ということです。だから、具体論になると、模倣品対策とか特許流通=ライセンス促進といったテーマに向かい、その面での効果が見えずに「知財をやっても・・・」という結論に陥ってしまうか、そこを重点課題と捉えて対象となる領域を狭めてしまいがちです。
 しかしながら、経営者が目指しているのは「会社をよくする」ことであって、「知財を活用する」ことではありません。「独自の製品やサービスを展開し、かつ知財活動にも積極的に取り組んでいる元気な中小企業」の経営者にお話を伺うと、経営者の意識は「知財を活用している」のではなく、「事業を運営し」「会社を経営している」のであって、その中で「知財活動にも効果的に取り組んでいる」というケースが殆どです。ステレオタイプのイメージ通りに知財が活用され、知財が目に見える形で利益を生んでいるかということよりも、知財活動が会社の強みを固めていく上で役に立っているかどうかが問題なのです。「知財活用」という言葉に引きずられ、権利そのものが利益に結びつくことをイメージしすぎてしまうけど、ほとんどの場合、会社に利益をもたらすのは権利よりも人の力です。知財活動がその「人の力」を引き出すのにどのように役立ち得るのか、例えば、ナベルさん(「経営に効く7つの知財力」80-83p.)は自社の強みを知り提案力を磨くことに知財活動を活かし、しのはらプレスサービスさん(「ココがポイント!知財戦略コンサルティング」83-91p.)は知識の創造と共有を目的に知財活動に力を入れている。テンパール工業さん(「会社のプライド」のエントリ参照)では「営業も含めた社内の士気に関わる問題」とのお話がありましたが、知財活動が「規模は大きくなくても、うちの会社はこの点に関しては一番だ」というプライドの裏付けとなっているというケースもあります(これは中小企業に固有のケースで大企業とは異なりますが)。ここをうまく説明するのは難しいのですが、そういう企業は、どこかが、ちょっと違う。その違いは、たぶん社内に「うちの会社は、ちょっと違う。」というプライドがあって、それが社内で人の力を引き出すことに加えて、周囲にも良い「気」を出して様々なチャンスに結びついているのではないか。おそらく知財活動は、そこを支える大事な役割を果たしているということなのだと思います。つまり、「権利」がお金を生むというステレオタイプの効果だけでなく、「活動」が人の力を引き出して結果的にお金にも結びつくという効果を見ていかないと、中小企業が知財に取り組むことの本当の意味は見えてこないのではないでしょうか。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




 日経ビジネス最新号に「企業に広がる『SNS疲れ』」という記事が掲載されています。企業はソーシャルメディアでの不規則発言や炎上など「SNSリスク」への対策に人・時間・お金を割かれる一方で、期待しているような宣伝効果は本当にあるのか、といった内容です。結構考えさせられる記事ですが、その中でソーシャルメディアの活用を支援してきた専門家の、「ソーシャルメディアがすごいすごいと発言している方は、その多くが(ソーシャルメディア自体を収益源とするなどの事業を担っているがゆえの)ポジショントークです」いう発言が紹介されています。
 15年ほど前に知財担保融資の立上げを担当していた頃、「担保評価のための知財価値評価、うちに任せてください」なんて売込みがあった後に、「彼らは評価を請け負えばそれで稼ぎになるけど、実際にリスクを負うのはこちらですし。価値評価ができるって言うんだったら、一緒にリスクを負担するくらいの覚悟は見せて欲しいですね」なんて上司に話したような記憶が蘇ってきましたが、そこを収益源とする業者が「すごいすごい」と主張してもどうしてもポジショントーク(狭義には金融用語ですが自分のポジションに有利になるようことを狙った発言という意味で)と思われてしまいがちです。
 そういう意味では、知財業務を請け負うことを業とする我々の立場から「経営者に知的財産の重要性を理解してもらうことが・・・」なんて述べることには、個人的にはとても違和感があります。重要かどうかを判断するのは経営者であって、我々ではない。我々にできること・すべきことは、「知的財産の重要性を理解させること」ではなく「知的財産の様々な働きや可能性を事実に基づいて的確に説明すること」、そしてその働きや可能性を引き出すことであると。まぁ、営業とはそんな甘っちょろいものではない、っていうのが現実なのかもしれませんが。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 先週末のある会合で、日経電子版のコラム‘マーケット反射鏡’等を執筆されている前田昌孝氏の「クールジャパンへの期待」と題したご講演を拝聴しました。6月14日付の同コラムでも「日本再生のカギ握るクールジャパン」と題してこのテーマが取り上げられていたのですが、「クールジャパン」というと何かアニメなどのコンテンツに矮小化された話が多い中で、このコラムの「・・・商品やサービスを高く売って日本に大きな付加価値をもたらすためには、大きな前提がある。日本人のライフスタイルが世界中のあこがれの的であり続けることだ。」「・・・女性が美しさを保つためには心と体を常に磨き続けなければならないように、『クールな状態』を維持するために、相当の努力を続けなければならないのではないか。『日本人の生活なんて取るに足らない』と思われたとたんに、日本の文化は安売りされる恐れがある。」という指摘には、まさにその通りと感じました。少し前の話なので細かいところまでは覚えていないのですが、日経ビジネスのクールジャパンに関する特集に外国人の覆面座談会みたいな企画があり、その中で「日本のオタク文化のどこがクールなんだ。それを支持しているのは本当に少数派で、それを国をあげて『クール』って売り込もうとしているというのは、普通の人間から見るとほとんどお笑いだ。」といった発言を目にした際に少々ショックを受けたことがあるのですが、何が日本の「クールさ」であるのかを発信する側もよく理解しておかないと、こういった誤解(?)を招くことになってしまいかねません。
 講演の中では、日本製品の「かっこいい・センスがある」というイメージが特にアジアでは韓国製品に押されてしまっている一方で、まだ「高品質」というイメージでは圧倒しているというデータとあわせて、日本のどこがクールかという点について「『日本物語』は日々の私たちの生活から」(日本における様々なサービスの正確さや丁寧さ、安全性など)とご指摘されていたことが印象的でした。
 私見ですが、Appleのようなデザインのセンスや、韓国のような意識的・計画的なイメージ戦略をそのまま真似ようとしても、それは「日本人のライフスタイル」から生まれたものではないし、「日本ならではのクールさ」にはつながらないのではないかと思います。やはり、色々な分野での「丁寧な仕事」の積み上げこそが、「日本人のライフスタイル」から生まれる「日本ならではのクールさ」の本質なのではないでしょうか。そして、その裏づけとなっているのが「技術」なのではないか。以前に特許庁のプロジェクトで、漆喰をタイル化した‘LIMIX’を開発販売されている田川産業さんを訪問した際に、同社の行平社長から「デザインについてもいろいろ試行錯誤しているが、技術を追求するうちに必然的なデザインが生まれ、必然的なデザインこそが最も美しい」というお話を伺ったことが、今でも印象に残っています(「ココがポイント!知財戦略コンサルティング」36-37p.)。ウォシュレットの心地よさも然り。寿司の美味さや美しさも然り。日本庭園の美しさも然り。イチローのバッティングフォームの美しさも、そのイチローが「最も美しい野球選手」と称した元阪急ブレーブスのエース・山田久志の流れるような下手投げのフォーム然り。科学技術のみに止まらず、技能やサービステクノロジーまで含めた「広義の技術」を追求した先に、日本ならではの「クールさ」が生まれるのではないでしょうか。そうやって考えてみると、「クールジャパン」として括られるべきものは、コンテンツ、ファッション、食といったアウトプットの形ではなく、それらを創り出す極められた技術に裏付けられたプロセスにあるのではないか。コンテンツはコンテンツでも、綿密な研究と優れた技術、さらに強い意志のものと生み出された手塚治虫や水木しげるの作品は、コンテンツという切り口で共通するアキバのオタク文化よりも、むしろバンパーの裏まで磨くといわれる日本の自動車産業と共通する部分のほうが多いのではないか。日本人が各々の持ち場で、丁寧に、考えながら仕事をして、技術を磨き上げる。それこそが「クールジャパン」を推進することにつながるのではないか、なんて思う次第です。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


« 前ページ 次ページ »