この時期になると山に白百合が咲く。その香りで半世紀も前の夏を思い出す。友人の家に泊まり、一山を超えて由良の海岸に向かった。山の中ではヒグラシの鳴き声かして、咲いていた白百合の香りがした。山道を抜けて国道に出ると、我々はトラックでヒッチハイクをして、由良まで連れて行って貰った。載せて貰った運転手の顔はすっかり忘れてしまったが、そのお礼はヒッチハイクの若者に還元している。
記憶とは不思議なもので、特に匂いは脳の深層から引き戻す。それはパノラマのように映像として蘇ってくる。有り難いことに、記憶の大部分は楽しかったことが多い。人間生きていれば様々なことがあり、死にたいと思う程辛いことだって経験する。そんな苦しい思い出は無理に思い出さない限り出てこない。
このユリは貰い物だが、白百合は国道47号線の道路脇に沢山咲いていた。