赤い彷徨 part II
★★★★☆★☆
永田充不安クラブ♡
 



 最近巷では一定のブームになっている感さえある地政学ですが、当方もご多分に漏れず流行りに乗って手に取ってみました。本書ではその地政学について「地理的な条件が国家の政治・経済・軍事に与える影響を研究する学問」と定義づけています。そして地政学を学ぶための第一歩は世界の歴史を知ることとした上で、日本、中国、ロシア、米国、英国、欧州な各国・地域を、主要な歴史的フェーズごとにそれぞれ地図を解説して参照させばがら解説していく内容になっています。ですので、本書の冒頭でも宣言されているとおり地政学の教科書というよりは「地政学の勉強のために必要な歴史を概観するテキスト」になっていると言えそうです。

 ただ、とは言いながらも、「ランドパワー」(露独仏中などの大陸国家)、「シーパワー」(英米西蘭日などの海洋国家)、「ハートランド」(ユーラシア大陸でシーパワーの影響が及ばないエリアのことで、英国の地理学者マッキンダーがこのハートランドを制する国家が世界を制するとしたエリア)、「リムランド」(ハートランド外縁で直接海洋にアクセスできるエリア)、「チョークポイント」、「シーレーン」、「不凍港」などいわゆる「地政学用語」とされているワードの解説も散りばめられていますので、少なくとも地政学の基本用語くらいは勉強できる内容にはなっています。

 本書のコンテンツのうち、以下の2点についてそれなりに消化できたことが個人的な収穫でした。

(1)戦前の満州国をめぐる日本、中国、ロシアと列強各国との間の地理を中心にした相互関係。1931年の満州事変以降日本が南へ南へと戦線を拡大していき、最終的に大国アメリカと対立して開戦にまで至ったその理由について、例えばいわゆる援蒋ルートがどこにあったから日本はそれを断ち切るためにどこに侵攻したとか、そういう地理的な側面でのみた当時の状況や関係各国間の関係

(2)パレスチナ問題について、第1次世界大戦時の英国の三枚舌外交、いわゆる「アラビアのロレンス」に端を発した中東の混乱の象徴としての戦後のイスラエル建国と、それ以降の歴史的経緯、そして4次にわたる中東戦争等のたびに変化したユダヤ人とパレスチナ人それぞれの勢力地図(占領地や居住地)の推移、これまでニュースでは耳目にしてきた地域名の正確な位置(「ヨルダン川西岸」、「ガザ地区」、「ゴラン高原」など)といったもの

 そもそも、この「地政学」と呼ばれるものそれ自体が本当に独立した学問として確立しているものなのか、といった議論はあるのだろうとは思いますが、いずれにしても本書は中高生や歴史を苦手にしている方を想定してかかれたものですので、非常に読みやすくてサクサクと読み進められると思います。ただ、1点だけ苦言を呈するなら、やや誤字脱字が多いのがちと気になりました。

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