紀伊半島一周の旅・・・青春18きっぷシリーズ(その㈣)
串本1448発
串本まで東南を目指していた列車は、串本で方向を変えた。
本州最南端である。いつの間にか紀伊水道は終わり、熊野灘になっている。
線路は相変わらず海と山との狭いところに行く。
(拙者) 「なるほど。なるほど。」
(又丸) 「どんな本を読んでいるのですか」
(拙者) 「紀州の民話。旅先ではその土地の民話が面白いのです。髪長姫の話、知りませんでした。」
(又丸) 「どんな話ですか」
(拙者) 「むかし、むかしの話です。」
・・・髪長姫の話・・・
「むかし、むかし、九海士(くあま)の早應(はやたか)と渚(なぎさ)の村長夫婦には子供がいませんでした。
毎年、神様にお願いしていました。そのかいがあって、やっと、玉のような女の子が生まれました。
しかしその女の子にはなぜか髪の毛がありませんでした。両親は心配して、いろいろ試みましたが、効き目ありません。
ある年のことです。海の底がチカチカと光っていました。その年は大変な不漁の年になりました。
妻の渚はなにか前世の因縁のためであろうと考えます。そして海の中へ潜っていきました。やがて、光るものを抱えて戻ってきました。
それは金の仏像。そして夫婦はこの仏像の庵をつくり、丁重にお祀りしました。
この浜ではこの年たくさんの漁がありました。
ある夜のことです。村長の夢枕に観音が現れ、
『私は海から戻ることができた。願い事があれば、何なりと申すがよい。』
『何もありませんが、娘の髪がないことが不憫です』
と答えたところ目が覚めました。
それから娘の髪は美しく生えてきました。
娘はさらに美しく成長しました。
ある日娘が髪を梳いていると、一羽の雀が娘の美しい髪の毛をくわえて飛んで行ってしまいました。
都ではある日右大臣「藤原不比等」が庭の木から垂れ下がっている美しい髪を見つけました。
『この美しい髪の毛の女性はどんな方だろう。必ず探してくるように』
と家来に言いつけました。
多くの家来の一人がこの娘を見出し、都に連れてきました。
不比等は大いに喜び、「宮子姫」と名付け、早速養女にして宮中に宮仕えさせます。
時の帝(文武天皇)の后になりました。聖武天皇の母です。
宮子姫は九海士のことを忘れませんでした。
観音仏をお祀るために寺をたてました。
それが『道成寺』です。」
(又丸) 「女性の髪は命ですね。又丸の髪は一家離散です。」
(拙者) 「拙者の髪もバック・オーライですよ」
紀伊勝浦1534
今日のお泊りは紀伊勝浦のホテル 1泊2食で5,000円なり。
駅前の旅館で温泉付き ホテルの部屋の窓から列車は全部見ることができますよとホテルの方は言っていました。
鉄ちゃんの最高のビュー・ポイント
しかし下車せず那智まで行く。
那智1540 下車。
那智駅前から那智山行きのバスがあるはずである。
(次回へ続く)