医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガン幹細胞でのPD-L1発現の増大について 栄養医学ブログ  日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-10-29 14:51:31 | 健康・病気

腫瘍細胞に対する免疫システムで現在わかっているのは、PD-1/PD-L1経路で、PD-1(T細胞に発現するたんぱく質で、PD-L1の受容体)とPD-L1(ガン細胞やガン幹細胞に発現するタンパク質)が結合し、ガン幹細胞から免疫を司るT細胞へ信号を送って、T細胞の働きを抑制することにより、免疫能が抑制され、ガン幹細胞の免疫逃避機構が働き、ガンの増殖や転移が行われる、と考えられます。したがって、PD-L1とPD-1の結合を阻害出来れば、ガン幹細胞の活動を抑制できる可能性が有り、現在、ビタミンや植物の成分、抗酸化栄養素、ハーブなどのPD-L1阻害作用が研究されています。また、Dr L Boominathan博士の研究によると、デルタトコトリエノール(ビタミンE族の一つ)が、ガン幹細胞に発現するPD-L1の発現を阻害し、PD-L1とPD-1の結合を邪魔し、ガン免疫逃避機構が働かなくし、T細胞の細胞毒性活性を高めるという研究もあります。なお、ガンに有効なビタミンDやビタミンC点滴のPD-L1阻害作用の有無の研究も必要と、考えられます。

ところで、Wu Y博士らの研究によると、乳がん幹細胞と結腸ガン(大腸がん)幹細胞は、これらの表面マーカーにより確認でき、フローサイトメリイー分析装置を用いることにより、、PD-L1の発現は、非幹細胞性ガン細胞と比較して、乳がんと結腸ガンのガン幹細胞において最も高い値でした。また、ウエスタンブロット分析法(電気泳動法によりタンパク質を検出する方法)によるガン幹細胞のPD-L1タンパク質の検出において、これらのガン幹細胞のPD-L1タンパク質の増加が確認できました。しかし、PD-L2のごく微量が、乳がんと結腸ガンの幹細胞において検出されました。これらの事から、PD-L1の阻害が、PD-1/PD-L1経路を遮断できる可能性が有り、ひいては、ガン幹細胞の免疫逃避機構を働かないようにすることが考えられます。そして、免疫機構は大変複雑ですが、PD-1/PD-L1経路の阻害もまた重要と考えられます。

References
Wu Y, et al. Increased PD-L1 expression in breast and colon cancer stem cells. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2017 May; 44(6):602-604
Dr L Boominathan PhD. Vitamin-based PD-L1 pathway blockade

 

 

enhances the efficacy of cancer immunotherapy. Pulse|Linkedln. January 1,2017
Norde WJ, et al. PD-1/PD-L1 interactions contribute to functional T-cell impairment in patients who relapse with cancer after allogeneic stem cell transplantation.Cancer Res. 2011 Aug1