村上春樹を英語で読む

なぜ、こう訳されているのかを考える。

現実と比喩?

2016-10-15 12:48:42 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下はその最後の文の英訳である。

(1)沈黙がある。まだ文字が彫られていない石版のような沈黙だ。
「疑いの余地はない?」とタマルは言う。
「そのことは最初からわかっていた。テストはただの裏付けに過ぎない」
タマルは指の腹でその沈黙の石版をしばらく撫でている。
Tamaru silently rubbed the lithograph for a time with the pads of his fingers.

「指の腹」がthe pads of his fingersと訳され、「腹」がthe padsと訳出されている。一方、 次例では「指の腹」が訳出されず、「指の腹で鼻をこすった」がrubbed her noseと訳されている。『1Q84』から。

(2)安達クミは指の腹で鼻をこすった。そこにまだ鼻があることを確かめるみたいに。
Kumi rubbed her nose, as if checking to see if it was still there.

(1)と(2)の英訳の違いは(1)が想像上のことであるのに対して、(2)は現実のことであるからではないか、というのが筆者の仮説である。
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