村上春樹を英語で読む

なぜ、こう訳されているのかを考える。

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「小説の語り手が書けること」の日英比較(223)

2016-11-05 12:23:14 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下はその英訳である。

やがて牛河は息を呑んだ。そのまましばらく呼吸することさえ忘れてしまった。雲が切れたとき、そのいつもの月から少し離れたところに、もうひとつの月が浮かんでいることに気づいたからだ。
Ushikawa gulped. For a while, he forgot to breathe. Through a break in the clouds, there was another moon, a little way apart from the first one.

「気づいた」が訳出されていない。これは、原文の「気づいたからだ」は牛河の視点での発言であるからである。
(比較例)
しかしやがて牛河は、自分がこの光景に既視感のようなものを感じていることに気付いた。
Ushikawa began to have a sense of déjà vu.

この場合の「既視感のようなものを感じていることに気付いた」がhave a sense of déjà vuと訳されているが、これは語り手の視点での描写である。
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