道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
いいたい放題、自分のための備忘録。
本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

映画「MUSA-武士-」

2017-07-23 14:30:16 | 映画感想

(共にDVDソフト 左=日本公開版133分 右=オリジナル版154分 )
キム・ソンス監督

公開年を調べると2003年とある。もう14年前に劇場で見たのかと感慨。
当時、期待を上回る面白さに度肝を抜かれた。それ以来、ずっと傑作だと思っている。

1375年、建国されたばかりの「明」高麗より派遣された使節団は間諜の疑いをかけられ拘束、砂漠の流刑地へと流される。途上、「元」の騎馬兵の襲撃にあい監視役の明兵は全滅。「高麗人に恨みは無い」元軍は立ち去る。若いチェ将軍と弓を扱う下級兵士だけとなった高麗人達は、砂漠に取り残された。

故郷に帰ろう、わきあがる兵士達の声の中、チェ将軍は考える。おめおめと故郷に帰っても辱めの中に生きねばならぬ。元軍が護送してい輿の中、助けを乞う印をチェに託した人物、おそらく明の貴人を救出し送り帰せば、間諜の疑いは晴れ、使節の任務遂行がかなうだろう。生きる道はそこにある。
一方、死の床にあった高級文官の奴隷ヨソルは、文官の遺言によって自由とされる。彼こそは恐るべき槍術の達人である。
元軍襲撃!チェ将軍の無謀な計らいは、ヨソルと、下級武士の「隊正」弓の名手チンリプ(演アン・ソンギ)の鬼神のごとき働きでからくも成功する。助け出されたのは、明初代皇帝、朱元璋の娘、芙蓉であった。

芙蓉姫を演じていたのはチャン・ツィイー。とくに前半にみる傲慢さ、それが苦難を経て変化する様など見事だったと思う。黄河沿いにある古城までたどり着けば、明の軍隊がいる筈、自分を送り届けてほしいとチェ将軍に命ずる。この場にいたって、命令をきく義理はないのに従うのは、姫へのほのかな恋慕の情か、打算か。
チェ将軍の若気は、このあとも次々に危機をまねくことになる。

姫奪還の為、高麗一行の前に立ちふさがるのはランブルファ将軍が率いる精鋭。この将軍が誠に傑物。部下を重んじる一方、狼のごとく非情である。奴隷ヨソルの槍術の冴えを一瞥で見抜き、彼を自軍に迎え入れんと欲す。蒙古の滅びを予感しており、もっとも大切なのは人材であると言う男だ。
ちなみに僕は気がつかなかったが、映画の題名にもなっている「武士」という言葉は、蒙古側が高麗人を評し「武士のような生き方だ」と言うというふうに一度だけ現れるらしい。本来韓国には無い「武士」であり不愉快ではある。あえて忖度すれば、蒙古には元寇のころの日本武士の働きが言い伝えられていた、ということなのだろうか???

元軍によって次々に焼き払われる村。そこから逃げてきた漢族の女性と老人、子供達。彼等をすべて「助けよ」という姫の命令により大所帯になった一行は、ひたすら古城を目指す。
たどりついた、彼の地は…。そして、最後の決戦!



劇場で見たのは短縮版なので、話の繋がりが不自然なところがいくつかあったのだが、今回は長尺版DVDで鑑賞したのでわかりにくさはなかった。ひきかえに画質が悪いこと悪いこと。
14年を経た目線でつまらなかったらどうしよう、と思いもした。TVドラマ的な感じもしないではないが、いや、面白かった。よかった。堪能した。

大国に挟まり翻弄される小国高麗人の悲壮、そして望郷の念が泣かせる。様々な民族と文化が接点をもつ砂漠を舞台に、こんなエキゾチックなアクションが作れるのか。初見時はまずそこに感動。日本の時代劇では表現できない大きな可能性が眠っていると思えた(しかし、14年たってこの作品を越えるものがいくつあっただろうか)

それから「この設定」で、描けるドラマはすべて描きつくそうとうでもいうような、作り手の迫力だ。たしかに冗長さと裏腹であり、特にまとまりと言う点では批判の余地があるのかもしれないが、登場人物それぞれに、煩悶と転機を与え、ドラマを作っている。だからこそこの長いドラマを飽きさせない。情けない通辞とその弟分にまでちゃんとした見せ場がある。

自らの才能の無さにうちひしがれた将軍が最後の闘いを決意する、無邪気な好奇心が大惨事を招いたことを初めて悟り動揺する姫、自分をさげすんだ人々の待つ死地に赴く奴隷ヨソル。シビれる場面がいくつもある。ほれぼれする。
やっぱり傑作だ!!


気になる点もある。初見時も思ったが、鷺巣詩郎氏による音楽が、良いアンサンブルの場面もあるけれど、正直なのところあまり似合っていない。エヴァンゲリオン劇伴を想起させるような節回しが出てきたりするとどっちらけとなる。伝統音楽サムルノリの鳴り物でも盛大に鳴り響かせればよかったのに。絵作りも今見れば多少平板かもしれない…。

それから奴隷ヨソルを演じたチョン・ウソンは、今年公開の同じくキム・ソンス監督「アシュラ」に登場。市長と検事の間に板挟みの悪徳刑事ドギョンを演じている。本作の明と元の板挟みというのも一つの原点なのかもしれない。







ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 漫画「サトコとナダ」1巻 | トップ | 映画「追憶」 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画感想」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。