道楽人日乗

ツイッターのまとめ。本と映画の感想文。
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本読むのが遅く、すぐ忘れてしまうので。

映画「お嬢さん」

2017-03-06 20:19:40 | 映画感想

パク・チャヌク監督

がサラ・ウォーターズの「荊の城」を、19世紀半ばのロンドンから日本統治下の朝鮮におきかえ映画化。原作未読。貧民街の泥棒集団で育った娘スッキは、藤原伯爵を名乗る詐欺師に、令嬢秀子を誘惑し相続分を奪う計画に加担しろと命ぜられ、侍女・珠子として上月家の豪邸へあがる。

なるべく前情報無しに見るつもりが原作者はたしか○○と聞いたっけなんて思い出した為、意外な展開が、まだ底があるぞ程度には見えてしまう。しかしこの映画の魅力はそんなことより和洋折衷の大邸宅などの怪しげな美術、えげつなく無残すぎて笑ってしまうエログロナンセンスだ。(恐怖の地下室の可笑しさ) ゴシックロマンの世界がこんなにも見事にアジアに置き換えられているのに感嘆するしかない。画面構成の美しさ、奇っ怪さに堪能する。

しかし、ついこの間見た「京城学校 消えた少女たち」でも日本統治下の、異世界的な映像を見たばかり(この36年間がファンタジックな幻想生活を描きやすい時代なのだろうか)パク・チャヌク監督なら、もっと先を見せてほしいと思ってしまう。三幕構成でどんでん返しを繰り返す語りも、それほどまでには尖っていない。期待しすぎだろうか。(ちなみに、木造の洋館は韓国映画「箪笥」「ベストセラー」に登場する、「いつものあの建物」ではなかった)

もうひとつ、放送禁止的エロ言葉が連発されるので、言葉責め的ドキドキ感にひそかに身もだえしてしまう。子役がオ○○コなんてずばずば言うもんだからなおさらだ。いかに日常での放送禁止言葉狩りが、わが身に染みついているのかと思う。
秀子を演じたキム・ミニは容貌と体ともに素晴らしく綺麗に撮られていて一瞬松たか子にも見える。ええっ35歳なんですか。珠子を演じたキム・テリも綺麗だが(こちらは26歳)、化粧をおさえ演技もあわせて下女感を出していた。
男たちは妄想に溺れ身を滅ぼし、女達は実利肉体に生きる。悲惨なのだけど、そのあざとさに大笑いだ。コメディ的要素もあると思う。

最後に、もうひとつ。主題にかかわること。
冒頭の字幕が早すぎ、設定を追うのに苦労する。ドラマの7割ほどをしめるかもしれない日本語会話が発音が変すぎて聞き取りにくい。だが早々に主な登場人物はほぼ全員、自分の立場を偽る何らかの「偽者」であることがわかってくる。偽者達が嘘をつき偽物を取引するという状況だ。とすると変な日本語も主題の一環と取れなくもない気がしてきた。

韓国の観客は統治下での「偽者」のドラマにどんな含意をくみ取るのだろう。監督の意図はこんなところにもあるのだろうか。
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