道楽人日乗

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映画「虐殺器官」

2017-10-30 08:50:45 | アニメ感想

原作 伊藤計劃  脚本・監督 村瀬修功

原作読了時は膨大な蘊蓄に煙に巻かれたようだったが、この映画でやっと納得できました。近未来のこんな異様な戦場を描いた作品を他に知らない。場面はおもに胸くそ悪い戦闘の残虐と、延々と続く哲学的?会話劇の2種類である。驚いたことに今回のアニメでは、言いたい事が何となくわかるではないか。脚色の交通整理が見事だ。
本作の脚本と監督は、哲学的SFアニメを装いながら後半グダグダになった2006年のTVアニメ「Ergo Proxy」の人か。今回は良かったです。

ジョン・ポールなる人物が、おそらくメディアを駆使し、人間の本能として存在する同族をコロす本能を刺激する言語(おそらく文章)を限られた社会に蔓延させ、内戦を誘発するという。彼に対する暗殺指令を受けた主人公に、彼の秘密を狙う勢力が立ちはだかる。虐殺文法なるものが存在するとしてそれはどういう表現手段で発せられるのか、原作でもよくわからなかった。
言語が思考を規定する?そんなことがあるのだろうか。あったとしてどのような手段でその呪文が発せられるのかが見えてこない。メディアに載ったワンフレーズで人の本能が操られるものか? そこがこのお話のウィークポイントだと思う。
「初めに言葉ありき」の西洋では受け入れられやすいだろうか?日本にも言霊信仰があるが。
ジョン・ポールを突き動かす動機は何なのか。衒学の果てに誠に身勝手な理屈が立ち上がり、西欧支配の歴史を垣間見せる。ハリウッドで映画化の話があるそうだが、この辺の理屈(テーマの一端)はどう処理するのか。

同じく言語SF映画でもある「メッセージ」の時も話題になったサピア=ウォーフの仮説がここでも言及されていた。すっかり忘れてました。一般教養なんですか?
池頼広氏の音楽が作品の雰囲気に合っていて、エルゴ・プラクシーみたいな曲調で懐かしかった。
伊藤作品アニメ化三作品はどれも独特で面白く甲乙つけがたい。

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