道楽人日乗

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「毒入りチョコレート事件」第8の回答

2014-11-27 22:43:20 | 毒入りチョコレート事件 別解
毒入りチョコレート事件第8? の回答。
(アントニイ・バークリー著「毒入りチョコレート事件」創元推理文庫を参考にしました)

●犯罪研究会会場。作中と同じ6人の登場人物。以下は209ページよりつながる出来事。
ブラッドレー氏の最後の意見披露が終わり、彼はロジャーが投げた紙片を見る。
ブラッドレー「誰ですかこれは」
ロジャー「え?この人と違うのか?」
ブラッドレー「勿論です。この事件に外側からの関与はありません。全ては関係者の仕業であり、その結果なのです」
フィールダー「教えて、誰が恐ろしい犯人なの?」
ブラッドレー「恐ろしいというのは違います。運命にさいなまれた悲劇の犯人と言うべきでしょう」
一同「その人物の名は?!」
ブラッドレー「惜しくも亡くなられたベンディックス夫人その人です!」
ざわめく一同。
ブラッドレー「ああ、美しいベンディックス夫人、世間的には理想の夫婦と思われていたお二人だが、その実、夫との仲は冷えきり、いつしか夫人は怪人物ユースティス卿の魔の手にかかっていた。泥沼です」
フィールダー「スキャンダルだわ!」
ブラッドレー「さよう。もはや生きていくのは耐えがたい。しかし死した後、ハイエナどもに醜態を暴かれるのは、地獄にいてもなおつらい」
ワイルドマン卿「うう、ほん!(咳払い)」
ブラッドレー「夫君を道連れにしての、殺人に見せかけた心中、その企みの無残な失敗こそ本事件の真実なのです!」
フィールダー「世間体を気にする人だったわ」
ブラッドレー「ペンファーザー氏のチョコ嫌いを知った上で、夫君に芝居を用いた賭を持ちかけ、クラブでの毒物譲渡を画策した」
ワイルドマン卿「待ってくれ、紙片やタイプはどうしたんだね」
ブラッドレー「僕は請け負いますが、このタイプライターはユースティス卿のご自宅で見つかるでしょう。実は密かにサンプルを入手しています」
ブラッドレー、二枚の紙片をロジャーに手渡す。
ロジャー「完全に一致した!」
アリシア「何故、彼女は憎いユースティス卿を犯人に仕立てなかったの?」
ブラッドレー「その場合、我が優秀なロンドン警察は夫人達の不行跡を白日の下にさらした事でしょう」
チタウィック氏「誰が犯人かわからない、そこが重要だったわけですな」
ブラッドレー「夫人の最後の行動を思い出してください。妙な味のするチョコレートを美味しいか不味いかを確かめる為に食べ続ける?そんなことがありますか?」
ワイルドマン卿「確かに私もそう思ったよ。それにしても夫に二つチョコを食べさせた後に、何故彼女はチョコを食べ続けたんだろう?」
ブラッドレー「彼女の頭に何が去来していたのか」
フィールダー「ロマンチックだわ…」
ブラッドレー「いやになったんですよ全てが。むしろサバサバとした気持ちで食べ続けたのではないでしょうか」
フィールダー「最後の晩餐ね!」
一同、フィールダー女史を睨む。
ブラッドレー「さて皆さん、以上が私の推理、おそらくは唯一の真実であります」
拍手するチタウィック氏。
アリシア「私にはどうしても納得がいきません」
ブラッドレー「何がです?」
アリシア「彼女は死んだ。だけど夫は生き残りました。彼女の企みは何故失敗に終わったのでしょう」
ブラッドレー「それは、ユースティス卿の家で科学書をにわか勉強するだけでは、いかに聡明な夫人でも限界があったのでしょう」
アリシア「みなさん、思い出してください。残ったチョコレートからはきっかり同じ分量の毒素が検出されました。美しい手際で!それほど細心の注意力を持つ人間が、果たして人生でもっとも重要な行為遂行中、毒の致死量を間違えるかしら」
ロジャー「そういえば、夫が二つ食べたところで満足していたようだな」
ブラッドレー「それは…彼女だけはその二つが他より多い毒があったことを知っていたんだ」
一同の間に苦笑がもれる。
ブラッドレー「きっと、箱の中身のチョコを旦那がテーブルにぶちまけてしまったんだ。そそそ、そそっかしいからなあいつは。戻したところでどれがどれだか…」
ワイルドマン卿「惜しかったなブラッドレー」
ブラッドレー、顔を赤くして立ち上がり、
ブラッドレー「彼女はいまわの際に馬鹿馬鹿しくなったんだよ。夫に毒薬の苦痛を与えたら、もうそれでいいと思ったんだ」
ロジャー、無言でブラッドレーの肩に手を置く。ブラッドレー、しぶしぶ腰を下ろす。一同、しばし、沈黙。
ロジャー「さて、皆さん今宵はこれでお開きにいたしましょう」

p210 第12章につづく。

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