道楽人日乗

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「有害都市」上巻

2016-01-17 14:19:20 | 漫画感想


2015年8月11日
筒井哲也 著
厳しい倫理規制が導入された近未来のお話。「は、」と気がついたら残酷やエロ描写がほぼ描けなくなってしまった。ホラー漫画でやっと連載をつかんだ日比野は、その描写で雑誌回収のご沙汰を受ける。彼の作品が作中に挟まれる構成。この作中作がどうにもつまらないので説得力がない。

漫画でそれ自身も関わる形で表現規制という問題に取り組んだというところに関心をもった。それはそれとして日比野の描く漫画が編集者が必死に守るほどのものなのか。怪奇な生ける骸をみせて怖いでしょでは、ハゲ鬘をかぶってべろべろバアというののホラー仕様にすぎないと思う。

表紙に描かれているのは日比野の作品内世界で、漫画は地味に編集者と作家、規制により転向した作家などを中心に話が進む。表紙の女の子は科学物質過敏症という設定なのに、ガスマスクをつけていても、帰る場所もなく外界をさすらうのはムリだろう。どうやって食事をとるのか。

表現規制について、作中アメリカで現実にあったコミックスコードが語られる。この規制によってアメコミは10年は停滞し、多様性を失ったと描かれた。この7話は、連載当時アメコミはヒーロー物ばかりで多様性がないと断じ、アメコミファンから抗議がよせられたとのこと。

僕がいま手にしている単行本ではその表現が改められているが、このあたりの事情はWEBページで詳しく解説している人がいる。アメコミは一概に多様性が乏しいとは言えない、コミックスコードの影響は現在にまで及んでいない、アメコミにもエロやグロの表現は存在している。等。

荒廃した世界を描いた作品内漫画は、表現規制の進む日比野がいる世界と印象をリンクさせる意図だろうが、あまりにおざなりで腹が立つ。現在進行中の怖い漫画達は新たな表現に挑んで頑張っている。本作は表現の問題を描きながら表現の問題そのもので自ら転覆しているよう思う。

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