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■N.P.Blood 21 vol.10 藤原千也展 -ひとりのひとにひとりずつの- (12月18日まで、北見)

2011年12月06日 22時25分16秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 北海道と東北の若手作家を紹介する「N.P.Blood」シリーズ。
 5年目の今年は、札幌の画家會田千夏さんと、十勝管内中札内村の彫刻家藤原千也かず や さんの2人の個展。

 藤原さんは昨年まで北見在住だった。
 札幌の茶廊法邑ほうむらで個展を開いたこともあるらしいが、なぜか筆者は見ていない。
 個展はほかに、2010年に帯広のFLOWMOTIONで「ひらかれている」、ことし、十勝管内豊頃町「とかるね」で「ひとつの中心と呼吸する」を開いており、今回が4度目となる。
 このほか、養護学校の生徒の個展を北見で企画したことがある。
 現在は、中札内高等養護学校で教えながら制作に携わっている。

 大阪芸大を卒業後、木という素材を知りたくて、和歌山県の森林組合で数年働いていた。
 高野山で修行する僧侶が手を合わせるカタチから、これらの木彫が考案されたという。
 なにかを包み込むような、光がそこからわずかに漏れ出るようなやさしいかたち。
 そのフォルムが再現されている。

 ところで、今回の個展が一般的な彫刻の展覧会と異なっているのは、訪れた人は誰でもわかるように、会場に長々と天井から布をたらして外部の光を遮断し、暗い中に小さな照明をすえつけて、それぞれの木彫が、弱い光のなかに浮かび上がるような展示がなされていることだろう。

 藤原さんは、自分が学生だったころはまだインスタレーションというと新しいイメージがあったが、いまはそんなことはない、ようやく自分がどう見せるかというのを考えられるようになってきた-という意味のことを話しておられた。
 これは、インスタレーションなのか彫刻なのか、どっちなんだ? と問い詰めても、あまり意味のないことなんだろう。

 ただ、ちょっときついことを言えば、一般的な法則として
「暗い会場の作品はよく見える」
というのがある。
 なんだかおごそかに感じられたり、癒やし系に受け止められたりして、麻雀用語でいえば「イーハン上がる」現象がそこに認められるのである。

 それでは藤原さんは、自らの作品のまずさを暗さによってごまかしているのかといえば、それも違う。彼の作品は、明るいところに置いても、じゅうぶん鑑賞に堪えるだろう。

 ただ、暗い会場内にぽつんと、ひとつずつ独立して設置された、丸みを帯びた木彫とじっと向き合っていると、やはり、一種宗教的ともいえる、独特の気分になり、そこを去りがたい気持ちにさせられるのも、また事実である。
 そして、会場に入ってまず、細長い通路があり、そのずっと奥に、最初の作品「ひらかれている」が見えるのも、演出としてはなかなかのものだといわざるを得ない。

 今回の出品作は、ほとんどが1本の木を削ってつくられている。
 こういう大きな木の材料が手に入るのも、道東ならではと思う。
 「ひとつの中心と呼吸する」は、二つの木から作った部材を合体させているというが、継ぎ目がスムーズなので、それとはわからない。
 北見市の相内神社の裏手にあった木が手に入ったので作ったということだ。
 大きな空洞が作品の中央にあいている。まるで「うろ」のようだ。
 会期中、この空洞に入ることができるイベントも開かれている。

 藤原さんは、砂澤ビッキなどとはまた異なったスタイルで、木という生命がもともと宿している自然なフォルムを内側から引き出しているのだろう。そんなふうに思った。


 出品作は次の10点。素材などの表記は原文通り。
ひらかれている 2008年 しなの木、ひかり、かげ W12×D15×H22
ひらかれている 2008年 しなの木、ひかり、かげ W35×D45×H210
ひらかれている 2007年 しなの木、ひかり、かげ W6×D6×H16
ひらかれている 2009年 にれの木、ひかり、かげ W23×D75×H210
ひらかれている 2008年 ならの木、ひかり、かげ W40×D75×H210
ひらかれている 2008年 しなの木、ひかり、かげ W38×D23×H248
ひらかれている 2008年 しなの木、ひかり、かげ W10×D26×H77
ひらかれている 2010年 どろやなぎの木、ひかり、かげ、かぜ W14×D14×H110
ひとりぼっちのときのひとのき 2011年 かばの木、オイルステン W100×D90×H145
ひとつの中心と呼吸する 2010~11年 どろやなぎの木 W80×D110×H175


 
2011年11月19日(土)~12月18日(日)9:30~5:00(入館~4:30) 月曜休み。11月24、29日も休み
北網圏北見文化センター美術館(北見市公園町)

vol.9とvol.10をあわせて:一般600(500)円・高大生300(200)円・小中生100(50)円。
かっこ内は10人以上の団体料金

●初日午前10時、最終日午後1時半からアーティストトーク(要観覧券)

●ワークショップあり





・JR北見駅から約1.7キロ、徒歩22分
・JR柏陽駅から約1.4キロ、徒歩19分
・北海道北見バス「1 小泉8号」行きに乗り「野付牛公園入口」で降車、約400メートル、徒歩5分
(この路線は日中15分間隔で運行)




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