北海道美術ネット別館

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第51回新道展(9月10日まで)

2006年09月09日 06時19分13秒 | 展覧会の紹介-団体公募展
 インスタレーション・立体造形は、林教司が絵画に転じ、野又圭司や堀部江一が不出品のため、さびしいものとなった。ビデオを用いた田中まゆみ「MEMENTO-MORI」が力作。生と死を凝縮させたかたちで表現している。
 池田宇衣子は、すごくがんばっているのはみとめるのだが、筆者にはどうもいまひとつ意図が伝わってこない。合田尚美「Life is beautiful」は、隅っこの狭い空間に展示されていた。先日のギャラリー門馬アネックスの展示と基本的に同じ。

 絵画。
 会員。今荘義男「古里’06」
 油彩3枚組み300×180センチの大作。日本的ななつかしさを漂わせる渋い色調は、あいかわらず美しい。
 香取正人「新緑」
 この画家の魅力が、濁りのない明るい色彩のほかに、リズミカルなタッチにもあることがよくわかる佳品。
 中村哲泰「とどまることにない風景」
 ヒマラヤなど巨大なモティーフを手がけてきた作者が一転、湿地帯のようなささやかな草花に目を向けた。
 西田靖郎「三つのみずおと」
 中央に描かれた人物は女性に見えるが、だとしたらこの作者には珍しい。アーチ型を横に三つ連ねた支持体もユニーク。
 後藤和司「青のscene'06II」
 ツイード織のような線をびっしりと連ねた、M100号キャンバス3枚からなる大作。行為の重なりから浮かび上がるリズム。
 横山隆「彼方へ」
 横山さんは日本のアルテ・ポーヴェラか。ダンボールの使い方がアナーキーで好きだ。
 飯田辰夫「路上の譜」
 舗道と横断歩道。こんな要素で絵画空間を成立させようとする意欲が好ましい。描写もリアル。
 大塚富雄「まやかしの界」
 廃品のマティエールに細心の注意が払われている。
 居島美恵子「久遠」
 抽象との苦闘のなかから、浮かび上がるピアノのような形。
 このほか、工藤悦子、鈴木秀明、坂元英子、櫻井マチ子、佐藤萬寿夫、永井美智子、中谷勝善、藤野千鶴子、白鳥洋一、山本家弘といったベテラン勢は安定した仕上がり。
 しばらく見ないうちに、古田瑩子、大田眞紀、佐野雅子といった面々が水彩からアクリル・アクリル併用に転じていたのがおもしろかった。描写力も上がっている。岩佐淑子は依然水彩で、抒情的な空間をつくりあげている。
 細木博子、福島靖子といった「阿部チルドレン」も、着実に自分たちの表現をものにしているようだ。

 会友。
 岩野美恵子「工場の一隅 I」
 こういう執拗かつまじめな描写は好き。
 片野美佐子「雨あがり」
 この数年、乱暴なタッチが影をひそめて、大胆だが細心な画面づくりになったと思う。黄色のつくりだすリズムが心地よい。会員推挙。
 中埜渡美栄加「北の大地 Shoes of Memories(1)」
 装飾性が特色。中央部分を流れる川があるので、ただうるさいだけの画面にならずに済んでいる。佳作賞。
 森田明志「朝凪のソナタ」
 落ち着いた色調が持ち味。崖が人の顔になっているだまし絵的なところもおもしろい。会員推挙。
 湯浅工「マリーナのある漁港(小樽・祝津)」
 しっかりした描写のオーソドックスな風景画。
 ほかに、梅田正子、山本洋子が会員推挙。

 一般。
 藤本絵里子「誕生」
 協会賞。まるいパッチをつらねたような、半立体。めずらしい技法だが、その瞬間芸にならないように、来年以降期待したいと思う。
 すとうえみ「瞬」
 なぜひらがなの名前に変えたのだろう。この人は、すごく描写力があるのだが、いかんせんモティーフが小さすぎ。もっと大きく描けばおもしろい作品ができるのに。佳作賞。
 清野有香「夜明け」
 巨大な水牛。迫力は十分。
 柴崎康男「船のある風景A」
 二科ではベテラン。新会友。
 甲斐野弘幸「跫-II2006」
 黒と白の矩形が重なり合う、迫力のある抽象画。
 古木真澄「椅子のある室 I」
 静けさに満ちた画面。マティエールも工夫されている。新会友。
 松信元一「七月の詩」
 ラベンダー色を基調に、深みのある抽象世界。

 会友推挙は計15人の大盤振る舞い。
 これはどうなんでしょう。和田仁知義のように力量が十分な人もいるが、一方で、ちょっと早すぎる人もいるような気がする。

 全体としては、抽象、具象など、バラエティに富んでいるのは悪くない。

 知らないうちに園田郁夫や西川孝が退会していた。
 金子正の遺作が展示されていた。  
 
(文中敬称略)

8月30日(水)-9月10日(日)10:00-17:30(最終日-17:00)、月曜休み
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G

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