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■渡邊耕一展 Moving Plants (2018年1月13日~3月25日、銀座)=東京'18-イ(10)

2018年02月08日 13時36分50秒 | 道外で見た展覧会
(承前)

 道内ではあまり見る機会がないが、近年世界的に現代アートの手法として広く普及しているものに
「リサーチ型」
がある。
 筆者はこのタイプの展覧会を見るといつも、夏・冬休みの自由研究を思い出す。決してばかにしているのではなく、写真や映像、パネルを使って特定の問題を調べ、現地に足を運び、人に話を聞いていくそのプロセスが、自由研究に似ていると思うのだ。
 子どもの自由研究が、本や(近年はインターネット)で調べ、1人か2人に聞いたことを模造紙やノートにまとめたものであるのに対し、大人の「リサーチ型」は、写真や映像を投影したり、資料を借りてきたりして、相当に本格的なのである。

 さて、この渡邊耕一さんの個展「Moving Plants」も、見た目はイタドリという多年草をテーマにした写真展なのだが、いわゆるネイチャーフォトとはぜんぜん違う。
 日本にある草が、どうやって欧洲に渡り、かの地で迷惑がられるまでにはびこったのかを、実際に欧米に渡って調査した労作なのだ。
 このテーマに着目したのが、渡邊さんが北海道を訪れたときだという。

 筆者は、イタドリが英国などで急速に勢力を広げて迷惑がられていることを朝日新聞の科学面かなにかで読んで知っていたが、日本で見つけて欧洲にもたらしたのはあのシーボルトであり、欧米の園芸業者が「お庭にどうですか?」と積極的に普及を図っていたことをこの個展で初めて知った。
 会場にはシーボルトの本や100年以上前の園芸雑誌まで置いてあるのだ。
 なんだ、日本人悪くないじゃん。

 それにしても、ニューヨークの郊外やオランダの線路沿い、東欧の野原など、イタドリはいたるところに生えているようである。

 ただひとつ心配になったのは、筆者は北海道人なので、イタドリはとても身近な草であるのだが、東京の人には、それがどこまで伝わったのだろうかということ。
 フキ、クマザサとならんで
無駄に大きくなる三大バカ植物
のひとつで、このブログでも、こことか、ここに画像が載せてある。
 草なので、春先には影も形もないが、5月以降にどんどん伸び、夏には人の背丈を追い越すほどになるが、9月には立ち枯れてまるで野火の跡のような姿をさらすのである。

 植物は本来は移動しない。
 しかし、人間が移動すると、それにつれて世界へ広がっていくのだ。イタドリの移動も、人間の歴史を反映している。


2018年1月13日(土)~3月25日(日)午前11時~午後7時(日祝~午後6時)、月曜休み
資生堂ギャラリー(中央区銀座8-3-3 東京銀座資生堂ビル地下 www.shiseidogroup.jp/gallery )






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