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白江正夫さん(水彩画家、小樽)死去

2014年12月10日 21時30分19秒 | 情報・おしらせ
 小樽在住の水彩画家、白江正夫さんの名前が、けさ(2014年12月10日)の北海道新聞おくやみ欄にありました。87歳。
 葬儀は終了しているとのことです。
 日本水彩画会、道展などの会員で、水彩画の分野では北海道を代表する存在でした。2003年には、市立小樽美術館で個展も開催されています。


 白江さんは1927年(昭和2年)、礼文島の船泊村(現礼文町船泊)生まれ。
 札幌の師範学校(現北海道教育大)に進み、小樽市内で中学教諭のかたわら絵筆を執っていました。道展に出品したのは砂田友治(故人、画家、独立と全道展の会員)のすすめで、戦後すぐのことだったそうです。
 制作に専念するため55歳のときに、幸小の校長を最後に退職しています。

 日本水彩展には、北海道の水彩画の第一人者であった故繁野三郎にすすめられて1964年から出品。80年には会員に推挙され、87年から95年までは日本水彩画会北海道支部長を務めました。93年には「さいはて」で、内閣総理大臣賞を受けています。
 小樽市展は、委員に推挙されたのが1957年、30歳のころですから、半世紀にわたる関わりがあります。
 道展は、58年に出品を再開し、60年に菊華賞、61年に会友、67年に会員に推挙されています。

 また長年、小樽市成人学校で水彩画を教えるなど普及活動に務めています。
 

 管見では、白江さんの作品は、水彩画という語感から聯想しがちな、やわらかいものではなく、ぐいぐいと力強い筆致のものでした。
 多くは、地元小樽をはじめ、道内各地の風景を題材にしていましたが、写実を基盤としながらも、家のひさしの影に黒い線を引くなどして、画面を強く引き締めています。これは、輪郭線を引く稚拙なやり方とは一線を画した技法といえると思います。
 さらに手前に人物を入れて、風土と人間との関わりも、主題のひとつとしているようです。
 先に挙げた「さいはて」は、稚内の廃屋のある風景がモティーフです。
(冒頭画像、「白江正夫画集」の表紙にあしらわれています)

 白江さんは、道内の風景を描くにしても、わかりやすく甘い叙情に走るのではなく、そこに風土の厳しさを描きこみます。
 地元だけに、小樽の風景もずいぶん採り上げていますが、小樽運河や漁船、高島漁港などよりも、小樽築港の巨大ショッピングセンターや、高層住宅といった、他の画家が絶対に描きそうにない建物に、正面から向き合うのが特色でした。


 昨年、小樽美術館で、岩見沢の水彩画家宮川美樹さんと2人展が企画されたばかり。
 さらに今年6月には、同館内の市民ギャラリーで小品展を開いたそうです(知っていれば、見に行くんだった!)。
 まだまだお元気に健筆を振るっておられると思っていたので、残念でなりません。
 ご冥福をお祈りします。


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